Aswad: It's not our wish (that we should fight)/ Stranger (12' single, Grove Music, GMDM9, 1978)
https://www.youtube.com/watch?v=5a9XAVFUs1E
AswadのLP1作目と2作目の間に発売されたシングルである。これ以前に彼等は2枚のシングル「Aswad: Back to Africa/ Africa, 12' single, Island, WIP6312, 1976」と「Aswad: Three Babylon/ Ire Woman, 12' single, Island, WIP6338, 1976」を発表しており、この時点で"Three Babylon" は未発表、他は1作目の収録曲と、そのダブ・バージョンである。シングル3作目のこの作品は、Grove Musicのジャケット色と同じ緑の半透明盤で、2曲ともこの時点では未発表、のちに"It's not our wish (that we should fight)" は、前作"Three Babylon" とともに「Aswad: Showcase, LP, Island, ASWAD1, 1981」に収録される。ただしMixと尺は異なる。一方、B面の"Stranger"の方は2014年現在復刻されておらず、幻の名盤である。さて特筆したいのは、B面の"Stranger"という曲。私は、彼等のアルバムとしては「Hulet」が最も好きであるが、1曲選ぶとなると、迷わずこれを選ぶ。いや、全レゲエの曲のなかで最も好きだと言い切る。人生を左右したかと問われればちょっと躊躇するが、間違いなく私のドラミングに多大な影響を与えた。いまでもレゲエを叩けと言われれば、必ずこうなる。曲はドラムから始まる。その入り方は恐らく今まで聴いたどんなドラム・イントロよりもシンプルで力強く、ぞくぞくさせられる・・・(もののうちのひとつだ) 。曲調は、まさにブリティッシュ・レゲエの冷徹な乗りの真骨頂で、鉄の鎖を引きずり回すようなドラム・アンド・ベースラインの上に通奏されるシンプルなギター・カッティング、作曲者Donald Griffithsのブルージーで華麗なギター・フレーズとヴォーカル (たぶん) 、そしてあまりにも救いようのない歌詞・・・それが歌い切られないうちにダブのなかに解体されて散らばっていく・・・この頃のレゲエの曲は、アルバムで歌を出して、シングルでそのダブ・バージョンを出したり、リミックス・バージョンで歌の後半をダブにすることが流行った・・・残念ながら上のYouTube音源は途中でフェイド・アウトされているが、このダブは、さながらピカソのゲルニカを見るようである。人は時として憑かれたように人を虐げる。手足は切り落とされ、胴体も頭もばらばらにされ投げ捨てられた人が、それでも人が正気に返る時を信じて、自分にほんの少し残された最後の人間性を確かめるように、通りに散らばった自分の断片を集めて回るのだ。次作「Hulet」でも"Can't Walk The Streets"と歌うことになるDonald Griffiths独特の音世界は、George Obanのフュージョン感覚とともに、創世期Aswadの音楽性を豊かなものにしていたはずだ。しかし全く残念なことに、彼等は相前後してグループを去ることになる。今聴くと確かにこれらの音は、あまりにも過激過ぎてアルバムへの収録に漏れ、その後のAswadの、より本流のレゲエ、ポップで世界的に通用するレゲエへと発展させていく販売戦略とも相容れなかったのであろうと想像される。ここで創世期のAswadのメンバーの在籍期間について記しておこう。
Aswad:
Angus Gaye (Drummie Zeb, dr., vo.,1975-present)
Tony Robinson (Gad, b., key., v.,1976-present)
Brindslay Forde (Dan, Chaka B, v., g.,1975-1996, 2009)
George Oban (Ras Levi, b.,1975-1980)
Donald Griffiths (Dee, g., 1975-1980)
Courtney Hemmings (Khaki, key.,1975-1976)
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