2015年02月23日

20150208 Africa must be

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Hugh Mundell: Africa must be free by 1983. (LP, 番号なし, Pablo Music Pro., 1978, Jamaica/ CD, Hugh Mundell/ Augustus Pablo: Africa Must Be Free By 1983/ Africa Dub, Greensleeves Records ,GRELCD 504, 1990, UK)

Let's All Unite
My Mind
Africa Must Be Free By 1983
Why Do Black Man Fuss And Fight

Book Of Life
Run Revolution A Come
Day Of Judgement
Jah Will Provide
Ital Slip

https://www.youtube.com/watch?v=xWNcnqFCf90

 ジャマイカに戻る。1970年代のジャマイカは、ほぼ内戦に近い不安定な状況だった。政治は事実上の二大政党制だったが、政策路線としてはともに中道左派であり、両者の闘争の原因は、要するに勢力争いとしか考えられない。カリブ海を舞台にした覇権争いにからむ米国との関係、その力を取り付けようとする地元勢力同士の抗争、主な外貨獲得資源である鉱物ボーキサイトの利権、それに伴うギャングの暗躍、麻薬密売ルートの確保などである。ともかく、植民地支配から独立を果たした多くの国々が辿る悲惨な運命をジャマイカも辿った。住民はそのほとんどが、スペインの植民地支配の初期に過酷な労働で死に絶えたインディヘナの人たちの代わりに、アフリカから連れてこられた黒人奴隷たちの子孫であるが、もともとジャマイカはそんなに大きな島ではなく地形も複雑なため、生産可能な国土に比べて人口が多い。従って、ご多分に漏れず地方から都市部への人口の流入が続き、首都キングストンには多くの貧民街が産まれた。そのひとつとして名前の知られるトレンチ・タウンは、文字通り下水の排水溝を埋め立てて作られた場所であった。
 さて、ジャマイカのレゲエには、ブリティッシュ・レゲエと違って、この国内の不毛な権力闘争を批判する内容の歌が多い。そこを出発点に、ゴミダメのような土地を捨てて約束の土地へ、世界の黒人は連帯して移住しようという思想、すなわちラスタファリズムを歌うことで、黒人の解放、貧困の解消、差別の撤廃というテーマについて言及していく。「Africa must be free by 1983」・・・Aswadも同年に発売されたシングル「It's not our wish…」のなかで「Africa must be free by the year 1983」と謳っているが、1983年のアフリカに何があった、あるいはあるだろうとしていたのだろうか。Hugh Mundellは1978年当時で16歳、録音された声は未だ声変りしていない。収録された曲は、2曲を除いて彼自身のもの。プロデュースとキーボードはAugustus Pablo (原盤表記はAgustus Pablo) で、当時のジャマイカ随一のスタジオChannel 1と、Lee Perry のBlack Ark Studioで制作されている。これは彼のデビュー作であって、ちょっとかすれた感じの少年のような声と、裏腹なほどはっきりしたメッセージ性がある。曲調は優しくシンプルで、初期のルーツ・ロック・レゲエの良さを充分堪能出来るが、彼の魅力はそれだけにとどまらない冷静な歌心とでもいえる、どこか醒めたような空気感である。当時のジャマイカの録音設備の状態から音質は悪いしミックスも雑、製造技術の問題から盤質も粗くジャケットもそれなりであるが、歌と演奏の良さ、それも凝らずに作った素朴さが愛すべき作品である。彼はその1983年に暗殺されるまでに5枚の作品を残しているが、いずれも繊細な声に印象的なキーボードの絡まるシンプルな曲調の曲を残している。私は個人的には、もし彼が生き存えていたら、そして環境に恵まれ、彼がそれを有効に使えるほどに強ければ、ボブ・マーリーを引き継ぐようなスーパー・スターに育っていたのではないかと思ったほどである。しかし、ジャマイカの現状はそれを許さなかった。ボブ・マーリーは、覇権争いに明け暮れる両党の党首を自分のステージに上げて握手させ、それは歴史的な和解かと思われたのだが、それも束の間の癒しにすぎなかった。再びジャマイカは混乱の歴史を辿り、多くのミュージシャンや文化人が世を去った。上のデータは、原盤LPのものである。この原盤を元にAugustus Pabloが制作したDUBとカップリングでCD化されているが、いずれも入手困難のようである。



posted by jakiswede at 14:43| Comment(0) | 変態的音楽遍歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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