一年ほど前のこと。・・・ナニをやっておるのかというと、実は、だいぶ前に入手した100年近く前のドイツの映画用レンズ、Rudolf Meyer Optikの癖玉Kinoplasmatをデジカメで実用化すべく、フランジバックの実地計測をしているのである。といってもキヨーミのないひとにはわかるまい。このレンズ、L39マウントであれば100万円を軽く突破するほどのレア玉なのだが、まだそれほど知られていなかった昔、マウント不明のものを2万円ほどで買ったのである。このレンズは、絞り開放付近で近接撮影をすると、1m先あたりの背景が見事に渦を巻くのが特徴であって、その描写はレンズ・グルメの奈落の底といわれるもので、もはやこの病に罹患してしまっては生還の可能性はない。趣味に生きる人々は、結局ここに流れ着いて最後の散財を、それも1本のレンズに100万という、非家庭的非実用的大顰蹙的天文学的出費を強いられる・・・で・・・まだフィルム・カメラしか持っていなかった当時、私はL39マウントのボディ・キャップに穴を開けて、スペーサで詰め物をしながら、なんとか50cm程度の近接ならばフィルム面に結像させることに成功し、目測あるいは実測で撮影していた。カネをかけずに趣味の地獄を彷徨うのは並大抵のことではない。もちろん連動距離計の突起が邪魔をするので、一切の突起物のないVoigtländer Bessa Lを使っていたのだが、流石に失敗が多かった。近年になってミラーレス一眼が普及するに及んで、実像を見ながら撮影したく、micro 4/3マウントのOlympus Pen Digitalボディを使うことを思いついた。ところがいくら調べても、このレンズのマウント寸法に該当する規格がなく、従ってマウント・アダプタも存在しないのである。万策尽きて、マウントを製作するという暴挙に着手した。地獄の沙汰もカネ次第というが、カネをかけずに地獄めぐりをするこそまさにこの世の地獄なれ。
さて実測経験値によって、このレンズのフランジ・バックはCマウントとmicro 4/3マウントの中間であることはわかっていたが、さすがにマウントを製作するとなると厳密に計測しなければならず、かといって精密な計測機器を持っているわけではないので、三脚にPentaxのオート・ベローズを装着して、その背面にすりガラスを押し当て、L39→M42アダプタを介してL39スペーサで微調整しながら、すりガラスに映ったほぼ無限遠の高圧電線のラインをルーペで観察するという笑止千万な愚策に出たわけである。ピントが合った時点でレンズのマウント面とベローズの背面の間隔を測定し、誤差を縮めるために何度も計測して平均値を出し、このレンズのフランジ・バック値を得た。そして、使用する機材であるmicro 4/3マウントのOlympus Pen DigitalボディにはCマウントを介し、そこから繰り出す形のアダプタを想定した。なぜならmicro 4/3マウントののバヨネットを製作するなど、カネがかかるにきまってるからである。二重アダプタは光学的精度に欠けるのだが、カネをかけずに地獄めぐりをしようというのだから仕方がない。さてその計測値からCマウントのフランジ・バックを差し引いた数値が、求めるアダプタの繰り出し寸法となる。カメラのマウントのネジはインチ・ピッチであることが多いので、これも計測する必要がある。様々に試行錯誤を重ねた結果、なんとか手書きの設計図は完成した。さてこれをどうやって作るか・・・もちろん私にできることではない。鉄工所、金属加工所を片っ端から訪ねて歩いたのだが、予想していたこととはいえ、流石にどこも笑って取り合ってくれなかった。2万円程度ならやってやると言ってくれた工場もあったが、いざ設計図を出すと断られた。アルミ削り出しでは薄すぎて強度が足りないそうなのである。
諦めていた頃にたどり着いたのが、八尾にある金属加工工場・・・そのキャッチ・フレーズに思わず涙が出ました。「超薄物旋盤加工で世界を回す」・・・噛み締めてくださいこの言葉。ここにもひとり根性の地獄めぐりから生還した人がある。その旋盤を題して「笑止旋盤」・・・参りました、このセンス。この人ならわかってくれるはず・・・そう信じてアクセスしてみたら・・・もうここに書くと涙でキーボードが見えんくなるけんやめとくが、とにかく・・・とにかくできました。もう感謝してもし尽くせないくらい感動しました。ここにその社名を出すと、またぞろ私のような無理難題を持ち込む人があるやもしれんけ、ここでは伏せさせていただき、キョーミのある人なら上のキャッチフレーズで調べるであろうから・・・
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