Tito Puente: Tito's Puente in Percussion with Mongo Santamaria, Willie Bobo & Patato (LP, Tico Records/ Sonodisc, JMTS-1422, 1978, FR)
Four Beat Mambo
Stick On Bongo
Congo Beat
Timbales Solo
Tito On Timbales
The Big Four
Swinging Mambo
Tito And Mongo On Timbales
ラテン・パーカッションの大御所が一堂に会して叩きまくるアルバムである。これは一般的なリスナー向けのものというより、ラテン・パーカッションを志す人が、先ずは打楽器同士でどのようなアンサンブルが成り立っているか、それぞれの音がどのようなグルーヴを持っていて、それがどの音とどのように絡み合ってひとつのリズム・セクションをなし、それがオーケストレイションの中でどう活かされるかを研究する教則音源として実に適当な内容である。タイトルを見れば解る通り、様々な音楽形式や局面のなかで、どんな楽器をどう活かすか、非常に解りやすく演奏されている。これほど良いサンプルを私は知らない。ヘタな教則DVDなんか見て儚い夢を見続けるよりも、これをじっくり聴いて到底自分には才能がないことを思い知れば良い。それで良いのだ。音楽は身の丈に応じて楽しめば良い。そこから自分の音楽が始まる。それに早く気付くためにも、ジャンルを問わず打楽器のアンサンブルに興味のある人は、是非一度聴いてみられたし。ちなみにこれは1978年にフランスで再発されたLPだが、オリジナルは1956年 (Tico Records, Tico-1011)で、データによるとオリジナルではA-1とB-1が逆になっている。
参加者はいずれ説明の必要もないラテン音楽界の第一人者、Tito Puente (1923-2000) は「ティンバレスの王」、それまで歌や演奏の合間にアクセントをスパイスのように効かせるのが主な任務であったティンバレスに、ソロを中心とした恰もリード楽器のような奏法を導入して確立した。それにとどまらずラテン・ジャズやサルサの確立に大きく貢献した神様のような存在。Mongo Santamaria (1922-2003) は、主にBoogalooの世界でまろやかな皮の響きをとどろかせた。8ビートのラテン・ジャズでコンガの音が聞こえれば、かなりの確率で彼が叩いているといって過言ではない。Willie Bobo (1934-1983) のみ他の3人より10歳ほど若く、しかも早逝している。コンガとティンバレスを主とするが、どちらかというと歌や楽曲のアンサンブルの中で骨格を支える縁の下の力持ち的な演奏が持ち味、ジャンルは8ビート系のラテン・ジャズに多い。Carlos "Patato" Valdez (1926-2007) は、上2人よりも土着的な音を持ち味とするコンガ奏者で、なんといっても、現在我々が普通に目にするチューニングできるコンガ、すなわち金属のリングをネジで締める形式は、実に彼が発明し特許となったものである。それまでのコンガは、長いくりぬき胴に牛皮を釘付けし、チューニングには熱を使うコンゴ風の片面太鼓であったが、彼が創設間もないLP社と組んで発売した"Patato Model Congas" はコンガのスタンダードなスタイルとなり、世界中にラテン・パーカッションが広まる結果となったことはあまりにも有名。
要するにみんな若かった。録音された時点で、だいたい20代後半から30代前半、レコード・ジャケットから受ける印象よりはずいぶん若い筈だ。しかもニューヨークに於けるキューバ音楽を中心としたラテン音楽のシーンは全盛期から爛熟期に差しかかり、コミュニティは音楽に満ちあふれ、アメリカ社会は内包してきた黒人社会とともに、新たに参入してきたヒスパニック系の社会の定着が始まっていた。そこにさまざまな社会問題が発生し、矛盾が怒りを呼び、行き場のないエネルギーのはけ口が音楽に向かった筈だ。熱い奔流が様々な音楽を生んで互いに融合しあい、シーンにどれだけの活気があったかを想像するだけで身震いがする。そのような空気の中から、膨大な数のミュージシャンの中から頭角を現わした若き日の4人の演奏である。よくぞ残してくれました。打楽器奏者なら一家に一枚のマスト・アイテム。
Four Beat Mambo
Stick On Bongo
Congo Beat
Timbales Solo
Tito On Timbales
The Big Four
Swinging Mambo
Tito And Mongo On Timbales
ラテン・パーカッションの大御所が一堂に会して叩きまくるアルバムである。これは一般的なリスナー向けのものというより、ラテン・パーカッションを志す人が、先ずは打楽器同士でどのようなアンサンブルが成り立っているか、それぞれの音がどのようなグルーヴを持っていて、それがどの音とどのように絡み合ってひとつのリズム・セクションをなし、それがオーケストレイションの中でどう活かされるかを研究する教則音源として実に適当な内容である。タイトルを見れば解る通り、様々な音楽形式や局面のなかで、どんな楽器をどう活かすか、非常に解りやすく演奏されている。これほど良いサンプルを私は知らない。ヘタな教則DVDなんか見て儚い夢を見続けるよりも、これをじっくり聴いて到底自分には才能がないことを思い知れば良い。それで良いのだ。音楽は身の丈に応じて楽しめば良い。そこから自分の音楽が始まる。それに早く気付くためにも、ジャンルを問わず打楽器のアンサンブルに興味のある人は、是非一度聴いてみられたし。ちなみにこれは1978年にフランスで再発されたLPだが、オリジナルは1956年 (Tico Records, Tico-1011)で、データによるとオリジナルではA-1とB-1が逆になっている。
参加者はいずれ説明の必要もないラテン音楽界の第一人者、Tito Puente (1923-2000) は「ティンバレスの王」、それまで歌や演奏の合間にアクセントをスパイスのように効かせるのが主な任務であったティンバレスに、ソロを中心とした恰もリード楽器のような奏法を導入して確立した。それにとどまらずラテン・ジャズやサルサの確立に大きく貢献した神様のような存在。Mongo Santamaria (1922-2003) は、主にBoogalooの世界でまろやかな皮の響きをとどろかせた。8ビートのラテン・ジャズでコンガの音が聞こえれば、かなりの確率で彼が叩いているといって過言ではない。Willie Bobo (1934-1983) のみ他の3人より10歳ほど若く、しかも早逝している。コンガとティンバレスを主とするが、どちらかというと歌や楽曲のアンサンブルの中で骨格を支える縁の下の力持ち的な演奏が持ち味、ジャンルは8ビート系のラテン・ジャズに多い。Carlos "Patato" Valdez (1926-2007) は、上2人よりも土着的な音を持ち味とするコンガ奏者で、なんといっても、現在我々が普通に目にするチューニングできるコンガ、すなわち金属のリングをネジで締める形式は、実に彼が発明し特許となったものである。それまでのコンガは、長いくりぬき胴に牛皮を釘付けし、チューニングには熱を使うコンゴ風の片面太鼓であったが、彼が創設間もないLP社と組んで発売した"Patato Model Congas" はコンガのスタンダードなスタイルとなり、世界中にラテン・パーカッションが広まる結果となったことはあまりにも有名。
要するにみんな若かった。録音された時点で、だいたい20代後半から30代前半、レコード・ジャケットから受ける印象よりはずいぶん若い筈だ。しかもニューヨークに於けるキューバ音楽を中心としたラテン音楽のシーンは全盛期から爛熟期に差しかかり、コミュニティは音楽に満ちあふれ、アメリカ社会は内包してきた黒人社会とともに、新たに参入してきたヒスパニック系の社会の定着が始まっていた。そこにさまざまな社会問題が発生し、矛盾が怒りを呼び、行き場のないエネルギーのはけ口が音楽に向かった筈だ。熱い奔流が様々な音楽を生んで互いに融合しあい、シーンにどれだけの活気があったかを想像するだけで身震いがする。そのような空気の中から、膨大な数のミュージシャンの中から頭角を現わした若き日の4人の演奏である。よくぞ残してくれました。打楽器奏者なら一家に一枚のマスト・アイテム。
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