Ornette Coleman 氏が亡くなった。Jazzについて書く時はまずはこのアルバムから書き始めようと思っていた。Jazzという複雑怪奇で広大な底なし沼を、もちろん私は溺れ尽くしたわけではないけれども、JazzといえばOrnette Coleman・Albert Ayler・Sun Ra・Art Ensamble of Chicago・Abduller Ibrahim・Billy Harper・・・まあ、かなり変わった好みであることは、うすうす空気を読んで感じられる。人の評価は気にしない。好きなものは好きというだけのこと。そのなかでもOrnette Colemanは最高、Ornette Colemanといえば、なにをおいてもこのアルバム、いや「Lonely Woman」の1曲に尽きる。もがき苦しみつつも正常であり続けよう前を向こう上を向こう進もう、とする強靭な意思の叫び声。アルバム・タイトルもそのとおり、まさに「ジャズの来たるべき姿」・・・彼は「ジャズを変えた」と言われるが、私にはむしろ、ジャズを当時のジャズのようになる前の姿に戻したように思われる。すなわち彼の演奏は、ジャズという、複雑怪奇で屈折しまくり、魑魅魍魎ばかりか阿諛追従の輩どもまでが紛れ込んで粉飾されてしまった音楽の、表皮から薄皮までを剥ぎ取って残った熱いコールタールを、さまざまなかたちで変奏していった軌跡のように感じられる。それをどう感じるかは人それぞれだけれども、極めて正統的な音の正直過ぎる展開が、屈折しきったジャズの諸形式の中に、さまざまにちりばめられていったことは事実であろう。彼はこのアルバムで、ひとつの究極的な答えを出してしまった。その後の演奏は、それを変容したり再確認したり、という作業の連続であったのだが、もちろん彼にとってもエッセンスは掴み得たものの、実際に起り得る音楽的諸場面の全ての地獄を溺れきるには、その長寿も短過ぎたか、あるいはそのようなことなどおよそ不可能なのかも知れぬ。私の感性と響きあうアルバムは多くない。このアルバムと、以前紹介したことのある「Crisis」それに「Love Call」くらいか・・・ともかく、最後の来日ステージを観られて本当に良かった。いらんやつがうろちょろしとったけど・・・
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