2014年02月07日

20140203 Pentacon F

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Pentacon F Nr.263391 (84600?) + C.Z.Jena Nr.63847, 1:2 F=58mm


 1949年に東ドイツZeiss Icon社 (当時) で発売されたContax Sは、普及機としては世界最初のペンタプリズム付の一眼レフである。実はその前年にハンガリーでDuflexというペンタプリズム付の一眼レフカメラが出ており、厳密にはそちらの方が先なのだが、殆ど流通しなかった。それまでの一眼レフは、Practica FXやExakta Varexのように、レンズから入った光をミラーで直角に曲げて、それをカメラ背面から観察するウェスト・レベル・ファインダーのカメラだった。これは天地は正像になるが左右が逆像になり、これを解消するために光路にプリズムを置いて、アイ・レベルでの天地左右正像すなわち見たままの画像を観察出来るようにしたものである。逆にいえば、それまで出来なかったということである。このPentacon Fは、Contax Sが2度目の改良を受けて生まれたContax Fというモデルの西側への輸出仕様であり、両者は全く同じものである。私はこのカメラの形をこよなく愛する。なぜなら、ペンタプリズム付の一眼レフのあるべき姿が、最初にして究極的に実現されているからである。無駄のない美しさ、手に持ったときの繊細さ、重々しい質感ともに、私はこのカメラをこよなく愛する。


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 Contax Sは三脚穴の中にフラッシュのシンクロ接点があったが、これを汎用ケーブルの使えるものに変更して巻き戻しノブの脇に移設したのがContax D、それまで手動絞りのレンズを標準装備としていたものを、プリセット絞りのものを付けて発売したものがContax Fとされている。


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 好き嫌いの別れるところだが、このカメラの特徴のひとつに、シャッター・ダイヤルの使いにくさがある。カメラ背面に見えるスライダーを右にずらせば、上部の花形に見える窓の右端に黒い矢印が出、左にずらせば左端に赤い矢印が出る。前者が高速側、後者が定速側で、窓の中の円板にそれぞれ黒字で・50・100・200・500・1000、赤字でB・1・2・5・10・20と表記がある。手前のダイヤルは傘型になっていて、それを押し付けて回すと、窓の中の円板が回ってスピードを選ぶ。高速側の黒い数字は黒い矢印を出してその矢印に、低速側の赤い数字は赤い矢印を出してその矢印に合わせるのである。シャッター・ボタンは前面に斜めに位置されていて、押し込むと「ジャッ」という音がする。この音を嫌う人が多い。


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 巻き上げ側のフタには、「Germany USSR Occupied」のスタンプが押してあり、東側から西側への輸出商品であったことが伺い知れる。カメラのPentaconという名称も、本来Contaxで良いはずなのだが、同じ会社でありながら西側に再建されたZeiss Icon社との間で商標権争いが起きて、やむなく変更されたものである。ペンタ・プリズム前面にはZeiss Icon社の象徴であるErnemann工場の塔がデザインされている。Pentaconではその基部にZeiss Iconのイニシャル「Z.I.」が掘り込まれていたが、Fにはない。ちなみに付いているレンズも、本来ならば、堂々と「Carl Zeiss Jena, Biotar  1:2 F=58mm T」と表記すべきところ、上のような略式のものになり、レンズ名の表示もなくコーティング表示も変えられた。しかしレンズは、立派なBiotarである。


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 このカメラは、右から左に開く。裏ぶたは左でヒンジで止められている。


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 巻き上げスプールは着脱式なので欠損しているものが多い。幸いにして私のものは、「Contax」と表記のあるものが無傷で付属していた。


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 フィルム装填は、このスプールにフィルム先端を挿入してからセットするのが良い。レンジ・ファインダー式の「Contax」や、その後の「Contax RTS」が順巻きなのに対して、これは一般的な逆巻きである。


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 巻き戻し側は、このように裏ぶたがフィルムを固定する仕掛けになっている。フィルムは、気持ち下から入れる。


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 一連のContax S系の一眼レフは、中古市場では不動品が多い。その最も大きな原因は、ミラー・セットにひもが使われていて、その切れたものが多いためである。私の個体はジャンク扱いで安く売られていたものだが、店頭で動作が確認出来たことと、レンズの状態が良かったので購入することにした。もっとも、これとていつ切れるかわからないので、頻繁に持ち出すカメラではなく、まとって気取るカメラではある。安かったのは、Contax表記でないこと、レンズも略式表記であるからだという。日本人の純正崇拝のおかげで、私は安く買い物が出来ました。


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 ファインダーの見え方はこんな感じである。当時のカメラの中でも暗い方だと思う。しかしピントの山が実に掴みやすく、プリントしたときのイメージと繋がりやすい。私はこの見え方が正しいと思う。その後のカメラのファインダーは、ピントのズレの検出に神経質になり過ぎて、ファインダー画像のイメージと、実際に写真として仕上がったイメージのズレが大きい気がする。芸術はその瞬間にどうするかが問われる。ピントなど少々ずれてても良い、それより写したいものがきちんとイメージ出来てるかの方が大切だ。そういう意味で、私は仕掛けの多いファインダーよりも、暗くても良いからマットなすりガラスのファインダーが良いと思う。

posted by jakiswede at 02:18| Comment(0) | もちものじまん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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