2016年02月28日

20160225 萱場

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 すぐ近所の耕作放棄地の草刈りが終わった。ここは戦後の農地改革で圃場整備がされて以降、持ち主の相続の関係で権利関係が複雑化し、誰も管理しない状態で放置されてきた。何年かに一度、こうやって自治会で草刈りをするのだが、ただただ荒れ放題で、真ん中には木の切り株まである。私も何度かここを借りられないかと方々に打診したのだが、様々な障碍があって果たせない。個人の資格で利用権を設定するのは、たぶん不可能だ。そこで最近、ふとしたきっかけで思いついたことがある。


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 神戸市北区淡河町には、「くさかんむり」という茅ぶき屋根保存会がある。近隣の茅ぶき屋根は、順次彼等の手によって葺き替えられている。昨秋、近所の葺き替え済みの農家でイベントがあったときに、メンバーと知り合いになり、話すうちに、茅の調達もさることながら、葺き替えで出た古茅の処分にも困っているという。私の田畑は借り物ではあるが、2年続きの不作であり、何らかの手段で地力を少し助ける必要性を感じていた。そこで今シーズンより減反し、二年一作の運用でいくことを考えた。休ませている間は草刈りのみをして、枯れ草を積み、それが土に戻って土を肥やす。そこで考え付いたのは、両者を安直に結びつけることであった。


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 茅については全く無知である。これを育てるには、早春に株分けをして、初冬の刈り取りまでは手を入れない。それを刈り取って彼等に供給し、彼等のところで出た古茅を田畑に戻して肥料にできないものか。これは、二年一作かそれ以上でなければできず、毎年肥培管理をする普通の農家には無理だが、私にはできる。両者の思惑は、大筋では一致した。そこで先日、彼等の仕事場を見せてもらうことにした。茅は2メートル以上になることもあり、根は大きく強い。そして、大きな家一軒の葺き替えで出る茅は、1畝弱の圃場に積み上がり、それが風化して土に戻るのに二年ほどかかる。


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 私の借りている圃場と、管理している土手部分、ここでそれをやるとどうなるか、地主や近隣農家、水利組合・農業委員会はどう考えるのか。慎重に打診してみたところ、次のような返事が得られた。まず地主は「現状に戻せるのならば良い」、近隣農家は「害虫や害獣の住処にならないのなら良い」、水利組合は「土手が崩れなければ良い」、農業委員会は「茅は農作物ではないが、肥培管理の一環として栽培することは問題ない」・・・物事をストレートに表現してしまう私と違って、彼等の表現には「節度」というものが含まれている。これらをありていに言うならば、「現状に戻せないからダメだ」・「害虫や害獣の住処になるからダメだ」・「土手が崩れるからダメだ」・・・ということになりそうだ。


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 ほんとうにそうなのだろうか・・・と考えてしまうのが私の悪い癖で、仮に真実を究明した結果、茅を栽培することによって、「現状に戻すことができる」・「害虫や害獣の住処になはならない」・「土手はむしろ補強される」ことが立証されたとすればどうだろう。彼等がそれを受け入れるだろうか、いや、彼等はまた別の理由を持ち出してこれに反対するだろう。それにもおそらく「節度」が多分にまとわりついていて、論点をはっきりさせるだけでもかなりかかりそうだ。では、さらに私がそれらを論破してしまった場合どうなるだろう。果たして広範な支持が得られるだろうか。支持が得られないまま、私が信念を通し、正面を強行突破するとどうなるか・・・

 私一人でこれを解決しようとするのは、少なくとも得策ではない。二年一作の自然農法で茅を栽培して保存会に供給し、処分に困った古茅を田畑に戻して肥料とする。これはおそらく痩せ地においても非常に有効な循環農法のあり方である。化学肥料や農薬によって「草一本生えていない美しい景観」、「虫も獣も来ない安全で安心な田畑」をもって良しとする慣行農家の感覚と折り合っていくには、彼等の意識がもう少し寛大になる必要がある。その捨て石になるために個人が一生を捧げなければならないのか、あるいは、それまで自然農法しかありえなかった昔、初めて農薬や化学肥料を、恐る恐る使うことになった農家が、「あそこも使ってうまいことやりよったからウチも・・・」という意識の変化と同じような変化を、社会的な共通の課題として広がることのために努力するのか、とりあえず、何も供給できるめどが立たないのに、もらうことが先走って恐縮なのだが、近日中に古茅を頂いて圃場に敷き詰めることにしよう。そのあと、例の耕作放棄地を自治会としてどうするかという難問についての、一つのアプローチとして、茅場にすることを提案してみることにする。


posted by jakiswede at 12:51| Comment(0) | 農作業食品加工日誌2016 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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