2015年04月03日

20150303 R.Guillaume

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Raoul Guillaume et son Groupe: Gerbe De Chansons Haïtiennes (LP, IBO Records, ILP-133, 1967, Haïti)

En quatrième vitesse
Qui gen'ou rélé
La vie musicien
L'orphelin
Chi li ling
Interdit aux moins de 16 ans

Voyage sur la lune
Côté ou rété
Baiser pour Haïti
Mesdames ci-là
To to to to to
Ti Marie

 ハイチの1960年代、Troubadour 、Méringue、CadenceからCompas成立前夜の頃の音源を求めるには、IBOというレーベルがほぼ一手にリリースしているので探索しやすい。私が集めたものは全て再発モノであるが、盤質や録音状態も良く、リストもきちんと管理されており、Mini RecordsなどによりCD化も進められている。彼等の音楽に対する姿勢を窺い知ることが出来る。さて、このアルバムは、Raoul Guillaumeという歌手の、SP盤時代から数えて、たぶん11作目のLPであり、ハイチの歌謡を集めたIBOのシリーズ3作目にあたる。ポップスとしてのワールド・ミュージックの歴史的音源というものは、往々にして単調で変化がなく、余程その世界のマニアでないと違いが解らない退屈なものになりがちなのだが、このアルバムは、当時ハイチで流行していたと思われる、いろいろな形式の楽曲を、聴きやすいショウケースのように集めてあるのでお奨めしたい。なかでも1曲目は、Compas DirectからMini Jazzへ移ろうとする前のリズムの変化・・・充分マニアックか・・・特にドラム奏法の変化が録音されている。つまり、全てのアフリカやラテン音楽に共通する、伝わった当初のキューバ音楽の編成から、アメリカのジャズが流入してモダン楽器へ移行する時期、たとえばリズム・セクションの基本は、ギロ・マラカス・タムタムまたはコンガ、あるいはボンゴなど複数の奏者による分業されたリズムの複合体であったものが、一人のドラマーによってプレイされるようになる過渡期の演奏が聞ける。Compasに於ては、恐らくドラム・セットの導入とほぼ同時に、あのミュート・シンバルによるリズム・キープが始まったと思われるが、この曲では、ハイハットを通常の奏法で演奏し、アクセントの位置で僅かに開いたりクラッシュ・シンバルでキメを入れたりしている。おそらくそのたたきわけが煩雑になるので、クラッシュ・シンバルに一本化してミュートする奏法が産まれたのではないかと想像できる。ま、そんなマニアックなことを度外視しても、1967年ともなるとハイチのポピュラー音楽も成熟と分化へと向かいつつあり、様々な他の音楽の影響が聞かれるのである。それ以前はというと、伝わってきたキューバ音楽やジャズを、恐らく楽譜の通りに模倣することが基本で、そこに労力のかなりが費やされていたであろうので、どんなグループのどんな曲を聴いても、よそ者には同じ曲に聞こえてしまう。そういう意味で、このアルバムは当時ものとしては珍しく、変化と現代性に富んだものになっている。以上で私の持っているハイチの音楽の紹介を終る。もちろんハイチにはCompas以外の音楽も行われている。Twoubadou (Troubadour) は、キューバに出稼ぎに行った農民たちが戻ってきて伝えた素朴な歌謡であるが、私の持っている音源は打ち込みを基本とした実に平板なものなので、ここでは紹介しなかった。また、MéringueやCadenceも、更に発展した形式に細分化されて行われているが、1980年代後半からは他事に忙しくてこれを追っていない。さらにハイチのVoodooから産まれた宗教音楽であるRaraから、現代に派生したMizik Rasin (Musique Racine = Roots Music) の有名なグループであるBoukman Experyansは、確かに一聴に値する。では更に東へ泳いで、フレンチ・カリビアンの島国を巡って参りませうね。

posted by jakiswede at 00:55| Comment(0) | 変態的音楽遍歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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