さて、寒い寒いとばかりも言っておられず、泥雪にぬかるむ道を歩きはじめる。レギスタン広場の東の縁をバザール方面へ北上する立派な道Tashkent Roadを行くと、やがて両側に立派なショウ・ウィンドウを備えた高級土産物屋の並んだところへ出る。その東側の並びに、このような鉄の扉で仕切られた路地があったので入ってみた。
何の気なしに歩いていると、土井ちゃんも私もある香ばしいにおいに引きつけられ、吸い寄せられるように入っていくと、ナン工房があった。ここの連中はみんな親切で、ナンの製造工程をつぶさに見せてくれた。これは焼成のために成形する前の状態、我々が作るパンと全く変わらない。直径は20cmもないので、生地の小麦粉の重さは300gもないであろう。
ここからが見事な手技であった。その生地を無造作につかむと、ホイホイホイホイと薄く伸ばしてペタッと丸くて堅い座布団のような台に乗せる。
そして周囲をドーナッツ状に手早く整えて、
その縁を棒で引っかけて、大きな石窯の内側に貼り付けた。
熱源はガスで、縦長のコンロが入っていて、直火である。これがなぜ落ちないのか、これでなぜムラなく焼けるのか、なぜ真ん中が膨らまないのか、謎である。
焼き上がりの大きさは直径30cmほどもある。窯の番をしている若者は、程よく焼けたものから順に手際よく取り出し、別の若者がゴマを振りかけ、ヒマワリの種の油を刷毛で塗り付けて完成である。
焼きたての生地はこのような感じで、これは確かに美味かった。この膨らみ、気泡の勢いは直火ならではのものであろう。また、底面ではなく側面や天井に置かれることが、このような焼き上がりを決定づけるのか、帰ってから実験の余地がある。とにかく美味い。
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