2019年07月18日

20190718 田の除草

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 代掻きをする一般的な田んぼでは、除草剤を使わない限り、植えた稲の出穂まで泥の中を這いずり回って除草するという苦行は不可欠である。それを一反もやるとなると、コシヒカリなどの標準的な品種では6月中旬の一番草から8月初旬の出穂まで、毎日朝から晩まで泥の中にかがみこんでひたすら表面をかき回すことになる。

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苗が小さいうちは良い。7月には屈み込む顔面の高さを葉先が超えてくるので、顔中をタオルでぐるぐる巻きにして、やがて腰の高さまで成長すると、それを頭でかき分けて株もとに顔を突っ込むということを、33m四方25cm間隔のグリッド全部やるのである。足を目一杯広げて7株、それを33mの帯状に除草して行くのに休憩無しで3時間、腰が破裂するので一日2セットが限界、次の7列、次の7列と進んでいって、実働で計算上10日はかかる。しかしそのころには10日前に始めた部分が草に埋もれている。これを休みなしで全体を5セットやる頃に稲は出穂を迎える。体力はもちろん、強靭な精神力が求められる。稲の葉は刃物である。どんなに守っていても顔中切り傷だらけとなり、顔面や腕が痒くてたまらず、それが夕方からひどくなって夜には全身が震え出す。これが毎晩続く。穂が出て花が咲けば、逆に田んぼに入ることは許されない。風が吹いてもいかん。それまでが勝負である。「農薬がないとできない」というのはこのことである。農薬無しでやれるもんならやってみるが良い。私が不耕起による栽培にたどり着いたのは、何度も上の作業で腰を破壊して、浴衣の帯で縛り上げ、保冷剤を服の中に詰めて毎日泥だらけになって、何度もダウンを取られたからである。そんなことやっとったら飯を食う前に死んでしまう。

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 そこで魅惑の白い粉が登場する。これを使うと見事に草が生えてこない。上の作業は夢のように消える。田植え後、葉の色が濃くなって活着した頃を見計らってこれを撒くと、出穂期までほぼ放置できる。これを初期一発除草剤といって、これを使用して栽培したコメは「特別栽培米」と表記することになっている。一般的には、さらに各種病気の予防やカメムシなどの防除のために、さらに多くの農薬が使われる。「無農薬」とも「特別栽培米」とも表記のないものは、このように複合的な農薬使用にさらされている。私は初期一発を一度だけ使ったことがある。作業の苦痛から逃れたかったこと、不耕起という手法にたどり着いていなかった頃、周囲の農家の圧力に負けて泣く泣くこれを撒いた。撒いてわかったことがある。粉を吸うと、どしんと肺が重くなる。体が「これは毒だ」と警告する。だからやめた。しかし思いやってほしい。一般的な農家は、ほぼ無防備な状態で、毎日これにさらされながら、あなた方の食卓に米を届けている。で、大抵は、空をかきむしるような仕草を繰り返しながら、目を見開いて死んでいくのである。

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 不耕起の田んぼの管理についてはのちに述べたい。今回は久しぶりに代掻きをした田んぼの除草である。広さは160平米なので、一反の1/6の労力なので屁みたいなもんである。田んぼの除草のために、昭和中期ごろまでに様々な道具が考案された。いかにその作業が辛いか、どうすれば少しでも楽になるか知恵を振り絞った結果がよく表れている。写真の右端は除草ぐるまといって、先端の舟形の内側が刃物になっていて、車を押し出した後引いてこの刃物で草を切って舟形に乗せ、さらに押して草を落として後ろの歯車で泥の中に掻き込むのである。と同時に次の動作で草を切って・・・という連続動作で除草する。確かに合理的だが、操作に慣れが必要なのと、ごく初期の除草にしか使えないので万能ではない。大抵の場合、除草する局面に立った頃には草ぼうぼうになっている。絡みついた根を中腰になっててでほぐすことは自殺行為である。そうしてこのような柄の短い鉄の爪が作られた。鋳物であり、これを現在注文すると特注になって結構高い。私はもっぱら、揚げ鍬の柄の折れたやつをそのまま使っている。先端を研ぎ澄まして、草の根を切ってひっくり返す。前に進む時に足で踏みつける。立ったまま鍬を使うと、よく手元が狂って稲を痛めてしまうので、このくらいがちょうど良い。まあそんなこんなで160平米なら1時間ほどで終了。遅い品種なので上のコシヒカリのデータとは日程が違う。田植え後3週間程度なので、草はまだ小さい。

posted by jakiswede at 00:00| Comment(0) | 農作業食品加工日誌2019 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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