2014年02月05日

20140203 Praktiflex FX

 

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 Praktiflex FX Nr.79528


 一眼レフカメラは、「カメラ・オブスキュラ」というものが原理である。これは、レンズを通ってきた光をミラーで直角に進路を変え、その先に設置されたすりガラスなどに画像を映し出して観察するもので、おもにデッサンに使われた。ミラーの中心点からスクリーンまでの距離と同位置に感材 (すなわちフィルム)を置き、その直前に開閉できる遮光板 (すなわちシャッター) を配置し、ミラーの退避、シャッターの開閉を制御できるようにすれば、感光材に適切な画像が得られる。ミラーを置くのは、感材に投影された像を直接観察する事が難しい、なぜなら感光してしまうからであって、感材とは別に観察用のスクリーンを置く事で、画像をゆっくり観察できるようにするためである。このカメラは、そういうシステムを、35mmロール・フィルムという小さな画面で精密に小型化したものといえる。


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 それまでのカメラは、撮影レンズを通る光路と、被写体を観察する光路は別になっているものが主流であった。箱形で、撮影レンズの上部にいくつかの窓が並んでいるのはそういうカメラである。撮影者は、ファインダーを通してそのいくつかの窓から被写体を見て、フレーミングしたりピントを合わせたりする。そして合点がいったらシャッターを切るのだが、このシャッターは、撮影者が見ている光路とは別の撮影用のレンズに装備されている。しかしフレーミングするにしてもピントを合わせるにしても、撮影光路と観察光路が別になっていたのでは、原理的に両者は合致しない。この差の事をパララックスという。特に近接撮影ではその差は大きくなり、見ている位置が違うので映っている範囲がずれる。ちょうど、右目だけ、左目だけで、近くのものを見ると、両者の見え方が違うのと同じである。またピント合わせは、三角測量の原理を応用して二カ所から見た像を合致させるやり方が主流であるが、その装置とレンズの繰り出し量を検知する装置の工作精度や連動精度が、ピント精度を直接左右する。つまり靴の上から足を掻いているようなものである。一眼レフが生まれる前は、このようなレンジ・ファインダー式のカメラが主流であった。


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 映画用35mmロール・フィルムのカメラへの普及が進むにつれ、写真は様々な場面に使われるようになった。おそらく写真撮影の現場で最も厳しい精度が要求されたのは、接写・複写・顕微鏡写真の分野であっただろう。これらの世界では、撮影光路と観察光路が別になっていたのではほとんど用をなさない。そこで、見たままを撮影できる機材が当然の要求となった。これに最初に答えることができたのは、おそらくExaktaというカメラであろう。これは、スタンドに取り付けてレンズを下に向け、下に置いた原稿を複写するのに好都合であった。真下からレンズに入った光は、ミラーによって水平方向に向かい、撮影者はこれを自然な態勢で観察することが出来る。撮影するには右手でシャッターをレリーズして、右手で巻き上げレバーを巻く。Exaktaは、このように主として複写用に用いられた。しかし、このカメラを外に持ち出して風景を撮影しようとすると、ちょっと困ったことになる。スタンドに取り付けてレンズを下に向ける使い方では、シャッター・ボタンも巻き上げレバーも右手で操作出来るのだが、これを手に持って上から覗き込む使い方では、ふたつとも左手側に来るからである。なぜExaktaがこれに対応しなかったのかは謎である。


 おそらく普及型としては35mm一眼レフの最初はこのExaktaで1936年、実はその前年の1935年に旧ソ連でСпормという35mm一眼レフが開発されているが、普及には至らなかった。その2年後の1938年に東ドイツでPraktiflexが発売され、Bolsey、Alpa、Duflexはあるけれども、主なものとしてはContax Sが1949年に発売されて、35mm一眼レフ黎明期の役者は出そろった。その後各社改良を重ね、1952年にPraktica FXと、上位機種であるPraktina FXが発売される。Praktiflex FXは前者のアメリカ向け輸出モデルであり同一のカメラである。当時Leicaは未だバルナック型のIIIfの時代で、大勢としてはレンジ・ファインダー式のカメラが主流であったが、ExaktaはVarex Vに、ContaxはD型に進化しており、同年に日本では、国産初の一眼レフであるアサヒフレックスが発売されている。

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 さてPraktiflex FX、これは上から覗き込んで写真を撮るカメラである。この姿勢で撮影することをウェスト・レベルという。携帯時はスクリーンは折畳フードに覆われているが、背面のボタンを押すと、ワンタッチでフードが組み上がる。撮影者は、ミラーによってはね上げられた画像を、カメラの背後からスクリーンの裏側を覗いている格好になるので、天地は正像だが左右は逆像になる。スクリーンはコンデンサー・レンズのついたすりガラスで、少しディストーションがあるが快適にピント合わせが出来る。背面側のフードにはレンズが格納されていて、小さなレバーで引き上げることが出来る。このような緻密な工作が、持っていて楽しいカメラである。シャッター・ボタンは前面にあって、水平に押し込む。使い慣れると、あうんの呼吸でピント合わせが出来、カメラを目の前に構え (アイ・レベル) ないので、場の空気を壊しにくい。また、目線が低くなることから、少し日常の印象とは異なる作品が出来ることが多い。


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 前面フードを写真のようにはね上げ、背面フードのレンズでこれを支えると素通しのフレームが組み上がる。もちろんフレーミングやピント合わせは出来ないが、左右逆像の動きに悪酔い中に撮影を迫られたときなどに良い。これをスポーツ・ファインダーという。しかしアイ・レベルでこのシャッター・ボタンは使いにくい。


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 フィルムを入れる。カメラを構えた状態で左側面に↑のついたスライド・ボタンがあって、これを上げると裏ぶたが右へ開く・・・と見せかけて実は外れてしまう。


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 フィルム装填は巻き上げスプールの切り込みにフィルムの先端を入れる。市販されているフィルムの先端の幅に合っているが、スリットは軸を貫通していないので、確実にフィルムをくわえ込んだかどうかを確認する必要がある。


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 フィルム送り側は、バネになった押さえ金具があって、フィルム給送は安定している。


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 シャッター・スピードの設定は、ダイヤルの外輪をつまみ上げて、希望する数字のところへ落とす。内輪の矢印を基部の黒い矢印に合わせてあるときは高速側で、1/25・1/50・1/100・1/200・1/500秒、赤い矢印に合わせてあるときは低速側で、B・1/2・1/5・1/10秒である。フィルムの巻き戻しは、シャッター・ダイヤル手前の小さなバーを押し込んで、フィルム送り側のノブを右に回して巻き戻す。巻き戻している間中、バーを押し込んでいなければならないが、フィルム先端が巻き上げスプールを外れる感触が指先に伝わるので、先端をパトローネから出した状態で止めることも出来る。まあ自家現像する人は希少なので、こんな話してもわからんよね。


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posted by jakiswede at 23:45| Comment(0) | もちものじまん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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