さて、私は稲はハングリーな状態で育てる方が良いと思う。新しく借りた圃場では、前作の借り手がかなりの肥料を投入していたと見え、「神丹穂」は草丈2メートルを超え、茎の強いはずの「緑糯」さえ風に倒れた。そして黒米の「紫黒苑」には「稲糀病」が多発した。これは出穂期の低温、日照不足と多雨、土壌養分の過多すなわち多肥が影響して起こる稲の病気である。他の品種で発生しなかったところを見ると、この品種は九州の出身であるので、相対的に近畿中部では寒かったのかもしれない。この「稲糀病」は「糀」の名があるが、これはカビの一種であるがコウジカビとは全く別物の常在菌であって、人体に有毒であり、罹患した籾は精米すれば影響ないとはいえ、中身がスカスカになっている。またこれが発生した圃場には胞子が飛散していて、翌年以降も発生する可能性が高く、同一過程で処理した他の稲わらや籾にも付着して、これを広げてしまう。無農薬でこれを防除するに有効な手段はなく、輪作するか気象条件をよく予測して、出穂期以降の降雨を避けるようにするくらいが対策となる。よくこれを利用して発酵食品を作る話が都市伝説のように広まっているが、毒を持っているので絶対にやらない方が良い。成功事例もよく読んでみると、自然界に常在するコウジカビなどの菌の混入が十分に考えられる状況のものがほとんどで、稲糀病の菌が作用したものとは考えにくいものである。
2019年11月12日
2019年11月11日
20191111 農法による稲の生育状態の違い
同じ「緑糯」を田んぼの都合で不耕起でもやってみた状態がこれである。遠目に見ても、生育状態の違いは一目瞭然である。同じ苗代から区別せずに取った苗を植えたものである。刈り取って掛けてみると一層よくわかる。前者は、昨シーズンまでここを使っていた人がケミカル万能の化学の先生であって、プラスチックゴミもさることながら、前作までの肥料分がかなり残っていたものが大きく影響したと思われる。不耕起栽培の利点は、自然に近いということ、一人でも代掻きせずに田んぼを作れるということなどが挙げられるが、その代わり陸生雑草との競争にさらされ、連作障害の影響を受けやすくなる。そのため、土を露出させずに、刈り取った草を表面に敷いて抑草したり、同じ圃場で他の作物を輪作したりして、これを防ぐ。地表に刈り草を敷き詰めて抑草と施肥の効果を期待すると、表面に養分が集中しすぎる傾向があって、いずれはこれを耕起した方が状態が良くなる。一方、代掻きするには大きな力が必要になるので、人力で広い面積を作ることが難しく、牛や動力を使うか、人力による共同作業が必要になる。しかし、代掻きによって圃場の土質が均されるので生育管理が省力化できる。田植えそのものが楽なので、それに要する期間が短縮されて生育状態が均一になる。また、田植え後の初期分蘖が、その後の稲の収量を決定するので、それを期待するなら代掻きをした方が有利である。問題は、常に水を張った状態を維持する技術の習得と獣害による畔の破壊に対処すること、水性雑草に対処することが難しいことなどが挙げられる。今回の比較は、稲にとって最も甘い条件と厳しい条件における比較の好例となった。
2019年11月10日
20191110 稲の刈り旬
一般的に稲の刈り旬は穂首が黄色くなった頃と言われている。この頃、乳液状だった胚乳が徐々に固まり、爪で押さえると軽く跡がつく程度にまでなる。とーろがスズメはそれを待たずに乳液状の胚乳を吸うために群がり、穂首を引き倒して足で抑えて実を突く。穂は成熟中であり、未だ実の入っていないものもあるが、彼らは御構い無しに次から次へと穂首を引き倒し、いたずらに散らかすのである。「緑糯」の刈り旬は11月中旬であるが、それを待っていたのではスズメに食い尽くされる。成熟途中で歩留まりが落ちるが、もはやスズメの来襲が看過できないほどになったので、本日刈り取った。
不思議なことに、「古代米」と言われる品種を栽培する田んぼに「雑草」が蔓延ることがない。植え付け初期に一度だけ除草したのみで、あとは放置してもこの状態である。
さて「はざ掛け」について説明する。稲を稲木に掛ける時、束を6:4くらいの二つにX字状に分けて馬の背にかける。6と4のどちらが手前でも良い。写真では左向きが手前になっている。この次に束をかける時、手前を右向きにして、左向きになった奥の半分を、さきの左向きの手前の半分の上に乗せる。
こうして交互に、先に掛けた半分の上に後の半分を乗せて、束を組んでいくように掛けていく。ときどき全体を押して、組んだ束を締める。掛けた馬の背を横から見ると、必ず上になった片方だけが見えていて、もう片方はその陰に隠れているはずである。乗せて組んでいないと、交互に掛けた両方の束が並んで見える。また、股割りのような状態で掛けると、強く引き締めることができないので、強風に煽られて回転して落ちる。
2019年11月09日
20191109 神丹穂稲刈り
「神丹穂」という赤米は、草丈が長く2m以上になることがあり、熟成すると茎が枯れて足元からくずおれるように倒れる。葉も多く、穂首も折れやすいので、出穂期の美しさとは裏腹に、熟成期には草ぼうぼうの状態になる。
倒伏を防ぐために、3x3=9本ごとに杭を立ててそれに縛り付ける方法があるが、私はキュウリネットを水平に張る。稲刈りはその中に潜り込んでやる。
秋の初めの強風は南から吹き、稲刈りどきの強風は北から吹くので、ネットの上の穂は四方に倒れている。その倒れている向きを見ながら、かぶさっている上手側から刈っていくと幾分楽である。
一般的に、ハザかけする稲の草丈は約120cmなので、「神丹穂」の場合、80cm近く地表より高い部分を刈る。縛るにせよネット仕立てにせよ、茎がよれよれで穂が絡み合い、葉が多くて、株を持った左手が、隣接する株から垂れ下がった穂首や葉を掴んでしまう。また、ネット仕立ての場合は、ネットに穂や草が絡んで非常に刈りにくい。
機械化の難しい品種なので栽培する人がほとんどなく、私もこの家に伝わる種を12年間継いできたが、この先、引き継ぐ人がなければ絶えてしまう。たった5m四方の刈り取りに、丸一日かかってしまった。
時間がないので、ありあわせの材料をタジンに放り込んで、洗濯物を片付けながらバイトの用意。

