2017年07月14日

20170714 Zaïre 74

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 田植えが終わった翌日、長らく放置した畑の点検を兼ねて圃場周囲の草刈りに出た。実は先日、中古の草刈機をもらった。それまでは家主さんの30ccのでかいやつを振り回していたのだが、もらったものは20ccの最も華奢なやつだった。手加減したつもりだったが、小一時間も振り回すとエンジンが止まってしまう。だましだまし使ってもすぐ止まるので仕事にならず、昼の休憩でなんだか疲れが出てしまった。草刈機の調子が悪いのか、体の調子が悪いのか、斜面を踏ん張る右足が妙に重いというか・・・とぼやきつつ長靴を脱いで、靴下も脱いでなんとなく右のふくらはぎを見て驚愕した。全体がケロイドのように真っ赤に腫れ上がってパンパンに膨らみ、大小無数の水ぶくれで覆われ、そのうちのかなりがすでに破裂して踵まで膿にまみれていたからだ。思わず全身に悪寒が走り、堰を切ったようにかゆみが襲い掛かった。今朝までは違和感はなかった。田植えに没頭して異変に気づかなかったのか、とにかく草まみれの田んぼでの死闘で、確かに無数の虫に刺され、完全防備の作業服の中にも入り込む。棘や藁や小枝が突き刺さることも多い。いちいち気にしてたらきりがないし、いつしか何も感じなくなっている。そのうちの何かがまずくて、田んぼの水に潜む何かが入り込んだのか、とりあえず写真を撮って、そのまま皮膚科を探して、予約なしに押しかけた。お見せできないのが残念だが、こんなものが世に出たら二度とお嫁に行けなくなってしまうので秘匿することにする。火傷のように花開いたふくらはぎを見て医者は激怒し、三日間の安静が命じられた。作業中断。強制休養である。一日目は一日中寝ていた。二日目に「さなぶり」のお祝いとしてCDを注文した。今日それを聞いた。

 このCDね、発売されたのはもちろん知ってたんやが、田植えの最中で封印、いや、買うまいと思うてたんやな。内容が素晴らしく貴重な音源ということはもちろん知ってた。でもどうせそのうちYouTubeで流出するやろし、それでええわと思うてた。でもね、Muhammad AliGeorge Foremanんの世界ヘビー級タイトルマッチ、「キンシャサの奇跡」ですよ、それに合わせて開催された一大ブラック・ミュージック・フェスティバル「ブラック・ウッドストック」ですよ。「ソウル・パワー」ですよ。1974年ですよ・・・それらをずっと聞いてきた、なんちゅうか、積み重ねがね、やっぱり私はこれを持っとかなあかんなと・・・まんまと敵の策にはまってしまう自分に抗えない自分を別の自分が嘲笑してるねん。どうせこのあと次から次から出てくると思うよ、なにしろ、あれほど巨大なイベントでね、どれほど巨大かというと、去年これについて書いたものがあるから引用するとね、だいたいこのようになるんや・・・

 Zaïre 74は、アフリカの音楽にとって大きな出来事だっただけでなく、アメリカ在住のアフリカ系の人々 (African-Americanと呼ばれることに違和感を感じる人もあるが) にとって、文字通りアフリカへ回帰して演奏するという大きな意味を持っていた。大西洋を越えて旅行することが今ほど一般的でなかった当時としては、それはリアリティがある。いまほど情報はない。行く側も迎える側も、驚きと発見の連続であったはずだ。その手探りの末に遭遇する驚きや喜びが、映像に記録されている。

 このイベントの噂は、私が南の国の音楽に興味を持ち始めた当初から耳にしていたが、全貌はわからなかった。Fania All StarsJames Brownの動画を、ごく短いものを何かのイベントで垣間見た程度だ。Faniaのデスカルガの模様を含めたドキュメンタリーがVHSで出たのが1995年の確か数年前、同じコンサートでCelia CruzをメインにFaniaのバッキング、ゲストにJorge Santanaというライブ映像がDVDで出たのが1998年、しかしこのDVDにはAfricaに関する記述はなく、装丁からしてもなんとなく流出モノくさかった。James Brownの映像も細切れに流出していたと思う。しかし正式にこのイベントと出演者の映像が公開されたのは2008年である。そこで初めて、我々はアメリカ・アフリカの全出演者をはじめ、日程やイベントの企画から開催までの詳細を知ることになる。

 いまでは、「Soul Power」と題されたコンサート全体のダイジェスト版と、Faniaに関する上記2つの記録は、「Fania All Stars in Africa」として2枚組のDVDで発売されている。

 アメリカからJames Brown, The Spinners, The Crusaders, Fania All Stars, Celia Cruz, Danny Ray, Sister Sledge, Bill Withers, B.B. King、現地ザイールからFranco et le T.P.O.K. Jazz, Tabou Lay et l’Afrisa International, Abeti Massikini, Stukas, Pembe Dance Troupと、クレジットはないが、映像からFaniaを迎える面々の中で歌っているTrio MadjesiL'orchestre Sosolisoの姿が確認できる。また南アフリカからMyriam Makeba, Hugh Masekela,、カメルーン人だが当時Dr. NicoAfrican Fiestaに参加して多分キンシャサにいたManu Dibango・・・

 コンサート日程は1974.09.22-24Muhammad AliGeorge Foremannの試合が1974.10.30、当時のモブツ大統領はイベントの開催を了承したが、すくなくともコンサート部分については、たしかイタリアの某実業家が私費を投じたと言われている。調べたはずだが記録を取い・・・云々・・・

 こんなイベントでね、流出したFaniaのライブ映像のクオリティの高さはものすごくて、おそらく当時の最先端技術だったと思うんよね。それだけの投資をして、あれだけの出演者があって、映像や音が残ってないはずがない、絶対どこかにあるはずや、と、これはもうファンならずとも何十年も前から噂されていたことや。それが、やっぱり、あったんや・・・

 まあくどくど言うてもしゃあないし、内容を紹介しときましょ。内容は2枚組CDセットで観音開きのブックレットになっている。CD1は、Tabou Ley et l’Afrisa International, Abeti MassikiniCD2は、Franco et le T.P.O.K. Jazz, Myriam Makeba, Stukas、つまりMyriam Makeba以外はすべてZaïre勢。つまり、全体のイベントの、ほんの序の口というわけや。序の口でこのラインナップでっせ、そらもうコアなファンなら飛びつきますわな。でもね、一応これね、1974年という時代背景、そしてメイン・アクトが、たぶんFaniaJBという当時のアメリカのカラード音楽の最先端を迎え撃つZaïre音楽のショウケースという、かなり特殊なものであるということに興味のある人でないと、ちょっとピンとこないかもしれないなあ。

 まあくどくど言うてもしゃあないし、内容を紹介しときましょ。Tabou Leyね、あんたちょっとJB意識しすぎやねん。なんぼ嬉しいか知らんけど、全体にテンポ早いし音が硬いしもっとあんたらしいええ歌たくさんあんねんからそっち出した方が良かったんちゃうか、ということでAbeti MassikiniとともにCD1についてはノーコメント !! (うわあ) ・・・で早くもCD2、やっぱりね、さすがFrancoですよ、だいたい普通に録音して1曲が15分くらいあるのんを、11曲もやって30分そこそこに納めてるんやが、それでもそのまったり感が違いますね。実にええ味が出てる。特に#4に出てくる"Kasai"、これは本来"Kinsiona"というBas-Zaïreのフォルクロールをもとにした曲で、曲名が違うから気づかんかったんやが、曲が流れ出した途端、苦難に満ち命の危険にまで晒された1991年のZaïre奥地への旅のことを思い出してどっと涙が溢れてきてしもた。すごい情感や、それをメドレーの中に挟むなんて・・しかし曲名間違うてもろたら困るなあ。"Kinsiona"やで。まあそんなこと、一般のファンにとっては本ッ当にドーでもええことなんやけどね。アルバム全体を通して、限られた時間内に多くの曲を詰め込もうとしてメドレー形式で演奏されてるんやが、本家本元に遠慮してか華を持たせるためか、ルンバやファンキーな曲を避けてフォルクロールが多く選ばれてる。しかしその中でピカッと光ってるのんが#6"Balingaka Ngai Te"や。これも曲名を見てあれっと思うた。というのは、この曲は74年にはまだなかったはずや。事実、曲が流れ始めて後半のFrancoの有名なギター・フレーズが出たのでわかったんやが、これは"Monzo"という曲や。この曲にも"Balingaka Ngai Te"という歌詞が出てくるが、それは「俺はみんなに嫌われてる」という、まあ男がよくぼやく文句で、よく歌詞に使われる。よう調べんと曲名つけたんやろ。まあこれもほんまにドーっでもええことなんやけど俺が訂正しといたるわ。まあついでやし#11にもFrancoの有名なギター・フレーズが出てくるが、それは"Minuit Eleki Lezi"という70年代TPOK Jazzの名曲中の名曲のものや。これもわからんと"Instrumental"なんて書いてあるから俺が補足しといたろ。ともあれ、CD2前半のFranco et le T.P.O.K. Jazz編は、大御所らしいアフリカ色に満ちたフォルクロールの中にルンバ感覚が随所に光る凝縮された名演や。で、Myriam Makebaを飛ばして (^^; Stukasや。もうこれがすごい。なにがすごいというてとにかくすごい。最高や。おそらく彼らの録音の中で最も良い音質で残されたもんちゃうか。当時のザイールには8トラックもまだ普及してなかったやろから、彼らの現存する録音は、そのエネルギーを吸収しきれずに、ほとんどクリップしてて音が伸びてこない。それがこの録音では、低音から高音までの分離と伸びがすごい。演奏の方やが、やはり若いだけあって、これより前の大御所たちが色々と気ぃ遣て策を弄してるのを尻目に、いつもやってることをそのまんまやってる。すかっとする。ルンバでありファンクでありパンクであって、最初っからスロットル全開や。この疾走感は彼らだけのものや。FaniaやろうがJBやろうが関係ない。StukasStukasや。もうすばらしいのひとこと。大好きや。で、後日行われたFaniaのライブでRay Barretto"Que Viva la Musica"と叫ぶのを聞いていた若き日のPapa Wembaがそれを自分のバンド名にしようと決めたその同じステージに、自分を引き入れてくれようとしたLita Bembo率いるこのStukasが立っているのを彼が見ていなかったはずはない。今は亡きWembaもまだ独立してなかった。Vivaの結成前や。そう、これはもう43年も前の歴史的出来事なんや。まあ俺も歳とったちゅうこっちゃな。

posted by jakiswede at 00:00| Comment(0) | 変態的音楽遍歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする