Linton Kwesi Johnson: Dread Beat an'Blood (LP, Frontline, FL 1017, 1978, UK/ LP, Virgin/ Heartbat Records 01, 1981, US)
Dread Beat An' Blood
Five Nights Of Bleeding
Doun Di Road
Song Of Blood
It Dread Inna Inglan (For George Lindo)
Come Wi Goh Dung Deh
Man Free (For Darcus Howe)
All Wi Doin Is Defendin
http://www.lintonkwesijohnson.com/
1978年に発表されたLinton Kwesi Johnsonのデビュー盤「Dread Beat an'Blood」である。写真1枚目はアメリカ盤ジャケットで、オリジナル盤の表は写真2枚目の真ん中の絵で、警察署前で演説するLKJの写真は裏のこの位置に扱われていた。一緒に写っているのは、1984年の「Black Music」誌と、彼の第2作「Forces of Victory」のジャケットをあしらった1997年来日ツアーのパンフレット、そのツアー記念Tシャツである。このライブは強烈な印象を残した。ステージが始まるや、Denis Bovelが奇声とともに飛び出してベースを弾きはじめ、その音は砕けたガラスのように空中に飛び散っていく。そこへ彼のDub Bandの演奏がからみ、度肝を抜く生のダブをぶちまけてる最中に、スーツに身を包み中折れ帽を被ったLKJが、つかつかとセンター・マイクの前に現れ、いきなり、ほとんど表情を変えることなく、直立したまま淡々とDub Bandの演奏の上に詩を乗せていく。始まっては終り、始まっては終り、ほとんど息もつかぬほど矢継ぎ早に詩を謳い、全てが終ると、右手を軽く挙げて聴衆に会釈し、つかつかと去っていったのである。それを見送るように再びDub Bandがあとを盛り上げ、アンコールの渦も彼等がそれを引き取った。感動した。ライブというものはこうあるべきだと思った。
LKJはあまりにも有名なブリティッシュ・レゲエのダブ・ポエットであるので、プロフィールその他は情報が豊富にある。現在も活動中で、彼の全てのアルバムは入手可能である。シングルはわからん。彼の詩はジャマイカン・クレオールで語られているが、基本的に英語であるので聞き取りはそう難しくない。内容は、非常に過激・暴力的・闘争的・挑発的である。なぜそうなるか・・・を、ここで書きはじめると、話が詩的音楽的でなくなってしまうので、LKJに敬意を表してそれは差し控えたい。ただ、第二次世界大戦が終ったあと、敗戦国として負うべきだった義務を、西側陣営すなわちアメリカへの協力を名目にかなり帳消しにされた結果、経済発展を恣にし現在に至るまで平時が保たれている日本と、戦勝国でありながら旧植民地からの移民の流入をコントロール出来ずに国内に最も深刻な矛盾を貯め込んで、それがガス爆発をくり返す旧大英帝国とでは、国民の常識に違いがあり過ぎるとだけは言いたい。支配した側と支配された側の戦闘状態を自国に、つまり市街地に持込んでしまったがために、彼等は今でも常に戦時の感覚で生きている。どちらもそんなことは望んでいない。しかしこれが簡単に解決して平和が訪れるとは、とても信じ難いのが現実だ。解決しようと思えば、歴史を逆に遡り、こんがらがった糸目を、当事者の優柔不断や独断を、ひとつほぐすたびにまた世界中で戦争をやり直さなければならなくなるだろう。そうすれば、また別な矛盾を世界に撒き散らすだけだ。自分たちだけではどうにもならないことが、双方とも解っているから、なんとかそれを封じ込めて時をやり過ごす。しかし時にはガスが充満して爆発を起す。そのたびに、またぞろ理想論がもてはやされて麻薬の脱力に酔いしれる。歴史はそれを繰り返す・・・とまあ、簡単に言えばそういうことだと思うんだが・・・
勝手なことを書いてしまって申し訳ない。LKJの最も共感出来ることは、彼が「Jah Rastafari !! 」と叫ばなかった (たぶん) ことである。彼はレゲエのアーティストとして認識されてはいるが、ラスタファリズムとは一線を画しているように思う。第一、ドレッド・ロックのLKJて想像出来ないもんね。
https://www.youtube.com/watch?x-yt-cl=84359240&v=ZYG5J4s0D_s&x-yt-ts=1421782837
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