https://www.youtube.com/watch?v=ETiT4Av0iYo&feature=share
Papa Wembaは、私の人生を変えた男だった。私はこの男のおかげで人生を棒に振ったも同然だ。思い起こせば、あれは確か1985年の冬、当時のザイールから帰国した故ピリピリ師匠が現地で買ってきた (たぶん) 一枚のドーナツ盤を前に、大阪梅田の今は亡きレコードショップVICのターンテーブルを囲んだ常連客がじっと考え込んでいた。そこに雁首を並べていたのは、後にKarly Chockersを結成することになる主要メンバーだった。ドーナツ盤の曲名は「Melina Parisienne」、こんな激しく乾いた、迸るようなスピード感のある、激しくてストレートで複雑で熱い音楽がこの世にあったのか・・・当時の私は、とっくの昔にプログレに飽き、パンクに馴染めず、オルタナにも距離感があって、レゲエを皮切りにどっと押し寄せてきた、聞いたこともない国々の様々な音楽の洪水に、進むべき道を見失っていた。キューバ・ラテン・ブラジル・レゲエ・ハイチ・アジア・アフリカ・・・サルサもよく聞いたしアフリカではフェラ・クティやサニー・アデをよく聞いた。当然、レコードもたくさん買ったしライブにも行った。週末や休日は、決まってレコード屋めぐりとバンドにもならない連れ同士の音出し練習に費やされた。しかし、どんな体験や試行錯誤も、この「Melina Parisienne」を聞いた後では、すべてがままごととしか思えなかった。その衝撃は、それまで自分たちがやってきたことのすべてを、まさにあざ笑うかのようにぶった切って空中の放り投げ、ドカンとどでかい花火をぶち上げて上空から白日のもとに暴き出し、自らは火の粉となって我々に降り注いだ。それまでの自分たちの試行錯誤など、もはやなんの意味もなかった。自分たちが欲しかったものはこれだった。ドカンと一発ぶち上げて火の粉をまき散らす。それほどのエネルギーを音にしてみろ、いてもたってもいられず、とりあえず、やもたてもたまらずに、我々は集まってバンドを結成した。Papa Wembに、偉大な精神性や深遠な思想があるとは思わない。しかし、彼がやったことは凄まじい。というか、やっちゃった・・・なにも考えずに勢いに任せて才能を信じて突っ走ったら、やっちゃったのである。だからすごい。考えてないから嘘がない。花火のように、ミサイルのように、ロケットのように、飛び続けても人生はまだ短すぎる。あるいは流星のように、隕石のように、閃光を発しながら崩壊する。それでも足りない。これは生き方であり行動なのだ。考えてる時間なんてない。おそらく彼も、自分が死んだことすらわかってないだろう。これだ。人生は短い。ぶちかましていかんと、あとなんぼもないんやで。それがリンガラ的な生き方や。その甲高い声とは裏腹に、彼の地声は非常に低くて重い。こちらから何を語りかけても、特に含蓄のある言葉は返ってこない。そんなものは不要だ。ただ、ぶちかますようにその時を生きる。ど真ん中を正面突破する。それだけだ人生は、と、確かに彼はそうだった。1978年に彼がバンドを始めた頃、自分が国を代表するようなミュージシャンになることなど望んでいなかったに違いない。売れるとさえ思っていなかっただろう。なぜなら、当時のザイールは、今からは考えられないくらい保守的で、因習に縛られた国だったからだ。だからこそ当時の政権は30年に及ぶ独裁体制を維持できた。それを明らかに壊しかねないエネルギーのほとばしりだったから、単なる若さの発露以外の何をも期待していなかっただろう彼は。私も彼と何度も同席したが、当時は国民的英雄と膝を交えているとさえ思っていなかった。だから、安らかにとは言わんよ俺は。
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