何事も総括が肝心である。「総括」というと、先日亡くなったかつての連合赤軍中央委員長永田洋子を思い出す。彼らの一連の行動の意味は、果たしてなんだったのか、彼ら自身が彼ら自身をどのように総括しているのか、傍目からはなにも解らない状態の中で、いやもっとずっと前から、彼らないし彼女は、決して「総括」など出来ない自己欺瞞の罠に陥ってしまったか、あるいはそこから這い上がろうともがき苦しんでいたのか、はたまた彼ら自身の総括を当局が封じ込めて覆い隠して来たのかもしれない。思想が行動を呼び起こした。そういう時勢だった。その思想がなければ、日本や世界は、もっと違う方向へ突き進んでいたかもしれない。しかし行動は一人歩きして事件を起こし、それが事実として思想を実践した人にのしかかった。いわば彼らは贖罪の山羊だった。彼らのほとんどは、負わされた事実の重みに苦しみながらも自分自身を総括しながら死んでいったが、彼らを排除した現在の我々は彼らを正しく総括できているかというと、全くそうではない。日本や西欧と北米のほとんどの国では、いまやそのような思想は過去のものとされているが、過日連鎖的に発生した北アフリカでの一連の民衆蜂起がああいう形で起こったことは、「先進諸国」が自由への希求のひとつの形態にもなった共産主義思想とその体制を正しく総括できていないということを、ありありと示しているのである。日本赤軍が北アフリカに海外拠点を求めてから40年余り経ってから、こうして一般市民による蜂起で革命が実現したことは皮肉と言わざるを得ない。人間の自由というものが、当人の意思に関わりなくシステムの力関係に左右されるということは、絶対にあってはならない。もしそのようなことがあれば、当事者はいかなる手段を行使してでも自由を獲得できる権利を有すると同時に、当事者は全人類の個人に対しても、その自由を尊重する義務を有する。原理は単純である。その実現に向かって行動するのかしないのか、するならばとことんやる。しないのならば家で寝ている。しかしその家でさえ、いつまで寝ていられるのかは解らない。だから私は行動する。そしてその意味は、必ず総括されなければならない。今回のコンゴ旅行についてまとめておきたいと思う。まずは旅の実際から・・・ コンゴ入出国と国内旅行上の注意点に関しては、既に述べた。
http://jakiswede.seesaa.net/article/148031210.html
http://jakiswede.seesaa.net/article/148136535.html
http://jakiswede.seesaa.net/article/150817545.html
Kinshasa (N'dolo)- Inongo: BDGM Aviationという国内航空会社から水・土曜日7:00 (実際は11:00頃) 発
Kinshasa都心に近いN'dolo空港発であることに注意。N'djili空港ではない。手続きは煩雑(USD200)。
Inongo 空港にDGMあり。外国人は自動的に「別室案内」の上、市内唯一のホテル「Hydro」素泊USD15へ案内される。
DGM職員Emmanuel Manza Iyeliはおすすめ。
Lac Mayi-Ndombeを航行する連絡船
Inongo- Isongo (毎週月曜所要約4時間) - Nkile (隔週月曜所要約半日)
Isongo- Selenge (毎週金曜)
Kinshasa、Bandunduと連絡する舟もあるがお勧めできない。
Isongo- Bolia- Iboko: 陸路自動車道あり。便乗できれば所要約6時間。
Nkile- Mbuse-Mpoto: ピローグ・タクシー頻発。
Mbuse-Mpoto- 川路の果て: Mbuse-Mpotoでガイドを雇うべし。Papa Derekお勧め。
川路の果て- Iboko: 徒歩。季節によりルートが変わる。Nkileからの全行程でガイド料含め約USD100。
Iboko- Bikoro- Mbandaka: 自動車道あり。便乗できれば一日コース。全行程で約USD100。
Mission Catholiqueに宿泊可能 (USD10-25)。各市にDGMあり。
Mbandaka- Kinshasa:
CAA (Compagnie Africaine d'Aviation)という国内航空会社が週2便 (USD160)。KinshasaはN'djili空港に着く。
http://www.caacongo.com/
Hewa Bora、週一便水曜日。
http://www.hba.cd/
フェリーは、よほど怖い目に遭いたい人にしかお勧めできない。
携帯電話はKinshasaで調達しておくべき。
カネはProcredit BankのATMで自分の預金講座からUSD現金を引き出せたが、最新情報によると、そのサービスは停止されたとのこと。
http://www.procreditbank.cd/
Kinshasa- Inongo- Lac Mayi-Ndombe周遊の旅は、全く安全快適で風景も素晴らしく、人も穏やかで食べ物も旨い。お勧め観光コースである。音楽も実に素晴らしい。
Lac Mayi-NdombeからIboko赤道州の旅は、知らなかったから行けたようなもので、前もってこんなことになるとわかっていたら出来なかった。しかし旅とはそんなものである。この苦難の道は、その先に求めるものが確固とした状態で存在しないと、精神的に無理。この区間は宿泊施設もなく、飲料水用フィルターとヘッド・トーチが必須。食べ物は新鮮で安くふんだんにある。水が黒いので日本から部分洗い用固形石けん、電池式蚊遣りが有効。
Iboko- Bikoro- Mbandaka自動車の旅は全く問題なく、赤道直下の絵に描いたような熱帯アフリカの風景を満喫できる。ちょっとハードかもしれないが、これもお勧め観光コース。
コンゴ奥地を旅行する場合、IbokoやBikoroクラスの小さな町にもDGMがあり、外国人はその都度「Fiche d'identification」を提出する義務がある。写真貼付を求められるので、パスポート写真は多数必要。書式は微妙に異なるが、記入項目は下記の通り。これは訊かれるので、予め自分で書いてまとめておいた方が良い。
Nom (Surname) 姓
Prénom (Christian Name) 名
Né(e) à (Born at) 出生地
Nationalité (Actual Nationality) 国籍
Nationalité de naissance (Nationality of birth) 出生国
Nom et prénom du pere (en vie ou décedé)
Surname and christian name of the father (alive or dead) 父の姓名 (生死に関わらず)・・・vieかdécedéのどちらかを書く。
Nom et prénom de la mère (en vie ou décédée)
Surname and christian name of the mother (alive or dead) 母の姓名 (生死に関わらず)・・・vieかdécédéeのどちらかを書く。
Etat-civil (Civil Status) 下記の別:
Célibataire (Single) 独身・Marié(e) (Married) 既婚・Veuf(ve) (Widower or widow) なんと訳せば良い ?? 配偶者を失った人
Nom et prénom du conjoint ou l'ex-conjoint
Surname and christian name of the actual or ex-husband or wife 前夫または前妻の姓名
Sexe (Sex) 性別 (右記の別) : Féminin (Female) 女性・Masculin (Male) 男性
Race (Race) 人種 (右記の別) : Blanche (White) 白人・Noire (Black) 黒人・Asiatique (Asiatic) アジア人・Mulãtre (Mulato) 混血
Profession (Occupation) (右記の別) : Diplomate (Diplomatist) 外交官・Coopérant (Cooperating) 政府協力者 (Cooperatorとちゃうん ? ) ・Hommes d'affaires (Businessman) 実業家 (女性はどうなるん ??) ・Missionaire (Missionary) 宗教関係者・Agent de l'enterprise d'Etat (State society employee) 政府職員・Agent d'enterprise privée (Private society employee) 民間企業従業員・Sans profession (Without profession) 無職・Divers (Others) その他
ここで注意すべきは、日本に於ける職業を訊ねているのではなく、コンゴへ来た目的を訊ねていることである。観光ビザで渡航して「Hommes d'affaires 」にチェック入れたりしたらややこしいことになるよ。それもあいつらの「手」かも知れんけどね。「Sans profession」にしとくのが無難。
Employeur (Employer) 雇用主
Adresses successives en RDC (Successive adresses in DRC) コンゴ民主共和国に於ける継続的な住所・・・なんてあるわけないやろ、て言うたらあかんよ。相手が不安になるだけやし。適当に泊まったホテルの名前と住所書いといたらええねん。
Poste d'entrée en RDC (Embarkation place in DRC) コンゴ民主共和国に入国した場所・・・通常「N'djili」
Date de la Première entrée en RDC (Date of the first entrance in DRC) コンゴ民主共和国に入国した日付
Motif du voyage (Motive of travel) (右記の別) : Affaire (Business) 職務・Tourisme (Tourism) 観光・Visite (Visit) 滞在・・・VISAの種別の通りに書くこと。
Nom et prénom du preneur en charge
Surname and christian name of person to visit: 身元引受人 (別途証明書類は要求されなかった)
Titre de séjour:
Attestation d'agréation (pour diplomates)
No._______ déliverée á ____________ par ___________ le ___________・・・「外交官用」と書いてあるから無視した。
Genre du Visa (Type of Visa) __________ No.____________ Validité ______________
要注意 !! 査証の種類などを訊いている。観光ビザなら「Tourisme」で良いが、
「Validité」の書き方に注意。必ず「du dd mm yy au dd mm yy」(「何日何月何年から何日何月何年まで」)と書くべし。「3 mois」などと書くと、査証面の発給日から起算する奴が多く、場合によってはトラブルになる。
Prorogation accordée: Visa No.___________ du ____________・・・延長してないので無視。
Passeport (Passport):
Ordinaire No.___________ Spécial No.____________ Diplomatique No._____________
Titre de voyage pour réfugié politique No.______________・・・通常は「Ordinaire」のところにバスポート番号を書く。
Délivré à ____________ le _____________ Expirant le _______________・・・難民用なので無視
Nom et prénom des personnes en charge
Surname and christian name of the persons in load・・・無視
こんだけややこしいと、相手の役人も途中でめんどくさなってきよるから、出来たら最初に書類作ったらコピーしといてもろたらええ。私はそないしてコピー持ち歩いてたら、あるとこなんか、そのコピーをコピーしてそのままファイルしといて、コーヒー代だけ要求しよったこともあるくらいや。
楽器や工芸品など、文化的なものと判断されるものの国外持ち出しには手続きが必要である。
Ministrere de la Culture et des Arts 発行「Autorisation d'exportation des oeuvres d'art」と「Declaration d'Objets d'Art」というふたつの書類に必要事項を記入する。
さて、旅の内容を総括する。20年前までの二度の旅が、コンゴのモダン・ポップスを追い、そのオリジンとしての伝統音楽に触れることが具体的な行動を伴った目的であったのに対して、今回の旅は、ブラジルのアフロ系音楽に接した直後に、連続してもっと抽象的な「音楽の黒さ」を身に浴びに行く旅であった。その目的は、Lac Mayi-Ndombeの湖畔の散策中に水面からそよ風に吹かれるようにして、また期せずして体験したピローグでの川の遡行の途中に天から降り注ぐようにして叶えられた。話される言葉が「唱え」となってメロディを持った生き物のように宙を舞う。来る日も来る日も、意味の連鎖としての言葉が、同時に音の連鎖としてのメロディになる言語を話す人々暮らした。その経験は、今回の旅の全行程の中で最も印象深いものであった。熱帯雨林の深い緑と黒い水と、その色に染められた濃い茶色の土や屋根、水の臭い、獲れた魚を干したり燻したりする臭いなど、かねてから書きたい書きたいと夢に描いていた魑魅魍魎の闊歩するジャングルの、空想と現実が目間苦しく交錯するファンタジックな冒険潭のイメージを彷彿とさせた。音楽の、外に向けての効果の変容ではなく、内へ向けての発生の原理を垣間みた。そこにうごめくもの、それは演奏上の技術や方法論ではなく、その感触をもとに様々な表現が可能になるような、生き物としての音の固まりであった。それは音楽のあり方として、コアで熱いものだった。それは体得して得られるというよりも、その風景の中を通り過ぎることによって、その人々と語り合うことによって、その黒い水を飲み魚を食い野菜をほおばることによって、徐々に体内に溶け込んで来るものだった。「言霊」という日本語があるように、それは魂を持っていて私の魂と共鳴しながら進むものだった。私はそれを感じた。だから具体性をここに明らかにすることは難しい。私は先へ進んだ。その後の徒歩での山越え、州境を越えたところで出会った武装グループ、そして灼熱の道・・・太陽に焦がされて、またもや空想と現実の区別があやふやになっていく中での貴重な体験・・・これらは、川の旅での霊感に満ちた経験とは異なって、より具体的現実的な人とのふれあいの時間であったが、旅の醍醐味としてはかけがえのない収穫であった。これらの音楽的体験は言葉で言い表すことが、今では難しいほどかけがえのないものであり、それを、どこかの国でだれか個人が偶々体験したことではなく、誰もが共有しうる普遍的な事象として書くことが、これからの仕事のひとつになるであろう。その後の旅の目的は次の段階、すなわち楽器を手に入れることに移り、これも十分な成果を上げた。コンゴ河の河下りはかなわなかったが、飛行機でKinshasaへ戻った選択は正しかったと思う。しかしながらKinshasaでは、なんぼモダン・ポップスを追うことが目的でなかったとはいっても、もっと丁寧に回れば多くの音楽に触れることが出来た筈である。しかし奥地の旅の疲れと楽器の発送の段取りなどで、心身ともに余裕がなかったことは反省すべきである。コンゴで手に入れた貴重なものを、無事に日本へ送り出すことができたのは、全く現地の心優しい友達とDHLの職務に忠実で有能なスタッフのおかげであり、それでも奇跡的な綱渡りが成功したからに他ならない。これは私の力ではなく、全く彼らに救われたのである。ブラジルでもそうであったがコンゴでも感じられることは、人の力が大きいことである。人が動くことによって動かされる事実が大きい。日本では、システムが事実を動かしている感じがあるが、ブラジルでもコンゴでも、システムは大雑把であり、人が強い意志と行動力を持って目的を達成に導くのである。それが珍しいことではない。コンゴの奥地で出会った川の男たちも、立派な体格と明晰な頭脳と、バランスの取れた感性を持っていた。こんなに力強く、意志が強く、技術もノウハウも持ち合わせている人がたくさん住んでいる国は、きっと発展する。たぶん日本もかつてはそのような国であった筈なのだが、いつしか忘れてしまったように見える。自らが動いて物事をなし得なくなってしまった人が多く住む国に、健康な将来を想像することが出来ない。
旅とは、自分の内なる声に導かれて進むものだと思う。それがなければ、いかに安全対策や技術や知識や金をもってしても、その旅は易くはない。しかしそれさえあれば、安全対策や技術や知識や金の多い少ないなど、さして問題にはならない。現在、東京の友人の手で私の旅の写真展が開かれていて、来月には上京するのだけれども、このようなイベントを企画し旅行記などを発表していると、実に様々な人からご連絡をいただく。そのなかには実際にこれから現地へ旅立つので、行った者にしか解らない情報が欲しいという人もあり、そういう人にはていねいにご案内して差し上げ、事実その人は現地で有意義な時間を過ごして先日無事帰国された。おそらく来月のトークショーには同席していただけるもの期待している。しかし最も多いのは、実は残念ながら誹謗中傷なのである。特に音楽に関わっている人たちからのものが多く、それもブラジルやアフリカなど、グローバルなメイン・ストリームとは少し離れたローカルなジャンルで行動している人からのものである。その主な内容は、要するに「ちょっとかじっただけで知ったかぶりすんな」というものであり、物事の本質を見抜けない私の無明を非難する内容であって、ブラジル編を書いていた時はブラジル音楽関係者から、コンゴへ渡ってからはアフリカ音楽関係者から、叱咤激励まことに光栄の行ったり来たりで有り難いことなのだが、中にはかなり細かく私の文章を読み解いてくださり、その説明不足をご指摘いただいたり、思いもよらぬ解釈が可能であることを身を以てお示しくださる方もおられて、たとえブログとはいえ、人様のお時間を拝借してこうしてものを書いていることの責任を痛感し、恐縮することしきりでございます。それにしても、かつてはアフリカ音楽なんて話題にもならぬ程知られない存在、腰蓑着けた土人の裸踊りとばかり言われていたものだが、「貴方はリンガラ音楽についてどれほどご存知なのでしょうか ?? 」などと真っ向から訊いて来る人が出て来たということは、これは誠に喜ばしいことである。しかしながら私は、自分の内なる声に導かれて旅をしたのであり、コンゴやリンガラ音楽というものを包括的体系的に世に広めるために旅をしたのではない。だから、旅の結果出会ったものや考えたことについて書き認めたものが、一般の読者の期待に添えないことは当然であって、広大な大陸の中の短くて細い線のような旅でさえ、一介の凡人である私がその旅の森羅万象を映し出し得る筈はなく、またそうしようとしたところで内容が膨大になりすぎて、言いたいことが解らなくなるであろうと思う。ただでさえ饒舌すぎる文体を批判されることしきりであるのに、凡人の分際で文章なんぞ書くなと言われれば、それはそれとして五つの体を六つにも七つにも折ってお詫びを申し上げるが、どうかお読みいただく場合には、私は自分の内なる声と対話しているのだ、いわば宇宙人と対話しているようなものであって、部分的にしか理解できないものなのだ、多少の常識はずれな部分があったとしても、愛嬌として大目に割り切っていただきたいものです。何か質問があるのなら、せめて自分の名前くらい名乗ったうえで、また私の書いたものは一旦字面の通りご解釈いただいてから、ご自分で旅をなさるのであれば、ご自分で調べを尽くされてから、オフィシャルな情報源からは得られない情報についてお問い合わせいただくとか、それに言及した部分についてご確認いただくとか、凡人の私にも解りやすい手順に従ってご連絡いただいた方が助かりますな。別にお礼が聞きたいわけではありませんが、やはり同じく音楽や旅を愛するものとして、手間暇をかけて詳しく情報提供したのでありますから、返事としてそれを踏まえた上でどう思うか、くらいは書いてほしいが、面倒であればお礼の一行くらい書いてくれても罰は当たらんと思いますがな・・・漠然とした質問を多数送ってよこしておきながら、ひとつひとつ丁寧に答えても返事ひとつよこさず、答えた内容には触れもせずに別の質問を浴びせて来るような奴が余りにも多すぎる。申し訳ないが、これからは誠意の感じられないご質問にはお答え致しかねますので、そこんとこよろしく。
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