2015年02月05日

20150115 Aswad: Hullet

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Aswad: Hulet (LP, Island, ILPS-9611, 1979)

Behold
Sons Of Criminals
Judgement Day
Not Guilty

Can't Walk The Streets
Corruption
Playing Games
Hulet

 Aswadのアルバム2作目、私は個人的には、この作品が彼等の最高傑作だと思っている。それは、前作よりもぐっと演奏表現の幅、とくにドラムとベース・ラインの安定と深みが増し、アレンジの細やかさと歌唱力が断然良くなってきたからだ。しかも前作同様、曲のコンセプトは非常にメッセージ色が強く、ブリティッシュ・ジャマイカンの置かれた状況をストレートに歌う芯の強さがあって、それらが両立しているからだ。特にドラムは4拍子の全てにキックが入る「steppers」というリズム・パターンが基本となり、「one drop」とは根本的にフレージングが変わった。以後これがDrummie Zebの、ひいてはAswadのサウンドの基本になる。曲調は、太いベース・ラインの反復と安定したドラム・フレーズが醸し出す透徹したリズムの流れが基本となって、非常に醒めた目で自分たちの境遇を歌い込んでいるように聞こえる。全体の印象が冷徹でありながら、アレンジの作り込まれたリード楽器の演奏が華やかに冴えて、のちの彼等のポップ・グループとしての本領が、既に芽生えているようだ。いずれにせよ、未だポップスにはなり切っていない、コミュニティの仲間内バンドの臭いがプンプンしていて、内側から迸る様々な音楽的方向性を内包しつつ、それが大きく開花しようとする躍動感が秘められた作品、そのミス・マッチともいえる混沌が魅力的なので、私はこのアルバムが一番好きなのである。A-1曲目の「Behold」にその姿が凝縮されている。Aswadはアルバムに収録された曲のDub Versionをシングルとしてリリースしているが、この1曲目ではフレージングとしてDub化されることを想定したアレンジを随所に施している。そしてなによりこのアルバムを他のものと大きく隔てているのは、B面最後の2曲である。「Playing Games」は、従前の彼等の演奏を踏襲しつつも、甘いというか、幻想的なメロディとコード展開をもつ曲、ほとんど間髪入れずに始まるラスト曲のタイトル・チューン「Hulet」に至っては、なんとインストゥルメンタルで、しかもレゲエのギター・カッティングやドラム・アンド・ベース・ラインを持ってはいるものの、音は既にレゲエではなく、完全にフュージョンである。レゲエのエッセンスを骨の髄まで貫きつつ、ここまでジャズ的に洗練された演奏は聴いたことがない。作曲者はベースのGeorge Oban、浮いているといえば浮いている。しかしメンバーそれぞれの多様性が内包され、爆発する寸前の波乱含みの音こそ、生きた音楽だと思うのだが、やはり別れ行く運命、彼はこれを最後にグループを去り、1981年に「Motion」を発表する。その音世界は、「Hulet」を更に推し進めたものとなり、レゲエ史上全く異色の傑作となった。
posted by jakiswede at 21:18| Comment(0) | 変態的音楽遍歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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