2013年12月08日

20131005 不耕起稲作失敗例

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 川口さんの提唱するやり方の不耕起・自然農法を本格的にこの春から始めることにした。米作りについては、結果として約4畝で例年120kg程度採れる筈のところ、たった10kgの収穫に終ったので全滅といってよい。最大の敗因はコシヒカリで不耕起栽培をしたことだ。不耕起を決意する前にコシヒカリの種籾を手配してしまっていたからだが、コシヒカリという品種は、資財投入型の農業、すなわち農薬・化学肥料・大型機械を使って、大規模に安定的に、しかも日本人の現代の流行の味覚に合った米を作る目的で改良が重ねられて出来たもので、言い換えれば箱入り娘だ。特に今年2013年は、コシヒカリの登熟期に台風や豪雨が重なって、私の近隣ではほとんどの田んぼでこれが倒伏した。名前に反して極めて腰の弱い品種といえる。これを不耕起の田んぼで栽培しようということは、箱入り娘をジャングルに裸のまま置き去りにするようなものであって、その細い御身足は硬い地面にくずおれ、柔肌は生い茂る他の草に舐め尽くされ、産毛に包まれたデリケートな部分が虫や鳥たちに恣にされた。しかしそれは考えてみれば当然のことだった。


 私という人間が、なんぼヤッてみんとわからん性格とはいえ、日頃から中東やコーカサスの紛争を聞いては「美女を無駄遣いすんな」と憤慨してるくせに、きちんと育ててやれば箔も着こうという花を徒に全滅させてしまった過失は真に許しがたい。しかし百聞は一見に如かず、失敗したとはいえそれは結果であって、その結果に行き着くまでのプロセスにおいて、多くの興味深い様子を観察することが出来た。これらはヤッてみないとわからんのであって、足を踏み外すことの出来ないプロの農家のご参考になれば幸いである。具体的に見ていこう。


 上は2013/05/23、川口さんの本にあった田んぼの準備の写真を見て用意した田植え前の田んぼの状態である。川口さんのやり方によると、田植え前に代掻きをしないのはもちろんのこと、水管理も圃場を完全に水没させるのではなく、上のように適当な間隔を置いて切った溝に水が満ちる程度の半陸稲状態に置くということである。このやり方で試してみる。しかしこれを決意する以前の、昨シーズン稲刈り後と年明けに一度ずつ、田んぼ全体を鋤いてしまっているので、厳密には不耕起とはいえない。来シーズンのための礎である。画面奥はお隣さんの三反田、水がなみなみと張られてある。


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 田植え直前の頃、代掻きをしていないので昨シーズンのこぼれ種が発芽している。これがのちのち意外なことを教えてくれる。種降ろしは例年では4月の下旬に温湯消毒をして催芽し、発芽してから苗代に撒くのであるが、今年は自然農的に直接苗代に撒いた。4/22のことである。しかしここでも私は失敗した。川口さんの方法によるのであれば、苗代作りもそれに倣わなければならなかったのだが、ここをぞんざいにしてしまった。実はこの春は天候が安定せず、寒い日が多かった。低温続きで発芽が例年より遅れ、GWには発芽を見るべきものが5月中旬までずれ込んだ。あわてて圃場の隅を切って代掻きをし、急ごしらえで苗代として蒔き直したが、その後急に気温が上昇して苗も急成長した。6月に入ると蒔き直した部分を含めて苗は5葉に育ち、6/02に苗取りをした。このあたふたもコシヒカリにとっては望むところではなかったはずだ。


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 06/03 ちょっと水の多い畑のような状態のところへ田植えをする。川口さんの田んぼとの違いは、自然農では土が露出せず、土の上におびただしい植物の亡骸やいな藁が積み重なっているのに対し、私の田んぼでは冬までに耕起してしまったのでそれらは土の中に鋤き込まれている点である。代掻きをする一般的な水田では、圃場は泥であって、裸足か地下足袋か、田植え用の足に密着する長靴でないと入れないのだが、不耕起の田んぼは土が硬く、普通の長靴で充分である。田植えも、苗を持って片手でさっさと泥に刺していくわけにはいかず、鎌を持って植える場所の土を切り裂きながら、そこへ苗を差し込んで土で鎮圧していくので、両手を使い大変疲れるし、時間が通常の3倍はかかる。お隣の田んぼは、既に田植えを終えている。大型機械による田植えでは、苗は小さい3葉の状態で植えるので時期は私の田植えより少し早い。しかし種降ろしは標準の暦に従っているので苗そのものの生育はほぼ同じである。コシヒカリは8月の初旬に開花する。成長の状態を測るのはそこからの逆算になるので、田植えの時期よりも種を水に浸けた時期、すなわちそのときとそれからの温度の推移が成長を左右する。


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 06/08 3日がかりで4畝の田植えを終え、水位を上げる。手前は、急ごしらえの蒔き直し苗代の部分である。残っている苗はインディカと赤米である。これらの田植えは脇田に2週間後を予定していて、本田の田植えも一旦待ちとなる。お隣の三反田の苗は活着して色が濃くなっている。


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 07/13 畔に丹波の黒豆を植え、それらとともに成長するコシヒカリ。水際には水生雑草が出ているが中の方は様々な草に覆われている。田植えからここまでは、特に周囲の草に巻かれる状態は見られなかったが、念のため全体を除草している。方法は、地面が硬いので普通の長靴で入り、屈みこんで鎌で雑草の根元を切るのである。つまり両手で行うので、代掻きした田んぼよりも遙かに腰にくるし時間もかかる。5畝の除草にのべ10日かかり、それを2回繰り返す。


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 07/14 一方、これは同じ時期の赤目自然農塾の実習田の状態である。土を覆い尽くしているのは生きた雑草よりも枯れた稲藁など亡骸が多い。品種は赤のもち米であるが、私の作っている品種とは異なるようだ。晩稲であるので写真による単純比較は出来ないが、この時点では大きく外れていなかったものと思われる。


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 08/08 コシヒカリ例年通り順調に開花。もちろん分蘖は少なく草丈も低い。しかしこれ以後は除草に入ることが出来ないので、ここまでにどれほど雑草を押さえることが出来たかが、この後の彼らの命運を決める。抜けば簡単だが、抜くと不耕起にならないのでそこが我慢のしどころである。


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 08/08 こちらは蒔き直した急ごしらえの苗代部分 (画面の右半分) 。この部分は、苗代にするためにほんのすこしレーキで掻き均した。晩稲の田植えを終えたあと、その跡地を除草して田植えをしたのだが、それだけのことで、分蘖も草丈も全く異なるのがよくわかる。開花は遅れ気味だが、一部は開きはじめている。ここだけの比較では、あきらかに不耕起よりも代掻きをした田んぼの方が、稲の生育は良い・・・厳密にいえば、大きくなっている。


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 08/22 穂が垂れはじめる。分蘖が少ないことと、出穂した茎が更に少ないと見られることから、明らかに例年より実りが少ない。除草を絶ってから、暑い夏の日差しを受けて、徐々に雑草が稲を凌いでくるのがわかる。しかし開花後は田に入ることは却って穂を傷めるというので、じっと成り行きを見守るより他にない。コシヒカリと異なる濃い葉の色が所々に散見されると思っていたら・・・


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 09/05 なんとこれらは、こぼれ種から発芽した赤米であった。例年、晩稲を植える脇田では水田裏作に麦を育てるので、赤米やインディカも、コシヒカリを片づけたあとの本田で干すことにしている。だからこぼれ種は毎年あるはずだ。しかし例年は田植えの前に代掻きをするので、こぼれ種は死に絶えるのである。代掻きをするということは、このように田植えをする苗にとって極めて優遇された状態に置く。逆にいうと代掻きによって、ほとんどの種は死に絶える。極めて除草効果が高いことがわかる。


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 09/17 お隣の三反田は先日稲刈りを終えられた。こちらも適期を迎えているが、雑草の繁茂がひどい。稲刈りはこの中に屈みこんで入り、コシヒカリの株元だけを見極めて刈り採って集めていくことになる。


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 09/19 この稲刈りは難航した。なぜなら、場所によっては他の品種の稲や雑草と混在し、このように分蘖した側枝も枯れ落ちて息も絶え絶えに一本だけ稔っているものも多いからである。これらを見分けて刈り取りながら進む。


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 09/19 同じ条件下で品種による生育の違いを見るために、こぼれ種から発芽した他の品種の稲も等間隔に間引きしておいた。この違いを見よ。


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 10/10 やれやれ。これだけ集めても10kgの収穫だったが、教訓の多い米作りでした。来シーズンは品種を変えて、陸稲でもいける、兵庫県に適した品種を捜して、更に不耕起栽培を試してみたいと思います。


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posted by jakiswede at 23:04| Comment(0) | 農作業食品加工日誌2013 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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