もう何十年も前、仕事で大和高田の渋滞する道路脇の古本屋のワゴンに、窓越しにこの本を見つけた。Joseph Sudekの作品集は、フランスの写真叢書Photo Pocheで持っていたが、この版の大型なのに驚いて車を止めてその店へ走った。なんと数百円で購入した覚えがある。それは新書サイズで印刷も粗いPhoto Pocheの版とは比べ物にならないほど精緻なものだった。モノクロ写真の暗室作業を志してはいたものの、仕事でなかなかまとまった時間を取れなかったのを、いったん退職して数ヶ月暗室作業に没頭するきっかけを与えてくれた。表紙を飾るこの作品は、ナチス政権下のチェコで、写真家が風景写真の撮影を禁じられるなかで、自らのスタジオの窓から見える風景のみで構成した「スタジオの窓より」という作品集の代表作である。Joseph Sudekは、第一次世界大戦中に出兵した先で負傷して、若くして右腕を失っている。左手一本で、しかも外出の自由を失われながら、いかにしてこれほどの作品を生み出したか・・・つくづくながめ、黒の中の黒、白の中の白。切り立ったエッジに、身を研ぎ澄まされる思いがする。もう何十年も放置した暗室用品、今年はなんとか再開させたいものだ。
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