2015年12月31日

20151218 Cuarteto Mayari

KIF_1708.JPG

El Cofre Musical del Recuerdo Cuarteto Mayari de Plácido Acevedo (LP, Guarani, GLP-200, 19??, Puerto Rico)

Tema-Orlando Rimas
Boda Gris
Tempestades del Alma
Amarga mi Existencia
Tus Besos
Inferno y Cielo
Entre los Golfos

Pobre Bardo
Fantasia
Desvario
Risa Loca
La Cruz de mi Dolor
Hierme sin Compasion

 これをカリブのイージー・リスニングとくくるわけには行かないけれども、LPジャケットのイメージからは、明らかにそういう戦略が見て取れる。これはPuerto Rico人のフルート奏者Plácido Acevedo (1903-1974) が率いた「Son」のグループである。
 キューバに革命 (1959) が起った後、キューバはアメリカと断交した。それにともなって、アメリカ在住のキューバ人も帰国することになり、カリブ音楽の一大旋風であったキューバの「Son」の演奏家が少なくなった。それを救う形になったのが、ドミニカ島を挟んで東にあるPuerto Ricoである。第二次世界大戦後のPuerto Ricoは、カリブ海の主要な島国が独立を遂げるなか独立運動もあったが、結局のところアメリカが内政自治権を与えることによってこれを懐柔することに成功した。現在も、カリブ海諸国の中で唯一アメリカの自治連邦区 (commonwealth) という特殊な位置づけとなっており、住民はアメリカ国籍を持つ。しかし、住民はスペイン語を話し、人種構成や文化はカリブ海地方のものであり、音楽的な影響も、他のカリブ諸国と全く同じ経緯を辿っている。しかしジャマイカではスカからレゲエが、ハイチではメラングからコンパが、ドミニカではメレンゲが・・・という具合に、個々のアイデンティティを規定する音楽があったのと、国外への渡航であるか否かというハードルの高さの違いなどがあって、Puerto Ricoのミュージシャンたちが、アメリカの音楽シーンにキューバ人に替わって流れ込むようになった。まだ「Son」は、他の音楽と融合しはじめていなかったので、彼らはキューバ風のスタイルで演奏しはじめた。その後、1970年代に入ってブラック・ミュージックの旋風が吹き荒れるとともに、彼らの演奏する音楽もそれらと融合して、様々なラテン的なポピュラー音楽に発展分化していく。そのうち最も大きな流れとなったのが「Salsa」である。
 まあそんな歴史的な概観は措くとして、混沌の過渡期というものは、どんな動きでも非常に面白いものだ。「Cuarteto Mayari」の演奏は、あきらかにキューバ風の「Son」である。しかしキューバの、なんというか乾ききった、枯れきった、しかしどこか憂いのあるブルージーな世界とは少し違う、より拡張性があるというか、ものすごく良いのである。
 このレコードを手に入れたのは、まだラテン音楽のことなど少しも知らなかった頃、とあるラテン音楽専門のレコード屋へおそるおそる入って行って、ほとんど問答無用に半ば強制的に買わされたもののひとつである。もう30年以上も前のことだから、まだCDは我々にとっては一般的ではなく、インターネットも当然なかった。このようなレコードを手に入れるには、それこそ専門店の主人と仲良くなって、いろいろ教えてもらって、奨められたものを買っていくしかなかったのである。一見で店に入っても、最初はほとんど口も利いてもらえない。大抵そこには、その世界のマニアがたむろしていて、新入りは先ずその序列の最下位に甘んじなければならない。新譜や良い作品は、取り巻きのマニアたちが先に買ってしまうので、新入りには手が出せない。新入りは、主人の勧めるままに、店の不良在庫を一通り買い終らなければ、まともに取り合ってもらえないのが、暗黙のしきたりのようなものだった。私がそれに耐えたかというと、決してそんなことはなく、その店に行ったのはほんの数回だけだったのだが、たしかこのLPは、2回目に行った時くらいに渡されたものではないかと記憶している。店のカウンターの脇にはカーテンがあって、主人が「マイペの2番」とか、レコード番号だけを言うと、奥から「はい」と女のひとの返事が聞こえ、もうすでに袋に入れられてカネを払わなければならない雰囲気になっている。黙って払ってそこを出るのである。持って帰って一度だけ聞いて、「もう二度と行くか」・・・なんともやりにくい店であったのだが、たしかもう一回だけ行って、ハイチのコンパのことを訊ねたら、なにかえらく叱られた覚えがあって、それ以来行っていない。それを今回何十年ぶりかに出して聞いてみると、上のような様々なことが思いが至されて、内容もとても良い演奏だということに気がついた。あの頃は若くてもまだ何も解らなかったのだ。歳を重ねてこそしみじみと良さが解る音楽もある。ああオレも歳とったんだな・・・


posted by jakiswede at 14:37| Comment(0) | 変態的音楽遍歴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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