猛暑に倒れ、川に没したメンバーを悼んでいる間に時は流れ、秋風とともに現実に立ち戻る時がきた。私は再結成カーリー・ショッケールの初ライブの告知文に「この歳になって、もう一度カーリーをやれるなんて、もう嬉しくて嬉しくて仕方がない。世の中の理不尽も、俺に対するいわれなき嫌がらせも、すべて許す。なんといっても、俺はこの歳になってもう一度カーリーをやれるんだから・・・それがすべてだ。」と書いた。当面それがなくなった今、俺はこれらを見逃しておく理由がなくなった。
世の中の理不尽も、俺に対するいわれなき嫌がらせも、交渉の段階を過ぎて闘争の段階に入ったようだ。なぜなら、いくら呼びかけても話し合いに応じず、応じた者もそこで合意されたことを履行せず、議論されている問題そのものを実行に移すからだ。すなわち、「やる」と言ったことはやらず、「やらない」と言ったことはやるのである。であれば徹底的にそれを妨害する以外に自分を守り得る手段はなくなる。
盆を過ぎる頃、中晩稲は出穂期を迎える。百姓はそれに合わせて畦の草刈りをし、最後の雑草とりをして、なるべく田んぼに虫が入らぬようにする。と同時に、地域では害虫防除のため薬剤が散布される。私が移住してきた頃は、まだ大型ヘリとトラックによる全面散布で、作業中は外に出られず窓も締め切ったまま、匂いが消えるのを待つ状態であったものが、数年後には個別散布といって、小型リモコン・ヘリコプターによる局所的なやり方に変わった。圃場周辺や畑の作物、農業用水への影響を考慮したためで、これにより対象圃場以外へ漏れることはなくなるとされていた。このような出来もしない暴言を平気で吐くのである。風も吹けば薬剤の霧はみるみる私の畑にも降りかかる。ことによると圃場四隅への散布ムラを気にしてか、ヘリは圃場の外縁を飛ぶ。
私の畑では、生食するバジルがまさに収穫期を迎えている。バジルは香りが命なので、葉を水洗いせず、一枚ずつ異物を拭き取って加工する。茶葉と同じ扱いである。毎年これをシートで覆い、ヘリが近づくと体を張ってその圃場の際まで出てバジルを守らなければならない。それで毎年トラブルになる。今年は隣接する田んぼに散布されるのに合わせて、わざとらしく隣接する法面の草刈りをしてやった。彼らは私が草刈りをしているのを見てその圃場への散布を後回しにしたが、私は草刈りを終えても作業しているふりをしてその場にとどまった。やがて業を煮やした作業員から立ち退くように言われたが・・・
「外には漏れへんねやろ、ほなやったらええやん」
「しかし万が一ということがありますので」
「なにが万が一やねん、外へは絶対に漏らさへんというのが原則やろ、やったらええやんか、ヘリコプターから霧ひとつ外へ漏らさへん立派な仕事録画してYouTubeに上げたるさかい」
彼らは仕事を中断して立ち去った。おそらくその田んぼの主に報告に行ったのであろう。毎年のことなので、私は畑の草取りに専念した。やがて業者の上の者を連れて彼らは戻って来た。道へ出ろと言われたが無視していると、彼らに取り囲まれた。
「おい、お前ら人の畑に無断で入ってええと思とんか」
「仕事を妨害するな、訴えるぞ」
「妨害なんかしてへん、やったらええと言うとんや、田んぼに入って行ったり、作業員に手出したりしてへんやろ、外に影響ないんやったらどうぞやってください、てさっきから言うてるやんか、それをなんや取り囲みやがって、しかも俺の畑やぞ、悪いけど録画さしてもらうで」
「・・・・」
「ええか、この法面までは俺が管理してる部分や、ここに一切かけることは許さん、外側に散布漏れができるんやったら畔から手作業で撒いたらどうや、それが仕事ちゅうもんとちゃうんかい」
「・・・・」
「おい、お前らプロやったらなんとか言わんかい、それが仕事やろ」
「・・・・」
「ちゃうんかい」
「・・・・」
「ちゃうんかい」
「・・・・」
「ちゃうんかい」
「・・・・」
彼らは作業を断念したが、おかげで私も一日を潰してしまった。こうして一日一日と仕事の手を止めさせられるのである。
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