やっとのことでありついた営業の仕事を辞めることになった。昔取った杵柄は曲がってて腐ってた。何を言っても言い訳になるが、もはや時代に全くついていけていない自分がここにある。ビジネスの世界から離れた10年前とは隔世の感だ。全てはスマホで動いている。スマホの操作方法がわからないのではない。スマホで生きる人々がやるように、頻繁にスマホで連絡を取り合い、共感を分かち合うことができないのだ。しかし、全てはスマホで動いているのである。活動指示や方針などは逐一変更され、その全てを始終追っていなくてはならない。新しく差し込まれた緊急対応のための販促物の入った巨大な箱が、連日のように自宅に届けられ、生活空間を占領していく。何のために、どこに使うのかもわからず、開けるとさらに場所を要するので、怖くて開けることもできない。問い合わせても返事はない。
いちいち個別に返事など来ないのだ。全てはスタッフ用のコミュニケイション・サイトに投稿されている。営業スタッフは、書き込まれた膨大なメッセージの中から、何を優先して動くべきか、どこに何を使うのかを読み取らねばならない。販促物はどんどん送られてきて野ざらしになる。尻に火がついて、とりあえずその販促物を処分するために仕事をする。どんどん片付けていかないと部屋が販促物で埋まる。活動を終えてレポートをあげる。内容不備で差し戻される。場合によっては再訪店を指示され、これらは新しく課せられた業務と重なって苦しい立場に追い込まれる。収拾がつかないのでリセットを要求するとイエローカードが発せられる。三枚でクビだ。
体勢を立て直して新たに取り組むが、すぐに状況は混沌とするなか、秋の農繁期に突入した。契約では月に10日だけの勤務だが、コミュニケイション・サイトにアクセスしていない日が続いたことで、二枚目のイエローカードが出た。知らなかったでは済まされない。何のための端末かと言われれば返事もできない。この時点で、私にはこの生活を続けることは無理と考えて退職願を提出した。地獄の閻魔大王に魂預けて、三年ほど地獄めぐりしてくるなんて豪語していたくせに、こんな誰にでもできる仕事を三ヶ月でギブ・アップだ。気がつけば、スマホをいじりながら運転し、信号待ちでメッセージを打ちながら、クラクションを鳴らされる自分がここにある。地獄に仏と思ってすがりついたがさらなる地獄、火のついたケツに火炎放射されて借家まで全焼させられる前に、逃げた。これがビジネスの世界の末端の実態なのか。
おかげで決心がついた。私は戻れない。手作り農業と、日本経済との格差は、およそ30倍である。一人前の男が機械も化学物質も使わずに手作りで営農できる面積は一反、そこで米作りをして得られる米が、200-300kg、年収200-300万を得ようと思ったらキロ単価1万円。しかし市価はその約1/30なのだ。つまり手作りで米作りをしても、たったの10万円の年収にしかならない。そこを畑作や希少作物や伝統野菜や食品加工などで工夫して100万円くらいなら何とかなる。しかし全滅することもある。そこまでは、やった。同じ地獄を見るならば、この手で作った産物で、この30倍の格差を乗り越える。退路は絶たれてしまった。もうこれでいくしかない。採用してくれた会社の皆様、ご迷惑をおかけしました。おかげで目が覚めました。心から感謝します。私は自分の道を参ります。
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