ブラジルに「ショーロ」という音楽がある。成立は19世紀ごろでサンバよりも古い。ヨーロッパのクラシック音楽が基礎になっていて、そこにアフリカ系、インディオ系、アラブ系の音楽要素などが混血してできた、まさにブラジルらしい都市ポピュラー音楽である。これの面白いところは、ジャズにも似た即興的な器楽合奏が中心になっていて、ある程度の形式は踏まれるものの、演奏自体は非常にスポンテニアスなものなので、様々な解釈と実験による変奏が可能なところである。それゆえに、これに興味を持った人なら誰に対しても、探求を極めたい人も直感を重んじる人に対しても、門戸が広く開かれているところが良い。事実、ショーロの楽曲を具に聴いていくと、ルネサンスの宮廷舞曲風のもの、東欧からコーカサス地方の吟遊詩、アラブやイベリア風のもの、またアフリカからカリブ海に渡ったであろういくつかの音楽形態の残滓が色濃く残るものがある。これらが数百年の時を越えて楽譜に刻まれ、しかもそれを金科玉条とするでなく、即興的器楽合奏の底本として、今でも自由に演奏表現を膨らませることができることは実に素晴らしい。おそらく世界中を探しても、こういう遺産を忠実に後世に伝え、なおかつ後世がそれを自由に使えるような音楽形式というものは、なかなかないのではないか。さらにショーロは多くの場合、円卓を囲んで飲食を共にしながら気の向くままに演奏されたのである。ここに縁あって先日、京都祇園の小さなレストランを借り切って、解禁されたばかりのボージョレ・ヌーヴォーと、シェフ自慢の手料理をいただきつつ、昼過ぎから日の暮れるまで、ショーロの名曲という名曲をほぼ総なめにしたのであった。集まった友たちは、私のようなブラジル音楽にほぼ造詣などないに等しい輩でも別け隔てなく受け入れて、これに快く参加させてくれたのであった。彼らの心の寛大なことは、まさにショーロを純粋な音楽などと気取らず、ブラジル音楽の粋たる混血性を正統に受け継いで全てを受け入れようとするところにあった。おそらくショーロの創世期には、とりあえず楽器の持てる者たち、人種も民族も、音楽的背景も雑多な楽師たちが集まって冠婚葬祭の席に喚ばれたものであろう。そこでは、とりあえずのテーマとコード展開を簡単に取り決め、あとは各自の音楽的素養に基づく様々な演奏が繰り広げられたに違いない。そこから生まれてきた名曲の数々を、曲として固定化された楽譜を考証学的に探求するのではなく、その上に独自に何を積み上げていくかに力点を置いているところが、この友たちの偉大なところであって、だからこそ共に演奏できるのである。祇園という、私にとってはほぼ縁のない世界で、類い稀なる至福の時間を過ごさせていただいて、みなさん本当にありがとう。またやりましょう。
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