2012年10月24日

20121021 cafeminhos

KIF_2286.JPG

 


 先日のcafeminhos @ 六甲山カフェの営業中、残念というか、考えさせられることがありました。


 私は、お店で出している料理については、おでん以外は加工食品をいっさい使わず、農薬と化学肥料を使わずに栽培した野菜や米を使って、化学調味料を使わずに気持ちを込めて手作りしたものをお出ししており、その味と安全性には自信と誇りを持っております。ちなみにおでんは、「六甲山カフェ」を「大谷茶屋」で営業するための必要条件なので仕方なく作っているもので、それ自体が季節性のない緊急避難的な料理で加工食品がないと成立しないと割り切っておりますから、この際除外します。


 おそらくご近所の方で、散歩のついでに滝の脇で読書でもしようと思って来られた年配の方が、昼食に「チキン・カレー」を注文してくださいました。私のチキン・カレーは、クミン・シードをスタータに使い、タマネギをペースト状になるまで炒め、トマトをベースとして、各種単体スパイスをストレートでブレンドし、畑の野菜をふんだんに使い、チキンは一昼夜スパイスで漬込んだあと蒸して、その煮汁で全体を絡めるようにして作っています。特に、コリアンダーをはじめいくつかのスパイスは自家製です。もちろん市販のルーや小麦粉は使っておりませんので、とろみはタマネギ・ペーストやコリアンダー・シードから醸し出されたものです。これを、自家製のインディカ米を前日に三分搗きにしたものを、スパゲティのように「アルデンテ」に湯がいたあと水分を飛ばしたライスにかけてお出ししています。したがって、日本の伝統的な「カレー・ライス」とはかなり違ったものになります。私はインドを旅したことがありませんので、これが正しいインドのカレーかと問われると、返す言葉もありませんが、何人ものインド人の方にも食べていただいたことがあり、喜んでいただいております。


 ところが、その年配の方は、カレーを一口食べられるなり突然激怒され、「こんな臭い飯、どこのん使とんや」とおっしゃいますので、私が作った米であることをご説明申し上げましたが、まさに火に油を注ぐような結果となり、ついにほぼ手付かずのカレーを置いたまま出ていかれました。それだけなら、これまでにも何度か経験しておりましたので、味覚の違いとして気にも留めなかったのですが、その方は滝で休んでおられる人々を相手に「あんなまずいもん・・・」などと公言しはじめられ、お店に入ってこられようとした別のお客様にも「あかんで、まずいで」などと声をかけられる始末でしたので、私は代金を持って「お客様、ご満足いただけないようでしたら、お代はよろしゅうございますから、どうかそのようなことはおやめくださいませ」と申し上げましたところ、「わしはカネ返してもらいとうて言うとんちゃうわい、間違うたもんにカネとるおんどれの根性を言うとんや」と逆に炎上され、「こんなやつらがおるから・・・」とぶつくさ垂れながら山を下りていかれました。


 その次に入ってこられたお客様が「羊のシチュー」を注文してくださいました。これも「チキン・カレー」と同様に丁寧に、特に羊の肉は神戸のイスラム教徒が買い求める専門の店で手に入れたものを、圧力鍋で骨から肉が自然にはずれるほど柔らかく煮込んだものです。骨髄のゼラチン質がシチュー全体のとろみを特徴づけ、これが羊の肉を使う醍醐味と、旅で覚えた舌が申しております。これを注文してくださったのは若いカップルで、羊の方は女性が、男性はカレーを注文されました。先ほどのお客様の件もありましたので、念のため羊の肉とインディカ米には独特の風味があることをお断りしました。ご納得の上でしたのでお出ししたところ、女性がシチューをひとさじ口に運ばれて「ウッ」と手を止められ、首を振りながら男性に助けを求められました。男性はご自分のカレーと交換されましたが、女性はこれもダメでした。私は申し訳なく思い、代金をお返しした上で、紅茶をサービスさせていただきましたが、お二人はこれにも手を付けずに出ていかれました。

 

 それと相前後して、香港の民間テレビ局からの取材を受けました。飛び込み取材でしたので、私個人で対応しましたが、洞窟の中の様子や、それをカフェとして再生している実態などを興味深く取材しておられました。その取材クルーが、祠や滝を興味深げに撮影しておられる様子を、一部の年配の方が「中国人か ?? 」と問い詰められ、それに呼応する形で何人かの人たちが彼らを取り囲む場面がありました。若い人たちが何人か、その年配のグループをたしなめたりしておられましたが、ガイド役を務めていた日本人の女性が私のところに助けを求めてこられましたので、再びお店に入っていただきました。年配のグループが追いかけてきましたので、私が立ちはだかる状態となり、どうかご理解いただけるようにと若者たちと一緒にたしなめましたところ、やはり「こんなやつらがおるから・・・」というような言葉を吐きながら降りていかれました。取材チームはかなり恐怖を感じた様子で、しばらく休んだあと、その若者グループと一緒に山を登って行かれました。


 その後しばらくは、いつも通りに喜んでいただけるお客様が続き、どうにか気を取り直すことができましたが、夕刻近くになってお向かいの「大谷茶屋」さんのお得意さんからおでんの注文があり、追加でご飯を2つつけて欲しいと頼まれました。ご飯は、シチュー用にインディカ米を、おでんセット用にコシヒカリを用意しており、特にコシヒカリは先週脱穀したばかりの新米です。おでんは私は不得意なものですから、間違いのないように業務用の出来合のものを温めてお出ししています。売価の半分程度でしょうか、そんなに安物ではありません。しかしこれにもクレームが来ました。手作りでないことは認めざるを得ませんでしたので、平に謝りましたが、ご飯についてもクレームがつき、「こんな真っ黒なもん出すな」と、ご老人が体を震わせながら怒っておられます。さきほどは率直に説明したことかで却ってお客様の怒りを増長させてしまいましたので、今度はひたすら謝りなんとか事無きを得ましたが、「ちゃんとした白い飯を用意しとけ」と注意を受けました。


 精米歩合については、特にご高齢の方は神経質なように思います。以前にも私のカレーを注文しておきながら、ご飯だけをきれいに残して返してきたお客様が何人かおられました。私の実家でも、やはりご飯は純白で、お粥に近いほどに柔らかく炊くのが「おいしい」ご飯でした。また、初めてできたお米を三味線のお師匠様にお届けしたら、やはり身を震わさんばかりに不快感を示され、「そんな黒い米」と言われて精米し直したこともありました。戦争中に雑穀の混じったものしか食べられなかった辛い経験を思い出すのでしょう。山に来てまでそんなことを思い出したくもない、というのが本当のところかもしれません。


 「六甲山カフェ」は、山にカフェを持ち込んだら面白いだろうねというアイディアから始まり、そのコンセプトに賛同した者たちによって運営されてきました。しかし、我々がいくら面白いと思っても、そう思わない、あるいは不快に思う人があるでしょう。それが、地元の山に入るメイン・ルートの入り口にあるとなれば、なにか自分たちの聖域を侵されているように感じられる人があったとしても不思議ではありません。問題は味覚の違いなのではなく、予期せぬものを出された客の立場も考えなければならないということです。「ボン・カレー」が正しい日本のカレー・ライスだと思っている人に、さまざまなカレーを楽しみたい気持ちなどありませんから、異質なカレーがいきなり出てきたら怒るわけです。ちょっと読書にも疲れ、小腹も減ったので、正しい日本のカレーライスでも食って滝の爽やかな空気の中で昼寝でも・・・と思っていた人の休日を、私はぶち壊したことに間違いないのです。なにか新しいことを始めようとすると反発を食らうのは当たり前のことですが、なかには予期せぬ状態で突きつけられて戸惑う人が多いのも確かです。そんな人たちに対してどのように接していけば良いのか、考えさせられる事件が連発した営業でした。これが「六甲山カフェ」の現実です。帰宅してメールをチェックしていると、このようなリンクに出会いました。これもまた「六甲山カフェ」の別な面です。この二つはあまりにも、悲しいほどに乖離している。そうは思いませんか ??


 


http://colocal.jp/topics/think-japan/local-design/20121019_12846.html

 

 

 

 

 

posted by jakiswede at 01:46| Comment(2) | cafeminhos | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あのうまい料理にそこまで嫌悪感をあらわにする方がおられるというのは、人間の食の嗜好というのは,頑迷で業の深いものだと思います。タイミング悪く、悪しき巡り合わせが続いたものですね。しかし、cafeminoの料理をうまいと思う方々も当然おられるわけで…たぶん、何も言わずに帰る人も、「あれ、やけにちゃんとしててうまかったぞ?なんで?」と口にはださずとも思っている方が多いのではないでしょうか。なにとぞそれをお忘れなき様お願いたします。
Posted by 直川 at 2012年10月28日 01:09
えらい災難でしたね、
小奇麗なレストランならまだしも
洞穴のような場所で、ある意味原始的な食事を食べる、この関連付けがちょっと危ないかも?
2件続いたとなると、お客さんが受ける印象も考えることも必要なのでしょうかね・・・。
Posted by ぱうりん at 2012年10月29日 12:27
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