2018年02月27日

20180227 いかなご釘煮

20180227 いかなご釘煮

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2018年のいかなご新子漁の解禁は226日であった。解禁翌日のものを買ってきて炊いた。すでに5cm程度に育っているものが多く、価格は\2,580/ kgと、昨年よりは落ち着いた。私のレシピは、明石に住むわがバンドのベーシストの家に古くから伝わるものである。いかなご1kgに対して、濃口醤油220cc、味醂大さじ3、日本酒150cc (味醂と酒が1:3で約1合の割)、今年は三温糖250g、土生姜のせん・・・千切り50g (写真で大体50g)、実山椒と柚子の皮少々 (これは私独自) 。漁船によって、使われている水槽の消毒液の濃度が違うので、いかなごを洗うには慎重を期する必要がある。5cmほどに大きいものは少々のことでは崩れないが、2cmくらいのものは、洗い方ひとつで材料を殺してしまう。大きなボウルに水を張ってザルを沈め、その中に静かにいかなごを流し入れる。手で静かに混ぜてザルを引き上げ、水を切る。これを3回ほど繰り返す。煮汁を合わせて沸騰させ、砂糖を完全に溶かす。細かい泡が立って鍋から吹き上がるほどになるので、私はその時点で先に風味材料を入れてしまう。再沸騰した時点で、私はいかなごを一気に全量入れる。煮汁の温度が急激に下がるが、ちまちま入れて煮えむらができるよりマシだと思う。煮汁が熱くならないうちに、素手で全体を静かに混ぜる。あとは鍋の蓋より一回り小さいアルミホイルの落としぶたを作って真ん中に指で穴を開け、それを乗せて、吹きこぼれない程度の中火、できれば遠火の強火で煮はじめる。蓋が踊っているうちは触らず、30分程度で蓋が落ちてきたら煮汁が減っているので、少し火を弱めて鍋肌をよく観察し、泡がかなり大きく、鍋肌を焦がしそうな勢いで上がるようになったら、鍋を振って煮汁を混ぜ、何度か繰り返して煮汁がほとんどなくなりかけた時点で火から下ろす。ざるにあけて余分な煮汁を切り、人肌以下に冷めてから箸でほぐしつつ、落ちた煮汁を満遍なくかけまわして完成。

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2018年02月25日

20180225 小麦干し

20180225 小麦干し

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 晴れの間に、収穫したまま穀物庫にぶち込んであった小麦を干す。

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 脱穀して唐箕にかけた状態では、篩で分けても実のついたままの穂が残る。

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 結局、これらは手で選り分けねばならない。手で揉むと実は剥がれるが、皮や芒が落ちて混ざってしまう。

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 「ユキチカラ」という品種は芒がなく、「ミナミノカオリ」は強い芒がある。前者は脱穀しやすいが鳥に食われやすく、後者は鳥に食われにくいが脱穀しにくい。

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 皮や芒はあえて落としてしまい、混ざったところでバットを揺すると、重い実が沈んで軽い皮や芒は浮いてくるので、これを吹き飛ばす。

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 何度も繰り返していくと、やがてこれらは除去されて綺麗な玄麦になる。

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 多少の皮や芒が残っても、製粉機にかけて篩で振るうとこれらのほとんどは除去されるので、完璧を期さなくても良い。ただし、篩にかけると小麦の微粒子が舞い上がるので、風の少ない屋外でやったほうが良い。

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2018年02月24日

20180224 秋ウコン粉末

20180224 秋ウコン粉末

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 収穫したまま放置していた秋ウコンを粉末にする。ウコンやショウガは、収穫したらすぐに洗って表面を乾かし、新聞紙に包んでビニル袋で密封し、あまり寒くならないところに置くのが良い。うまくまいけば2ヶ月程度は保つ。同じような保存の仕方が適しているものにキクイモがあるが、これは冷蔵すれば一年ほど保つことがある。ウコンは親指ほどの塊がたくさんできるので、皮をむくのに大変手間がかかる。これをスライスして網に並べ、風に飛ばされないように網で挟んで天日に干す。一日でびっくりするほど縮まって乾き、三日も干せば十分である。これをミキサーやミルにかけて、目の細かい篩でふるって粉にするとさらにかさが減って、なんだか残念な気もする。種の根は結構高いのに、粉末を\300/ 20gで売ったら「高い」と言われるので、さらに残念になる。従って値打ちのわかる人にしか売ってやらない。自分で料理に使うのが吉。

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2018年02月23日

20180223 ウッド・デッキ新調

20180223 ウッド・デッキ新調

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 拾ってきた古いウッド・デッキがついに崩壊したので新しく作ることにした。神戸のCAP HOUSEのスタジオが明け渡された時に廃棄された座卓を利用して、真ん中に90cm四方の簀子張りの台を制作する。安価なSPF木材を切ってもらって、簡単安直に上部を組み立て、脚は現物合わせで寸法出し、ついでにコンパネ2枚で作業用の板の間を補強上貼りして、余った端材で鉢置きも作ってみた。全体をミルキー・ホワイトとイタミーニョス・グリーンで塗り分けて完成 !!

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2018年02月22日

20180222 白菜キムチ本漬け

20180222 白菜キムチ本漬け

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 白菜キムチの本漬けである。白菜は、重量の15%の塩を揉み込んで三日ほど下漬けしたものを数時間流水にさらして塩抜きをする。この下漬けがキムチの出来を左右する。塩漬けは、一度に15%の塩を揉み込むことが困難なので、葉を一枚ずつ取り分けて、例えば全体を4等分し、塩も4等分して、必ず葉の根元側から擦り込むようにする。だいたい三本指で一掴みくらいの分量になる。葉先の方は、漬け進むうちに塩が飛び散ってまぶされる程度で良い。これを大体元の形に丸め込んで亀に押し付け押し付け、重量の倍の重石をすると、一晩で十分に水が上がる。これを三日ほど置きながら、徐々に圧縮してゆき、その後解放して流水にさらす。そのあと、必ず重石で押し込んでさらに一昼夜ほど水を切る。副材料は、私の場合、大根・人参・ニラである。大根と人参ははせんずり・・・失礼、千切りにする。ニラはざく切りで良い。これらに適当に塩をして、しんなりしたところで固く絞る。薬念醤は、固く練り上げてあるので細かくちぎり、先に副材料の方に揉み込んでいく。よくもんで全体が柔らかくなったら、これを白菜に塗りつけながら挟み込んでいく。2kgの白菜に対して、薬念醤は600g程度が適当だが、味を見つつ調整する。ちなみに、私は去年仕込んだ薬念醤を使っている。作り方については別の機会に投稿しようと思う。

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2018年02月21日

20180221 キクイモ

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寒い !! 朝は寒かったが、陽が差すと気温が上がり、まさに春の陽気になった。初秋に収穫したカボチャ類も2月がほぼ限界。まとめてポタージュにした。梅雨前に取り入れた小麦を放置してたんで、干して明日そうじしよ。暖かいので畑に出てみた。玉ねぎ早くも全滅の兆し、小麦の葉先は赤く焼け、遅まきの品種はまだ出たばかり・・・この冬は寒すぎる、というか、寒い日が続きすぎる。例年なら気温に波があって、土が柔らぐ晴れの日に根を押さえつけることができるのだが、今年はそんなチャンスがない。麦やタマネギは、幼苗のまま冬を越すので、霜柱が立つ時に、盛り上がる土とともに根が押し出される。その状態で霜が溶けると、根が抜かれたのと同じ状態になり、そこに寒気が当たって枯れてしまうことがある。これを防ぐために、これらの植えあとはよく観察して、定期的に根の手当てをしてやるのだが、朝霧の濃い日の昼が曇りがちだったり、最高気温が氷点下だったりすると、土が凍てついてしまって手が出せないことがある。そんな日の翌日には、きまって畑中をカラスが暴れたみたいに、あらゆる根が蹴散らかされた状態になる。それらをひとつひとつ見つけ出しては植え直すのだが、今年はそれがなんども続き、とうとう植え傷みが重なって凍結に耐えられなかった。苗づくりをもっとしっかりやれば良いのだが、ちょうど時期的に秋の農繁期で米作りの最終段階と作業が重なるので、どうしても手薄になるのだ。そこへいくとキクイモは逞しくて、凍土の下でもしっかり残ってる。

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20180221 米麹別注

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 米糀のご注文があったので、別途仕込み、破生。まだ余力がありますので、ご入用の方は、お寒い間にどうぞ。\1,000/ 1kg (仕込時) です。並行しまして鶴乃子大豆米糀味噌追加分、こちらの出糀は菌色を反映して若干緑がかってます。これもわずかに容量を残して瓶詰め完了。味噌は、できるだけ嫌気的状態にして保存、月に一度は切り返して夏を越します。蒸し大豆を冷ましている間に白菜の下漬け。いかなご漁解禁日が近づいてくるとアミエビの漁も最盛期を迎えるのでキムチ本漬けの準備です。で、重石が下がってくるのを待っている間に、来週用の米糀の仕込み、一昨日に浸水した米を昨日一日水切りをして、これを蒸し、人肌以下に冷ましてから種付をしておきます。その間に塩漬け白菜の重しが下がるので、ついでにもう一つ塩漬けしときます。今日は暖かいので、畑の様子を見ながら、出たり入ったりの一日でした。

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2018年02月11日

20180211 鶴の子大豆米糀味噌

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 鶴の子大豆米糀味噌。色がかなり違います。味噌や醤油は、丹波黒大豆よりも鶴の子大豆の方が向いてるような気がする。前回、丹波黒大豆の味噌摺で摺り切れなかった分で、今回鶴の子大豆の摺り残し分を押し出すようにして集める。瓶詰めしてみたらもいっかいぶん入りそうなので、次回も鶴の子大豆でいきます。ソラマメ味噌はその次。いずれも日曜日10時から15時まで。実は迂闊なことに空き保存瓶がなかったので、急遽、保存瓶入り梅の砂糖漬けの梅を取り出してシロップと分離、漬け梅はジャムにして小分け脱気瓶詰めしたのでした。

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2018年02月10日

20180210 米糀のチェック

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 ひきつづきまして米糀のチェック・・・今回も良い状態に出来上がってきたので、予定通り明日、鶴の子大豆の味噌を仕込みます。2/11 (日) 10時より15時まで。昼食ご持参ください。JR神鉄道場駅送迎可。参加無料。ご覧になりたい方はどうぞ。原料持ち込んでいただければ一緒に作れます。市販の材料でできます。乾物の大豆・乾燥米糀・塩を重さの比率で2:2:1になるように用意していただき、大豆は水に浸けて十分にふやかし、水を切ってからお持ちください。あとはこっちでできます。また、あわせて次の米麹の仕込みに入りますので、やって見たい方はどうぞ、私の「五日糀」でよければ、1kg仕込む分を\200でおわけします。次回は2/18 (日) 、ソラマメ味噌の仕込みです。一ヶ月前に塩漬けにしたイワシが良い状態になっていますので、キムチ用薬念醤の仕込みと白菜のキムチ本漬けも、できればやります。こちらも見学無料。一緒に作りたい方は、準備がありますのでご連絡ください。

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2018年02月09日

20180209 ターメリック

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 どんよりと曇り、雪のちらつく毎日だったが、ここへきて三日続きの腫れが予報されていたので、秋ウコンを乾かしてターメリックを作ることにした。

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 皮をむいて、網の上でスライスして・・・

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 半日も干すと表面が乾きはじめるので、

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 ステンレスのバットにまとめて効果をあげて・・・

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 ミルで粉砕してフルイでふるってミルで粉砕してフルイでふるってミルで粉砕してフルイでふるってミルで粉砕してフルイでふるってミルで粉砕してフルイでふるってミルで粉砕してフルイでふるってミルで粉砕してフルイでふるえばこの通り。

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2018年02月05日

20180205 都会はええのう !!

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 私が百姓になろうと決心する直接のきっかけになったのは、舌癌で舌を部分切除したことである。早いもので、もうその手術をしてから13年になる。今日は、年に一度の経過観察で、久しぶりに電車で大阪へ出た。私の住んでいる六甲山系の北麓は、山一つ隔てただけで日本海側気候となり、冬はずっとどんよりと曇っている。特にこの冬は、11月以来平年より寒い状態がずっと続き、年末から早くも氷点下5℃が最低気温の標準となってしまった。まだ二桁はいかないので、例年よりブレは少ないものの、ずっと寒いのは体にこたえる。大阪は、寒風吹きすさんで寒かったが、よく晴れていた。山ひとつで大きな違いだ。久しぶりに住み馴れた冬の気候に身をおくと、体が思い出したようにめぐり始める。

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 私は長年食品業界に身を置いていて、フリーランスでいくつものメーカーと契約し、業務委託を請ける形でその製品を流通に乗せて販促していく仕事で生計を立ててきた。もうかれこれ30年も前に始めたことだ。当時は今と違ってまだまだ市場に開拓余地があって、というより、ほぼ手つかずの荒野に近かったので、私のように、性格上、宮仕えに支障のある人間は、一匹狼として野放しにしてくれた方が、ずっと実績効果が上がった。また社会、クライアントの側も、それを許容し、うまく使う懐の深さがあった。バブルの余韻の残る時代、我ながらよく働きよく稼ぎ、よく遊んだ。その人生に悔いはない。しかし、時代は変わる。また、自由の代償も、いつかは支払わねばならない。最後の仕事となった超有名冷凍食品メーカーの仕事の途中で、私は体調を崩し、舌に癌があることがわかった。癌は複合的な原因で発生する。だから一概に確定はできないのだが、長年「食品の裏側」をなめ尽くしてきたツケがここに回ってきたものと思っている。

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 それを見つけてくれたのは、当時行きつけだった歯医者さんである。私は大のみかん好きで、和歌山の友人が送ってくれるみかん一箱を、カビる前に全部食べてしまうほどだった。ところがある時からそんなに食べられなくなった。舌にしみることに気づいたのは、ある虫歯の痛みに耐えかねて、その歯医者へ行こうとしていた頃だった。いつもの通り、荒っぽい治療が一通り済んで放免されることになった時、私は舌を歯医者に見せた。彼の顔色が変わった。「お前、すぐ診てもらえ。紹介状書いたるし。」「なんですのん ??」「まあお前やから言うたるけどな、癌かもしれんて。」・・・それからのいきさつは長くなるので省略するが、最初に行った阪大口腔外科では、舌1/3切除・咽頭再建・食道閉鎖・・・要するに食べることと喋ることは諦めろと言う。冗談やない。食品業界で営業する人間が二つとも取られたらどないして生きていけまんねん ?? 「ほな、死にますか ??」それから説明を受けた。舌癌はリンパに近く転移が早いので、全身に回って死ぬ確率が高い。しかもわかりにくい。しかしなんぼなんでも・・・とにかくそこを逃げ出して、かかりつけの内科に泣きついた。そこで森ノ宮の大阪府立成人病センターを紹介してもらったのが13年前である。舌は、前1/3は歯科口腔外科の縄張りであるが、後ろ2/3は耳鼻咽喉科の縄張りで、私の癌はその境界付近にあったらしい。もっと前部にできてたらバッサリやられて、今頃全く異なる人生を歩んでいたことだろう。いまこうして満足に人と話し、美味しいものを食べられるのは、とにもかくにも、執刀してくれた医師、発見してくれた歯医者、そして、当時の私の年齢で同じ舌癌に見舞われ、手術を恐れたためにのたうちまわって死んだ私の祖父の「虫の知らせ」のおかげであった。

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 状態を説明する時、彼は次のようなことを言った。「化学療法は、『癌を叩く』というように、まさに体を叩き続けるものです。しかも全身です。その痛みや苦しみは尋常なものではありません。また、放射線治療は、『癌を焼く』というように、まさに口の中が焼けただれるのです。これも尋常なものではありません。あなたの癌は舌の上にできていて、すぐそこに見えている。しかもまだ非常に小さく、切除するに何の造作もない。しかも確実に除去できる。それがわかっていて、患者に上のような負担を強い、しかも完治するかどうかも不確定な治療法を採用することは、私は医者として心が痛む。」・・・この、最後の表現、「心が痛む」という言葉を聞いた時、私は思わず泣いてしまった。こんなに心のある医者がこの世にいるのかと思い、私は彼に委ねることにした。「術後管理については、すべて私の方針に絶対に従ってもらいます。それが約束できるなら、切除範囲を約1/10に縮小して、食べることと喋ることの機能を残すことを約束しましょう。しかし、術後経過で少しでも異常が出たら、そのときは諦めてください。」もう、従うしかなかった。

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 森ノ宮にあった病院は大手前に移転し、「大阪国際がんセンター」と名前も変わっていた。経過観察は、術後当初は毎月だったが、その後、三ヶ月に一度、半年に一度と緩和され、10年を無事故無違反で経過してからは年に一度となった。しかし、当初触診だけでよかったものが、ファイバー・スコープによる検査が追加された。これは鼻から管を通して喉を見るもので、実は私はこういうものを挿入されると体が激しくよじれて反射的に侵襲を拒否するのである。胃カメラなどは、全身麻酔して意識を失ってからでないと入らないほどである。医者は「力を抜いて」と言うが無理なのだ。よじれてえづくのもかまわずにずんずん挿入されても、体内の管も硬直しきって閉じてしまうので検査ができない。そこでまた「力を抜いて」となるのだが、やっぱり無理なものは無理で、やがて医師も諦めて管を抜く。検査は不十分に終わるのが常だ。しかし料金は請求される。まったく理に合わない。しかし絶対服従を誓った手前、一旦は死んだ命を救ってもらったのだから、もう一度死ぬつもりで必死に耐えるのだが、やはりファイバー・スコープは入らない。しかも、これをやられると鼻や喉の粘膜が傷ついて炎症を起こし、治癒が遅れると花粉の季節に突入して5月ごろまでの3ヶ月、重い体調不良に見舞われる。実に1年の1/4だ。そんなことを2度繰り返したのち、今日も実は重い気分で診察に臨んだのだが、なんと先生、会うなり明るい表情で、「伊丹さんのために、喉に一切触れずにファイバー・スコープを挿入する技を身につけたから、私を信じてください。」と言うのである。この先生に「俺を信じろ」と言われれば殺されても信じるよ。なんと、麻酔も何もなしで、ただ単に口を大きく開けて息を吐き続けただけで、本当にどこにも触れずに、喉の奥まで検査してくれたのでした。医者としてのこの魂、神業とはこういうものかと、なんとも心に迫るものがありました。不思議な出来事でした。私は、本当にいろんな人たちに救われながら生きている。私は自分の人生を絶対に無駄にできない。

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 という思いをつらつらと胸に、大手前から大阪城のお堀端を歩き、法円坂を経て森ノ宮へ、かつて入院した古い建物を懐かしく見て、環状線に乗って鶴橋へ出た。30年来付き合いのある韓国食材店のお母さんに、毎年私が仕込んだキムチ用薬念醤の味見をしてもらっているのだが、10年ほど前にようやくOKが出てからも、ちょっと足りない唐辛子などを買い足すついでに味をみてもらっている。「もう、あんたの味やなあ。私らのんとは違うけど、これはこれで真似のでけん味や。」そこから上本町を経て谷九へ、調子の悪いドラム・ペダルを見てもらってスプリング交換したあと、日本橋で蘭州ラーメンを食べて、アメリカ村の古巣などをさまよいつつ梅田まで長途街歩きをしてから夜のバイトへ行ったことよ・・・都会はええのう !! 雑踏に身を紛れ込ませると、ホッとして心がほぐれるわ。

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2018年02月04日

20180204 味噌仕込

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 味噌の仕込み。大豆は一昼夜水に浸けて十分ふやかしておく。これをザルに上げて水を切る。この場合の水切りは大雑把で良い。

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 これを蒸す。蒸し加減は、指先で豆が芯まで潰れる程度。蒸すときに使った湯は「豆造 (とうぞう) 」といって、栄養に富み、大変美味なので、捨てずにとっておく。塩味の澄まし汁に、味噌摺で余った塩汁 (糀が含まれている) と混ぜて寝かして醗酵飲料や調味料に利用できる。鶴乃子大豆の豆造は乳白色だが、黒大豆の豆造は濃い紫である。

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 材料を揃える。蒸す前の乾燥状態の比率で、大豆 : 米糀 : 塩 = 1:1:0.5 である。蒸した原料だけでは味噌摺に硬いので、豆造で少し伸ばす。

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 全ての材料を揃えたら、必ず室温まで冷ます。冷めた豆造を米麹が浸る程度に混ぜて一時間ほどおくと、糀がふやけて摺りやすくなる。

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 全ての材料を混合し、満遍なくよく混ぜて、味噌摺器にかけていく。

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 出来た味噌の素を瓶詰めする。私のお手々は冬はあかぎれがひどいので、このように袋越しに瓶の底から詰めていく。

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 味噌摺器の周りに、摺り残した材料が残る。

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 大豆1kgを摺ると、だいたいこのくらい残るので、これは袋にでも入れて別にしておく。次の味噌摺りの時にも残るので、それを集めて最後にブレンド味噌を作る。

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 瓶詰したら仕込み日を記録して密封する。一ヶ月に一度、全体を混ぜ返す。これを夏を越すまで続けると、その後は安定して熟成に入る。私の味噌は三年熟成させる。したがって、今食している味噌は三年前に仕込んだものである。もう三年前の2月の瓶を消費しているので、出荷できるのは3月の瓶を開けた時からということになる。

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 引き続き来週の仕込みのために米を水に浸ける。次は鶴乃子大豆で仕込む。味噌や醤油は、丹波黒大豆を使うより鶴の子大豆の方が向いているような気がする。再来週にはソラマメ味噌も仕込む。食する時にこれらを合わせて複雑な味を楽しんでいる時が至福。

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 早速、豆造を使ってパンを仕込む。以上の作業を来週と再来週も日曜日にやります。また、都合が合えば、出張ワークショップもできます。ご相談ください。

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 そんなことをしながら片手間に焼いたパンが意外にうまく行ったりする。

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2018年02月03日

20180203 味噌仕込

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 米糀の状態がずいぶん良くなってきたので、予定通り明日味噌の漬け込みをします。この状態に持っていくには仕込んだ後の温度管理と適度な切り返しが必要です。もっとも留意すべきことは、糀菌は約40℃で死滅するとされているので、一貫して品温をそれ以上に上げないこと、また25℃未満になると極端に醗酵速度が落ち、場合によっては全体に水分が回ってふやけてしまい、こうなるといくら加熱してもどんよりと重く水分を持ったまま腐敗していくことがあるのです。仕込み直後は35℃程度、糀菌の種にもよりますが、「五日糀」の場合、一日弱で次第に活着して自己発熱を始め、やがて旺盛になり全体に白い粉が噴いたような状態になり、その頃には米粒同士が菌糸で結着して板のようになります。菌糸は表面を覆っているだけなので、これを内部へも浸透させることと、酸素補給の目的で、菌糸を中に入れ込むようなイメージでほぐして混ぜ、材料を切り返します。順次、温度を見ながら、自己発熱の度合いに応じて加熱を緩め、場合によっては加熱をやめて保温のみで経過を観察します。こうして菌糸を蔓延らせては切り返すことを、様子を見ながら数回、全体に菌糸が回った頃完成とします。この状態を「破生」、その糀を「出糀」といい、仕込みの都合で醗酵を止めることを「塩切り」といいます。塩切りには、元の原料の質量の30%の塩を混合するので、例えば味噌を仕込む場合、破生から仕込みまでなんらかの事情で日が空く場合には、分量の塩のうち原料の30%を塩切りに使い、残りを仕込みに使うことになりますので注意が必要です。私の味噌は、乾燥状態での質量比において、大豆 : 米 : 塩 = 1:1:0.5なので、大豆1kgから味噌を作る場合、500gの塩を分量として用意することになります。途中で塩切りを必要とする場合、このうち300gを塩切りに使い、のちの仕込みには200gのみ使うという要領です。このように、糀造りは温度と状態を観察しながら見守る必要があるので、「寝ずの番」が求められます。私が「五日糀」を使うのは、途中、仕事や休息で番をできないことがあるので、そのリスクを少しでも低減するために、醗酵の緩やかな種を使っているわけです。長年の経験値より整理した作業工程表を以下に示しますので、お作りになる方はご参考になさってください。なお、醗酵力の強い「三日糀」などをお使いの場合は、作業工程がこの半分程度に短縮される代わりに、それぞれの見極めや適宜適切な手入れが、かなりシビアに求められることになると思います。また、これは寒中の味噌仕込み、しかも最低気温の基本が氷点下5℃程度の当地方での工程表であり、ソラマメ味噌を秋に仕込む場合はこの限りではありません。むしろ冷却が必要な場合があります。これはあくまでも参考程度とし、実際には原料をよく観察しながら作業されることをお勧めします。


累計時間     作業内容

000      米の精白・洗浄・浸水 (完全精白米、室温がプラス5℃程度で約15時間、三分搗きで24時間、玄米ではそれ以上しかも活着まで時間がかかる)

024 (1日)   水切り (表面から水がなくなり、手につかなくなる程度)

048 (2日)   蒸煮 (30分・芯がようやくなくなる程度) 

049      放冷 (かならず40℃未満・35℃程度で撒種)

        加熱開始 (品温を下げすぎると適温まで再加熱に時間がかかる)

065      切り返し・様子を見ながら加熱を調整 (撒種から約16時間)

077 (3日)   同上 (以下適宜。目安としては1日2回)

089      同上

096 (4日)   同上 (だいたいこのへんで加熱を緩める)

108      同上

120 (5日)   同上 (だいたいこのへんで加熱から保温へ)

132      同上

144 (6日)   同上・大豆の洗浄・浸水

156      同上・大豆を水切り

168 (7日・撒種から5日) 出糀・大豆の蒸煮 (指先で芯が潰れる程度)

180      米・大豆・塩を混合、味噌すり

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