Grupo Folklorico y Experimental Nuevayorquino: Concepts in Unity (CD, Sony Discos/ Salsoul Records, BMK-83904, 2000, USA/ 2xLP, Salsoul Records, SAL 2-400, 1976, USA)
Cuba Linda
Choco's Guajira
Anabacoa
Adelaida
Luz Delia
Carmen La Ronca
Canto Asoyin
Canto Ebioso
A Papa Y Mama
Iya Modupue
https://www.youtube.com/watch?v=t9ChBWySI0c
1976年に発売されたGrupo Folklorico y Experimental Nuevayorquinoの1st.アルバムである。これをキューバ音楽のくくりで紹介して良いかどうか微妙なところだが、キューバもプエルト・リコモ同じ湾の中にあるのだしまあいいでしょ。発売当初は2枚組LPであったがCD化された際に若干曲順が入れ替わっている。翌年に2nd.アルバム"Lo Dice Todo"が出ているが、両方ともお奨めする。この作品に初めて出会ったのは、まだバンド活動をはじめて間もない頃、たぶん大学生の頃に、それから永いつき合いとなるベーシストの家で聴かせてもらったときである。何も言うまい。上のリンクをクリックして音を聴かれよ。3対のコンガの合奏が終って厳かに刻まれるルンバ・クラーベと、それに追ってかぶさってくるベースとトランペットの深い響き・・・打ちのめされた。この時期、沢山の種類の膨大なレコードを彼の家で聴かせてもらったので、ひとつひとつ記録していなかったのだが、上のジャケット写真は覚えていて、近年になってから、何かの拍子で見つけて購入したものである。
Cuba Lindaという、このユニークで印象的で美しい曲 (曲名も「美しいキューバ」という意味) は、Virgiolio Marti (1919-1995) の作である。彼はそんなに多くの作品を残していないが、1985年に封切りされた"Crossover Dreams"という映画のサウンド・トラックに "Todos Vuelven" という、これまた実に個性的で感性のふっ飛ぶ名曲が残されていて、この2曲で彼の才能は十二分に発揮されたといって良い。より一層の感動を求めてSaldando a Los Rumberosなどを漁りに行ったりもしたが、意外にフツーの曲しか演ってなくてがっかりしたものだった。むしろ彼ないしその周辺の音空間をより一層色濃く表しているのは、Patato y Toticoなどのキューバのストリート系の1960年代のルンバの録音にある。
「ルンバ」(Rumba, Rhumba) は、今ではラテン音楽のスタイルの名前と認識されているが、元来はキューバのサンテリアや祝祭の場などにおいて、歌と太鼓と踊りで構成された音楽の演奏のされ方や楽しみ方の事を指す。そのルーツはナイジェリアのヨルバ系の祝祭儀礼音楽「カンドンブレ」に発し、オリーシャの神々を祭るところはブラジル北東部に伝わる同様の音楽と共通する。キューバでは、その音楽のリズム感やうねりが、アフリカの6/8拍子のフィーリングから16ビートに変形していくにあたり、3拍子を4拍子の中に内包した独特の感覚を持つルンバ・クラーベのリズムを生みだしたので、これを「ルンバ」と呼ぶようになった。そこから派生して、アメリカでジャズ的にヒットした特定の音楽の名前や、ラテン音楽一般の軽いリズムを指して同じ用語が使われることになり、現在ではその定義は混乱している。
そんなことより私は別にキューバ音楽の専門家でも何でもないのだが、これで人生を棒に振ったほどの音楽好きであるので、数多ラテン音楽を聴いたけれども、キューバであるかプエルト・リコであるか、ソンであるかサルサであるかなんとことはどーでもよくて、とにかくこの演奏は素晴らしい。グループ名が示す通り、これはニューヨーク在住のプエルト・リコ人と亡命キューバ人 (たぶん) の混成グループで、かなり人数は多い。演奏はルンバやソンだけでなく、ワワンコやサルサも入っているけれども、それらがこのVirgilio Martiのトップ・チューンの呪縛によって、見事なまでに統一されたイメージの中で聞こえてしまうところが実に素晴らしく、それこそタイトルの通り、Concepts in Unityなのであろう。ちなみに2nd.の1曲目はリズムの骨格が打ち込みであって1977年当時としては斬新な試みであったのかも知れないけれども、いまとなっては全く興を殺ぐ出来になってしまった。しかも悪いことにそのイメージが以降の曲を呪縛してしまって、アルバム全体としての印象はよろしくない。しかし1曲目だけを外して聴けば、この1st.にない様々なバリエイションが展開されていて、非常に味わい深い内容である。
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