2018年04月15日

20180415 種籾塩水選温湯消毒

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 稲の種籾の塩水選とは、一定の比重の食塩水を作ってそこへ種籾を浸し、沈んだものを種子として使う選別方法である。定説では、その比重を「うるち1.13、もち1.08」と定めて、その基準で選別することになっている。しかしこれは現代の品種改良された「良食味米」の基準であって、機械化農業における均質化された種籾にのみ当てはまるものである。私の栽培する古代米や、不耕起農法で反陸稲状態で栽培される稲などは、品種によって大きさや充実度、籾殻の厚みや芒のあるなしによって全くバラバラであり、このような数値は全く当てはまらない。しかも、醤油の仕込み水の記事でも触れたように、食塩水の濃度とその体積との関係を等式化することは大変難しく、使う水道水や食塩の性質によって濃度と比重の関係は、かなり大きくブレる。小数点以下二桁を提示しておきながら、厳密な測定には専用の機器が必要になるので、仕方なく手引書などでは生卵がどのくらい液面状に出るかなどというあやふやな測定方法が示されている始末である。しかし卵だって必ずしも均質ではない。このように厳密性を求められる物事をあやふやに処理してしまって良いはずがない。目の前に種籾があってそれが全てなのである。これの中から良い種籾を選ぼうとするならば、これをまずは半分に分ける方法を考えるのが現実的だと思う。

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 というわけで、私は飽和食塩水を作ることにしている。これ以上濃いものがないのであるから、飽和食塩水に浸して全て沈めば文句なしの全部合格。しかし大抵は全部浮くので、これを攪拌しながら少しずつ水を足してゆき、食塩水の比重を下げていく方法をとる。やかんでじゃぶじゃぶと水を注ぐと、ある時点で種籾が一気に沈んで失敗する。薄まってしまったものを濃くするのはなかなか大変なので、面倒でも少量ずつ、攪拌しつつ慎重に進めるべきである。塩は安いもので良い。1kg程度の種籾を選別するなら、3ℓの水に2kgの塩をぶち込んで加熱攪拌し、溶けきらなかった分を除去して冷ましてから使えば良い。これでだいたい飽和食塩水になる。私の栽培している稲の品種を比重の重い順に並べると、黒田苑・緑糯・豊里・神丹穂・サリークイーンとなるので、この順番に選別してゆけば食塩水を薄めながら選別できるというわけである。しかし年によって作柄に違いがあり、順番が逆転することがあるので、食塩水の一部を分けておいて濃度を高める時に使うと良い。選別基準は、浮いている種籾が沈みはじめて、その量が約半分になった頃としている。塩水選を終えた種籾は即座に塩抜きをしなければならない。流水でよく洗う。種籾は散逸を防ぐために網に入れておくと良い。

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 引き続き温湯消毒に入る。これは60℃の温湯に10分浸す方法をとる。60℃は手がやけどするほどの温度なので、網袋を木じゃくしなどで攪拌して温度を均一に保つ。また10分経過するうちに必ず温度が下がるので、別に少し高めの温湯を用意しておいて混合し、温度を一定に保つ。10分経過したら即座に流水で冷却する。

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 引き続き浸水に入る。これは目安として一日の平均水温を積算して100℃、すなわち20℃の日が5日続いたら100℃と考えて、その間、種籾を水に浸して和らげることである。通常、種籾が鳩胸状態になることを識別の目安としているが、これも品種によって差がある。特に今回処理したものは、例年栽培に手こずるサリークイーンという長粒米の品種であり、これはほとんど変化がないので、積算100℃で切り上げている。

 最後に催芽処理をする。これは十分浸水した樽も身をぬるま湯につけてきっこんを促すものである。「催芽」といっているが、最初に出てくるのは根である。2日ほどで白い根が顔を出すのでその時点で切り上げ、苗代に撒くために一旦種籾をザルか網にあげて乾かす。種まきの際に手につかないようにするためである。

posted by jakiswede at 00:00| Comment(0) | 農作業食品加工日誌2018 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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