2015年02月05日

20150113 Sting: If on a Winter...

KIF_3855.JPG

Sting: If on a Winter's Night (CD/DVD Deluxe Edition, Deutsche Grammophon, DG7582/ B0013330-00 GH, 2009)

CD:  If on a Winter's Night
Gabriel's Message
Soul Cake
There Is No Rose of Such Virtue
The Snow It Melts the Soonest
Christmas at Sea
Lo, How a Rose E'er Blooming
Cold Song
The Burning Babe
Now Winter Comes Slowly
The Hounds of Winter
Balulalow
Cherry Tree Carol
Lullaby for an Anxious Child
The Hurdy-Gurdy Man
You Only Cross My Mind in Winter
Bethlehem Down [Bonus track available on limited/deluxe editions, & iTunes]
Blake's Cradle Song [Bonus track available on limited/deluxe editions]
The Coventry Carol [Bonus track available on Japanese release]
   
DVD: The Genesis of "If on a Winter's Night" in 6 chapters
Mystery and Storytelling
A Primal Memory
Shaping the Repertoire
Inviting Chaos
Outside their Comfort Zone
Slowly Coalescing

 説明の必要のないStingの、2009年の作品である。彼は2006年に「Songs from the Labyrinth (CD, Deutsche Grammophon, 0007220-02, 2006) 」というJohn Dowland (1563-1626) の曲集を発表しているが、その次の作品となる。私の場合、中学生の頃に芽生えた英欧のクラシック音楽への興味のきっかけとなった作曲家がJohn Dowlandの名曲「Lachrimae」、日本での通称「涙のパヴァーヌ」であった。これを初めて聴いた時、生きることが精神的に困難だったあの頃の硬い心が、すーーっと溶けていくのを感じたものだ。心ばかりか体からも力が抜けて、脱力状態に導かれたことを覚えている。FM放送をテープに録音したもので、作曲者も曲名も演奏者も書き止めていなかった。そのテープは繰り返しその部分だけが再生されたために、ワカメのように伸び切ってしまい、その後、曲名を探り当てて、様々な演奏家の録音を手に入れたが、今となっては、そのとき聴いたものが、果たして誰の演奏だったのかは見当もつかない。なぜあのような深い憂いに満ちた静かで穏やかな音楽が、イングランドに現れたのか、その伝統を今に引き継ぐ様々な演奏家たちも、恐らくその謎を溶こうとして、ひたすら音を掘り下げているに違いない。
 「Lachrimae」はインストゥルメンタルとしても声楽曲としても演奏されているが、クラシックの声楽家の声が基本的に好きではないので、ロック・ミュージシャンのStingの歌を聴いてみたいと思ったのがきっかけだった。それは大いに当たり、そのアルバムは愛聴盤となった。この作品「If on a Winter's Night」は、その延長上にあるといえるだろう。しかし、ギターとリュートだけを伴奏にした前作と異なり、今回は7人のミュージシャンをコア・メンバーに、多くのミュージシャンが参加している。前作から引き続き、Edin Karamazovや、驚くなかれジャズの名ドラマーJack DeJohnetteも参加している。
 演奏内容は、編成の多様さとも相まって、非常にバラエティに富んでいる。ほとんどの曲は、作曲者不肖の古楽やトラッド・Michael Praetrius・Henry Purcell・Franz Schubert・J.S.Bachなどの曲を、知らなければ全くそれと気付かないほど異なるアレンジで奏でられている。比較的原曲のイメージに忠実に演奏されているものもあれば、どこからどう聴いてもロックとしか言いようのないものもある。しかしそれらがアルバムの中に並んで全く違和感がないところが流石Sting。その姿勢は、前作「Songs from the Labyrinth」がクラシック音楽の臭いから大きく解き放たれた作品であったのと全く同様に、目指すところはクラシックもロックもトラッドもワールドミュージックも越えたところにある自由奔放な音楽といえ。
 ジャケットがブックレットになっており、多くの写真とともに、このアルバムの着想を得た経緯や、ミュージシャンとの出会いが綴られている。録音は、イタリアのタスカニーにある彼の広大な別荘で、冬のある日、暖炉を囲んで談笑するミュージシャンたち、録音前のリハーサルの様子、熟練したミュージシャンたちが、和やかな空気の中で互いの奏でる音を聞きながら自分の音を重ねていく、眼で合図を送り、身振りで展開を伝え、互いにうなずき合い、他の人に渡す・・・そうして練り上げられていく様子を垣間見ることが出来る。ミュージシャンであれば誰もが憧れて止まない理想的な世界が映し出されている。DVD付のバージョンではその様子を高画質で見ることが出来るが、YouTubeでも一部抄録が公開されている。そのスタジオはその頃まで彼が自宅として使っていたが、現在イタリアのワイン・メーカーであるChiantiが経営するホテルになっているようだ。

 https://www.youtube.com/watch?v=4oBBYl0m0uc
 http://www.tuscandream.com/chianti/sting-villa-in-tuscany-il-palagio/

 さてこのアルバムには、いくつかのバージョンがあって、それぞれ収録曲が異なる。CDのみの現地盤は上記リストのうち下3曲が収録されておらず、日本版は下3曲のうち上2曲が収録されていない。DVD付のもののうち「limited/deluxe editions」には最後の曲が収録されておらず、Amazonの「Limited Edition」には下3曲のうち1曲目と3曲目が収録されていない。「iTunes」では全曲配信されている。また、このアルバムのライブも実に良く出来ている。

 https://www.youtube.com/watch?v=HTQgKBPQkf0

 冬のある日、暖炉を囲んでじっくりと心落ち着けて聴きたいアルバムである。




posted by jakiswede at 21:13| Comment(0) | 変態的音楽遍歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: