私には実の兄も義理の兄もないのだが、人情の兄というべきものがあって、その人が亡くなった。人はいつ死ぬかわからんものである。今年は、後半になって既に親しかった友人が二人も旅立った。過去に多くの友を失ったが、私の友ゆえいずれ不摂生の報いであって、死ぬ前には癌が蔓延って手の付けられぬ状態になる。したがって末期は所謂緩和療法で、要するに麻薬漬けである。あれほどヤバい橋を何度も行きつ戻りつして苦労して手に入れていたものを、今度は望んでもいないのに潤沢に体内に注入される。本人は嬉しくも何ともない。そして、あれほど明晰であった頭脳が、見る影もなく妄想に蝕まれていくのを見ることになる。我々のようなカスミを食って生きているような人種にとっては、神経からやられるののが一番こたえる。余命が限られているというのに、神経をシャブ浸けにされて死への坂道をまっしぐら、痛くもなんともない。そんなさなかに友は何かを語りかけようとする。しかし意味するところが解らない。こちらが解しかねているのを見て、寂しそうに薄笑いを浮かべて友は諦める。それを見るのは何より辛い。なぜなら、心を分かち合った友だから。
先月病床の彼を見舞いに行った。20年も前に解散したバンド仲間であるから、一番「効く」のは過去のライブ音源を肴に、その演奏をこき下ろすことだ。
「うるっさいなお前のギター・・・」
「なに言うてんねんお前が走るからこうなるんや」
「人のせいにすな、細かいとこつまずくから全体たてなおさなしゃあないやんけ」
「なんでここでテンポ落とすねん」
「お前がソロ入れるから落とせ言うといて本番なったら忘れとんやんけ」
「ほななんかリフ入れて隠さんかい」
「そない自分の都合のええようにばっかり行くかいや、お前のために伴奏しとんちゃうぞ」
・・・とばかりに、まあ20年以上たっても自分らの演奏を聞くと、ライブ直後の楽屋の喧嘩が再現されてしまう。おかげで麻薬漬けで神経の飛んでた友も、やがて現実に舞い降りて論争に加わり、揚句の果てには、全員楽器を持ちだして20年ぶりの再々結成セッションとなった。最後の奇跡であった。
兄の死は、事情があって今日まで伏せてあった。連絡の行き渡らなかった友には申し訳なく思う。兄の最後のパートナーとなった女性との幸せな年月は短かった。しかし彼女は心からの誠意を行動で示し、最期の時まで彼の側から離れなかった。寝たきりに近い状態になってから独学で介護を学び、一通りの手当を身につけて彼のために尽してくれた。彼のこれまでの人生、そこに蓄積されてきた50年余りの年月、そこに彼女の人生が共鳴し、「ジェットコースターのよう」に一瞬で駆け抜ける、命がけの共同生活だったという。幸せとはかくも凄まじいものであることかと、しみじみと思い知らされる。
その凄まじい共同生活の場から、彼がいなくなった。物言わぬ彼を送り出した後の彼女の心境を思いやると、心が引き裂かれそうになる。訃報は彼が亡くなった日の午前中に届けられた。奇しくも先日亡くなった師匠の追悼ライブのために家で曲の確定に取りかかっていた最中だった。涙は、まずはライブ本番を終えてから、ゆっくりと・・・かつての我々の演奏を聞きながら、ゆっくりと・・・
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