Scorpio Universel: 1980 (LP, Mini Records, MRS 1103, 1980, US/ CD, P-Vine, PCD-2209, 1990, JP*)
M'Pap Crazé (Pap Cis)
1980
Peace & Love
Retounin
Pransan Ou (Carnaval 80)
Map Mande Courage (Bonus Track on CD*)
Vi'n Pran Piyay (Bonus Track on CD*)
「Scorpio」・・・1970年代に入って新しく沸き起こった「Mini Jazz」ムーヴメントの中で発生した「Les Difficiles de Petion Ville」というバンドを母体とする。そこにいたRobert Martinoを中心に「Les Gypsies de Petion Ville」が分離し、更に彼を中心にした、この「Scorpio Universel」と、「D.P. Express」が成立する。いずれも音楽的な感触が僅かずつ異なっていて、少しずつ新しい感覚になる。「Scorpio Universel」と「D.P. Express」の違いは、前者が構成美をより重視したホーン・アンサンブルに重きを置いていたのに対して、後者はギター主導のストレートなニュアンスを重要視した。しかしわれわれ聞く側にとっては、いろんな味わいがあってそれぞれに楽しめるのである。このアルバムは「Scorpio」としては4作目にあたり、まったく気迫充分、技術も体力も絶好調の時期である。しかもP-Vineの日本盤CDには、1979年に出された12'シングル (EP, Mini Records, MRS-S111, 1979, US) の2曲が収録されている。圧巻は2曲目アルバム・タイトルともなった "1980" で、アップテンポのイントロに始まり、途中でAORの名曲Bobby Caldwellの"What you won't do for love" が挿入されるなど、その奇想天外さ無節操さは、狂おしいまでのアメリカへの憧れを体現して止むところなく、続くcadenceでも畳みかけてくるストップとキメ、リズムの絶妙な崩しと散らし、さらにエンディングでその全てをひっくり返してしまうような完璧な遊び心を発揮してくれたりする。言葉は悪いがハイチは世界最貧国のひとつ、海を隔てて間近なフロリダは世界最強国アメリカである。Compasの醍醐味のひとつは、このように、全く意外な曲の断片やフレーズ、或いは音色が突然挿入されることにより、曲の進行の中で夢と現実の間を彷徨う不思議な感覚を味わわせてくれること、しかも、それがとってつけたようでもあるが、実に見事にアレンジされていて、念入りなアンサンブルの中で見事に消化されているところである。このようなことは、伝統を守っているだけでも、勢いだけでも、訓練だけでも、あれだけでもこれだけでもできることではない。これこそまさに、アメリカにも中米にも南米にも近いカリブの国、しかも旧フランス領というハイチ独特の立ち位置がもたらした賜物ではなかろうか、ホレこんで飽くことがない音楽である。
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