2011年05月14日

20100411 Üsküdar

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 泣いても笑っても今日が旅の最終日。旅に死のうと覚悟して出たにもかかわらず生き延びてしまった事を悔やむと同時に、無事に生きながらえている事への感謝、終わって行く寂しさとむなしさ、もっと突っ込めたのではないかという後悔の念が、灰色のBosphorus海峡に渦巻く波のように駆け巡る。歌にも歌われたÜsküdarを一目見ておこうと思い、連絡船に乗る。

 

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 対岸の船着き場の広場で渋いおっさんがチャイ売ってたので、その場で買って飲む。肌寒い風の中、どんよりとした曇り空の下で飲む甘ったるいチャイの味が最高。チャイは鶏の血の色のように赤いのが良いとされ、それを濁らさずに常に良い状態で保温するのがチャイ売りの極意なのだそうだ。近くを流して来たパン売りの少年からトルコ風ベーグルを買ってほおばりながら、チャイをお替わりする。鳩に混じって、暇そうなおっさんが集まっては消えて行く。やはりこちらはアジア側、どことなく対岸とは空気が違う。フロントガラスの行き先表示を見て、どうやら周遊バスと見たこのdolmuşに乗り、道端で仕事仲間とチャイを飲んでいる運転手に、身振り手振りで「ぐるっとまわるのか ??」と訊いてみたら、にんまり笑って「ええとこ連れてったるぞ」とか言ったような気がした。

 

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 久しぶりに雑然とした下住宅街の緊張感を鋭い視線に感じながらのdolmuş周遊の小旅行は実に楽しいものだった。運転手は誠に快活で、そこのタバコ屋の娘は多分イケるとか、あの丘の上のクソババアの飼い犬は八釜しいとか、今にも崩れそうな斜面に張り付くように建っている、恐ろしく庶民的なたくさんの住宅の間を、まさに縫うように走る狭い路地の全てを知り尽くしていて、その辻つじの全てを私に伝え切らなければ気が済まないという剣幕でまくしたてて来る。その調子はだんだん熱を帯び、やがて言うべき事が増えすぎて走るスピードに追いつかなくなり、しばし車を止めては客に文句を言われ、渋々車を出しては運転がおろそかになる、という事を繰り返しつつ、行きの客と帰りの客がすっかり入れ替わる頃には、みんな面白がって運転手の説明に茶々を入れたり異論を唱えたり、客同士で見解の相違がぶつかったりと、なかなかの盛り上がりであった。しかも機関銃のような早口のトルコ語である。私も行きしなの前半くらいまでは、なんとかひとつひとつの身振り手振りで話の内容を追いかけていたが、やがてそれにも疲れてしまい、次第に聞き手の主体は私よりも地元の乗客に移り変わって、もとの乗り場へ戻って金を払おうとすると、「なんや、おまえまだおったんか」・・・いやいやどうして、たぶん30年前もこんな感じだったであろうと思われるひとこま、ええもん見さしてもらいました。

 

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 ちょっと静けさ欲しさに丘の中ほど、海峡を見おろすモスクへ向かい、礼拝に集まる信者たちに混じって中に入り、ともに礼拝し、彼ら全てが出て行った後も堂内にとどまって、時と光の移り行く有様を心に沈め、平安な気持ちで帰りの舟に乗った。

 

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 Eminönüにもどって遅い昼飯を食いながら旅の締めくくりをどこで過ごすかを考えた。船着き場に置いてあった、黒海まで行けるBosphorus海峡クルーズ船の出発にはちょうど良い時間だったが、思い直してEyüpへ向かうことにした。先のモスクでの瞑想の時間でイスラムに啓発されたのか、メッカ、エルサレムに次ぐイスラム第3の聖地であり、近くにはフランス人の詩人Pierre Lotiがこよなく愛したという絶景のカフェがあるというSultan Camiiに向かう事にしたのである。目の前のターミナルから99番のパスを捜し出して乗り込む。

 

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 今日は日曜日とあってEyüpのSultan Camii周辺は大混雑で、私は早々にバスを降りて道を歩いた。道々土産物屋や参道沿いの庶民的な建物を見物したりしてなかなか楽しかったが、観光地というものはとかく人に金を使わせるように出来ているので、Üsküdarでの体験のように地元の人との心のふれあいは少ない。イスラムでも大本山というか聖地というか、大掛かりな宗教施設の周辺というものは独特のバブルな空気に満ちあふれていて、それに染まらなければ楽しめないように出来ている。こちらにはその気はないから適当にあしらって次ヘ行く。

 

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 Camiiの参道の脇から墓地へ上がる道があり、それに添って広大な墓地公園を散策すると、やがて反対斜面に通じる路地があって金閣湾を望む。断崖になっている道を川に遡るように進むと、やがてPierre Lotiのチャイハネに出る・・・のだが、とにかくものすごい人で、異国を旅して作品を遺した詩人の想いを辿ってみたいという私の目論みは完全に外れた。「Pierre Lotiのチャイハネ」は、別館のほかに新館やアネックスもあって、路地の通路にまでテーブルを出し、その全てが満席であって順番を予約しなければならないほどである。もはや情緒もなにもない、そこらじゅう土産物屋だらけの喧噪状態。辛くも逃れて脇道を捜したが見つからず、仕方なく群衆に押し出されるようにメインの参道に戻った。渋滞で時間を取られるのはイヤだったので、地図を頼りにメトロの駅を捜し出して戻って来た。えらい目に遭うた。帰りに、昨日予約しておいたシンバルを買いに「Drum Club Shop」へ寄ってみたが、なんと日曜定休という。やれやれ、それもこれからの為にカネを温存しておくようにとのアッラーの神の思し召しと諦めて、Ara Güllerの分厚いモノクロ写真集だけを買ってホテルに戻る。荷造りするうちにやがて辺りが暗くなりはじめたので、見納めにGarata橋で屯する釣り客をモスクを遠景に写真に収めようかと思ったが、表通りが余りに気ぜわしいのでやめた。ちょっと休んでいるとすぐ暗くなり、慌ただしく旅の最後の日は暮れてしまった。

 

 http://web.mac.com/jakiswede/iWeb/3e_mobembo/Istanbul.html

 

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posted by jakiswede at 00:21| Comment(0) | ザイール・ヤ・バココ第三の旅2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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