Izukaitz: Otsoa Dantzan (LP, Xoxoa, 1980/ Guerssen, Guess017, re-issued in 2003/ CD, Lost Vinyl, L.V.-14, re-isued in 1994)
Ingurutxu | |
Katu Beltza. Txalopin Txalo | |
Ni Hiltzen Naizanean | |
Karrakan Trakatan | |
Prakamanen Itsasoan | |
Ilhun-Nabarrez | |
Ariniketan Arin | |
Hilbehera |
先のMalicorneと同じ興味をもって漂っているうちに見つけた作品である。スペインのバスク地方を本拠とする、トラッド〜フォーク的な演奏が持ち味のグループ。アルバムとしては、グループ名をタイトルにした「Izukaitz: Izukaitz (LP, Xoxoa, X-11.103, 1978/ Guerssen, Guess006, re-issued in 2002/ CD, Lost Vinyl, L.V.-15, re-isued in 1995)」と、この「Otsoa Dantzan」の2作が知られており、いずれもLPとCDで復刻されている。バスク地方は、スペインとフランスの北大西洋ビスケー湾に面した国境付近に、両国にまたがって存在する。独自の文化と言語を持ち、しばしば民族独立を掲げた政治運動が伝えられるが、Izukaitzの音楽は、それをまったく連想させないほど牧歌的で素朴で穏やかである。表記も歌もバスク語と一部スペイン語なので、ほとんど歌の意味は解らない。また、フラメンコの要素はまったく感じられない。むしろ南フランスやイタリアのトラッド・フォークの感触に近く、1970年代のプログレッシヴ・ロックらしい感覚で音の実験が試みられているが、宇宙的をイメージしたものではない。バスクの伝統楽器も使われているようで、トラッドや古楽に基礎を置きながらも現代的な自由なアレンジで自分たちの演奏をしたという感じ。
1作目「Izukaitz: Izukaitz」は、自分たちのレパートリーをさくっと録音したという感じで、音質は今でいう「宅録」に近い。しかし1978年の事であるから、よほどの資金援助と設備がなければメジャーに肩を並べるほどの音質は望めなかったはず。様々な困難を乗り越えて作品を作り終えた痕跡が残る。演奏はシンプルで、上のような限界があったことを許せるならば、内容は非常に良い。作り込まれていない分、初々しさ、意気込み、爽やかさが身近に感じられる。心が自然に笑顔になる、ヨーロッパのトラッド音楽特有の、臭い、光、幸福感を持った良い作品といえる。この1作目については、こちらに詳しく紹介されているのでご参照下さい。
http://cottonwoodhill.web.fc2.com/music/1970/Izukaitz.html
このたび手に入れたのは彼等の2作目である。前作より演奏表現の幅が大きく広がっていて、録音もミックスも細かいところまで作り込まれていて、充分な聞き応えがあるので、こちらを掲載することにした。音世界は、トラッドを基本としながらも、より古楽への傾倒が感じられる。フォーク色は薄まって、多彩な楽器による重層的な演奏に、より力が注ぎ込まれたようである。かといって重過ぎることはない。独特の明るさ、軽さがあって、南ヨーロッパの土の香りがする。彼等の演奏は、聴いていて心が安まる。体がほぐれてくる。音楽の力は計り知れない。
音を残してくれただけでも有難いのだが、こういう音楽は、是非、ライブでありながらもそれぞれの音が奇麗に分離して録音されたものを聴いてみたい。全員せーので一発録りをして、ファースト・テイクでOKになることが理想。しかし現実は厳しい。録音とは、常に、忍耐と技術と経済状況の妥協の産物で、このような電気電子楽器とアコースティック楽器の混成録音ほど難しい。1970年当時を想像してみると修羅場であったことが想像される。一度に録音出来るトラック数に限界があって、メロディや歌を仮録しながらベーシック・トラックを入れ、それをとり合えずミックスしておいて、聴きながら他の楽器を重ねていくという作業になったであろう。ライブなどで聴くと違和感ない場合が多いが、いざ録音となると、楽器の音量の違いがただならぬ障碍になる。音の分離を良くしようとして音源を隔離したり、電気を使う楽器をライン録りしたりすると、それらの音のバランスが狂ったり聞こえ難かったりして、合奏そのものの出来に影響する。リテイクが繰り替えされると、技術的な諸問題もさることながら、演奏者のモチュベーションが低下する。戸惑いを乗り越え、経験を積んでいくしかない。恥ずかしい思いを耐え忍び、仕上がりに満足行かなくても妥協しなければならない。そしてなにより、駄作が世に出て独り歩きしていくことを思うと気が狂いそうになる。オーバー・ダビングなんてさせられた日にゃ悪夢ですからね。最も厳しかった経験は、出来上がったトラックにドラムを入れろという要請だったことを思い出す。あのね、それってドレス・アップの完成した人形に、手を触れずに骨格を入れろと言うてるようなもんですよ、やりましたけど・・・そんな修羅場の傷跡もそのままに、スタジオの外を走る車の音も入ってるのはご愛嬌、多彩で生き生きした音を聞いて涙が出る・・・ほとんど個人的な思い入れだが、でもこれ、良い作品です。
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