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「引きこもりの美学・番外」・・・ひとつできました・といっても自分の演奏ではなく、既存音源の加工なので著作権の問題があるでしょうから、一般には公開しませんが、やろうと思っていることのひとつがこういう音楽です。この録音は、ごく短い印象的なフレーズを最初に提示して、続いてそれを半速、1/4速、1/8速に引き伸ばしたものを重ね合わせ、ある部分はカットし、ある部分は逆回転させ、最後にエコーをかけて撹乱してあります。デジタル技術のおかげで、今ではDTMもカンタンです。仕掛け自体はチャチなものですが、ごく短い印象的なフレーズを延々と繰り返し、それに変装を重ねていくことによって得られる音響的な効果に興味があったのです。このアイディアは、1975年にBrian Enoがプロデュースし、Gavin Bryarsが録音した ≫The Sinking of the Titanic ≫という作品に着想を得たもので、私にとってその作品は、どんな苦境の中で喘いでいる時でも、必ず心に平安をもたらしてくれる魔法のような音楽でした。それは、豪華客船「タイタニック号」が氷山に衝突して沈没するまでの間、ホールにいた楽士たちは、客の心を落ち着かせるために最後まで演奏をやめなかったという逸話に基づいています。実際にどのような演奏だたかは明らかではありませんが、この逸話に着想を得てGavin Bryarsが作曲したものです。ひとつの印象的なフレーズが最初に提示され、それをあるいは引き伸ばし、あるいはオクターブ下で倍尺に引き伸ばされた演奏を重ね、さらにその倍を重ねたり、同じテーマによる別の変奏を挿入したりなどという、極めて実験的でありながら、全体としては沈みゆく豪華客船の有終の美を飾るにふさわしい重厚さと気品、繊細さ、美しさを兼ね備えた、堂々たる作品です。それを可能にしたのは、元のフレーズの良さです。その録音では、楽士たちは極めてゆっくりとしたテンポでその曲を演奏していた、という証言に敬意を評して、非常にゆっくりと演奏されており、それがなお一層の効果をあげています。
今回巡り合ったフレーズは、北フランスのボーヴェにある大聖堂Cathédrale Saint-Pierre de Beauvaisに12世紀頃から伝わる作曲者不詳の典礼劇"Ludus Danielis"の一節である。この大聖堂は10世紀ごろには小さなロマネスク様式の教会であったものが、13世紀に聖堂としての建設が始まり、最終的には16世紀いっぱいまでかかって、悩ましいまでに複雑怪奇な巨大ゴシック建築となったが、増築と崩落を繰り返して未だ未完成で現状維持のまま存続している。そこには中世以来様々な手書写本が残されていて、なかでも正月に行われていたという「愚か者のミサ」、要するに典礼の格式を逆転させた無礼講を大々的にやる儀式で、それはカーニバルの起源とされているのだが、その際に演じられたものの一つという、旧約聖書の『ダニエル書』に題材を取った『ダニエル劇』がこの聖堂に由来するとされている。この典礼劇は中世のものとしては非常に珍しく完全な楽譜が残されていて、上演の機会も多く、これを取り上げた演奏も多い。このうち、Dufay Collectiveの演奏では、随所に器楽合奏が挿入されていて、それらは非常に洗練されていて聞き応えがある。劇の概要は、カルディア王国が復興した新バビロニアで、その王ペルシャザールが宴会を開いていたとき、不思議な手が現れて文字を書いたが誰にも読めず、ユダヤ人捕虜であったダニエルが解読して王に注進した。その内容は、王の神を恐れず豪奢をきわめるを諫める予言であった。国は程なくアケメネス朝ペルシャに滅ぼされ、囚われていたユダヤ人が解放されるという史実に基づく。
そのうち、私は今回の試みに、不思議な手が現れて会席者が恐れ慄く場面の、歌に続く器楽合奏の部分を抜粋して使った。音楽を聴く楽しみは、つまるところ自分にとって印象に残るメロディなりフレーズを探し求める旅であろう。であれば、それが多く得られれば得られるほど幸福が増すというものである。いまのところこのフレーズは既存音源であるが、これを何らかの楽器で実際に演奏して録音し、同じ効果を得るべき編集して作品にしたいと思っている。
今回巡り合ったフレーズは、北フランスのボーヴェにある大聖堂Cathédrale Saint-Pierre de Beauvaisに12世紀頃から伝わる作曲者不詳の典礼劇"Ludus Danielis"の一節である。この大聖堂は10世紀ごろには小さなロマネスク様式の教会であったものが、13世紀に聖堂としての建設が始まり、最終的には16世紀いっぱいまでかかって、悩ましいまでに複雑怪奇な巨大ゴシック建築となったが、増築と崩落を繰り返して未だ未完成で現状維持のまま存続している。そこには中世以来様々な手書写本が残されていて、なかでも正月に行われていたという「愚か者のミサ」、要するに典礼の格式を逆転させた無礼講を大々的にやる儀式で、それはカーニバルの起源とされているのだが、その際に演じられたものの一つという、旧約聖書の『ダニエル書』に題材を取った『ダニエル劇』がこの聖堂に由来するとされている。この典礼劇は中世のものとしては非常に珍しく完全な楽譜が残されていて、上演の機会も多く、これを取り上げた演奏も多い。このうち、Dufay Collectiveの演奏では、随所に器楽合奏が挿入されていて、それらは非常に洗練されていて聞き応えがある。劇の概要は、カルディア王国が復興した新バビロニアで、その王ペルシャザールが宴会を開いていたとき、不思議な手が現れて文字を書いたが誰にも読めず、ユダヤ人捕虜であったダニエルが解読して王に注進した。その内容は、王の神を恐れず豪奢をきわめるを諫める予言であった。国は程なくアケメネス朝ペルシャに滅ぼされ、囚われていたユダヤ人が解放されるという史実に基づく。
そのうち、私は今回の試みに、不思議な手が現れて会席者が恐れ慄く場面の、歌に続く器楽合奏の部分を抜粋して使った。音楽を聴く楽しみは、つまるところ自分にとって印象に残るメロディなりフレーズを探し求める旅であろう。であれば、それが多く得られれば得られるほど幸福が増すというものである。いまのところこのフレーズは既存音源であるが、これを何らかの楽器で実際に演奏して録音し、同じ効果を得るべき編集して作品にしたいと思っている。
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