狐につままれたというか、狐に後頭部はっ倒されたというか、頭も体も疲れ切っていたので今日は一日寝てた。さっき起きてここ数日に起こったことを思い返して見る。例の屋根裏の大量糞尿処理以来、高齢のため返されてきた荒地のような田んぼの復元も含めて、家主さんには感謝されこそすれ、裏切られるようなことは一切していない。しかし、残念ながら、これは完全な裏切りだ。隣家の立木の問題で、家主さんと私は協調していたはずだった。しかし隣家の親族の代表は、たまたま住んでいる場所が、川向こうの家主の教会の親教会の近所だったので、この問題をそこへ持ち込んだ。その家の長女が、私と同じ敷地に住む四人家族の主人Aさんの奥さんである。それでこの問題にAさんが首をつっこむことになった。私は当初から、この問題は、隣家の代表者と、家主さんと、私による三者で話し合って決めるべきだと主張していた。なぜなら私は農地法で規定されたこの農地の使用者であるから。しかし先方は、あくまで私を交渉当事者から外し、問題を一般的な植木の日陰問題に単純化して、目の前に垂れ下がって作業の邪魔になる部分のみ枝打ちすると主張した。つまりその上空に広がっている幹や大枝は、樹木としての特性上、伸びることは自然であるというのである。私は家主さんと協調する立場からこれに猛烈に反対し、問題は宅地と農地の関係であって、立木が覆いかぶさっていることによって適切な農地の管理ができないこと、日当たり不足によって発生する稲の病害の対処に追われていること、使えない部分を結果的に放置していることによって私が農地法違反に問われていることを挙げ、境界線からはみ出している部分は全て伐採するように主張した。しかし、Aさんが乗り出してきてから家主さんが黙ってしまい、結局私は梯子を外された。状況の変化に気がつかなかった私は、枝打ちを始めたAさんに対して上のような内容を説明した。Aさんはそれに従ったが、後になって「私に強制された」と言い出した。中略するが、強制的に伐採された木が枯死したり倒れたりすることによって家が損傷を受けた場合、私に対して損害賠償を請求すると言うのである。事前協議の時に私を除外しておきながら、事が起こったら私を訴えるという、支離滅裂で呆れてものも言えん論法なのだが、例によって私を「朝鮮人」・「人殺し」・「テロリスト」などと噂を流し、現在、家主さんともAさんとも口をきいてもらえない状態になっている。
もうひとつ、先日からの暑さで、また去年のような臭いが立ち込めはじめたので、反対側の隣家へ対処をお願いに行ったのだが、結論から言うと、今年も去年と同じように隣接する場所で堆肥づくりをする、これは県の補助事業によるものなので変更はできないとのこと。では匂いの件はどうするつもりかと問いただすと、結論から言うと、匂いは我慢できる程度を超えていないと言う。去年も県の職員立ち会いの元で説明したが、私は部屋へ来て匂いの酷さを確認して欲しいと言ったのだが、彼らはあくまで発生源での計測数値で問題のないものは対処のしようがないと言う。屋外では匂いが飛散するが屋内にはこもる、と言うことをいくら説明しても納得しない。現状を見ない、というか、これを現状とは認めないのである。今年も同じ担当者に電話したが同じ姿勢であった。どうしてもだめのようだ。今年もまたあの暑さと臭いの中で過ごさなければならないかと思うと、全くやりきれない。この隣家は別に噂を流すような人たちではないが、問題はすでに知れ渡っていて、外野からの噂が耳に入ってくる。要するに私は近隣に噛み付いてばかりいるクレーマーで、そんなに嫌ならさっさと出て行けば良いのに、と言うのだ。
それもそうだなと今は感じている。私がいなくなれば全て解決する問題だ。私が問題の原因を作っているのは事実だ。結局、先日返されて来た農地も、隣家の立木の問題も、農地の保全という視点から見れば、両方とも私が復旧させたのだ。今では完全な農地として使える。ここで私がいなくなれば、何の問題もなくみんなが使えるのだ。視点を変えてみるとよくわかる。現状、私は天理教の施設に居候している。この施設は家主さんでは持ちきれず、転用していくばくかの利益を生まなければ存続できない。その経緯でAさん一家が入居した。で、今回たまたま二つの問題が持ち上がり、私は、おひとよしなことに、このふたつの問題を身を挺して解決したことになる。そこで私が居続けることができない状況を作れば、天理教の施設として、食農の体験施設として、彼らは手を汚さずに私の住処を有効に活用できるのである。
正直、もうしんどい。なにもこんなに苦労しなくても、元の甲陽園にアパートでも借りて、近隣店でバイトでもすれば今よりずっと余裕ある暮らしができる。やってみてはじめてわかったが、農業なんて私の手の出せるもんじゃない。邪魔者ならそれでいい、10年もこんなことを繰り返している。三年の契約が満了したら解約してここを出ようと思う。残念ながら、もう私には力がない。すまんね愚痴ばかりで。