2019年02月27日

20190227 Feel Like Makin' Love

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Roberta Flack: Feel Like Makin' Love (LP, Atlantic, P-8473A, 1975, JP)


Feelin' That Glow

I Wanted It Too

I Can See The Sun In Late December

Some Gospel According To Matthew


Feel Like Makin' Love

Mr. Magic

Early Ev'ry Midnite

Old Heartbreak Top Ten

She's Not Blind


 ソウル・ミュージックでまず何を上げるかというと、兎にも角にもRoberta Flackである。これはまったくリアル・タイムで、この辺りからぐっと洋楽ポップスにのめり込んでいった。時に私は中学三年。前々年に来日したサンタナのコンサートにどうしても行きたかったのだがとてもそんな金はなく、そんなことを親に言おうものなら鼻が折れるほど殴られる家庭環境であったため、悔し涙で枕を濡らしながら当日の夜を明かしたのであったが、ふと、ベッドの下にゲルマラジオとイヤホンを仕込めば、ラジオ放送がこっそり聞けることに気がついた。ラジオを聴くことさえ禁じられていたのである。その日からこっそり本屋でゲルマラジオの作り方を立ち読みして頭に叩き込み、わずかな小遣いを割いて最低限の素子を買い、銅線などは電気屋の裏口に野積みしてあるテレビの裏蓋をひんむいて調達して、なんとか配線図通りに組み上げて、絶対に見えないようにアンテナを窓の外側の木目の隙間に沿って這わせ、床板にキリで穴を開けてアースを出し、布団を挙げられてもベッドの枠からはみ出ないようにイヤホンのコードを隠し、夜な夜な耳をそばだてるように、雑音の中から漏れ聞こえる深夜放送に夢中になったものである。

 当時はCarpentersの ≫Yesterday Once More ≫とRoberta Flackの ≫Killing me Softly ≫が大ヒット中で、アメリカには黒人という人たちがいて、その歌があることを知ったのはこの時が初めてだった。しかも・・・歌の出だしでひっくり返った、寝そべってたのにひっくり返るほどびっくりした。Strumming my pain with his fingersSinging my life with his words…おいおい、耳元で何を歌うんや何を・・・彼は指で私の痛いところをかき鳴らす ?? 耳元で私の生を歌う ?? ああ、その歌で私をイカせてイカせて・・・(くりかえし) ・・・おい、お前ら大人たちよ、お前ら子供に向かってエラそうに暴力振り回すくせに、俺らが寝静まった後でナニしてケツかんぢゃコラ !! その二年後に発売されたのがこのアルバムである。邦題「愛のためいき」コラァ !! 英語は正しく訳せや !! 「アンタとヤリたくなったワ」でしょうよ !! ジャケット見てみいや、大股開いた太腿の間にベッドが置いてあって、アソコから大木が突き立っとるやないけ !! コレがアレでなくてナニやねんちゃんと言うてみいコラ !! 二年も修行したのである。その間には色々あった。見つからんはずのゲルマラジオがバレて鼓膜が破れて鎖骨が折れるほど殴られた。しかしそんなことで怯むような俺ではなかった。今度はベッドの足の真下の床板を切ってその下に全部収まるように仕込んだ。しかしそれも、床下からアンテナ線が出てるのを外から見破られて破壊され、鼻が曲がるほどしばかれた。こうなったら徹底抗戦である。まあそんなことは音楽とは関係ない。世の中というものがいかに複雑であるかを理解したのだ。

 Roberta Flackの ≫Killing me Softly ≫は彼女の6作目、このヒット曲以外はどちらかというとゴスペルに根ざした地味な曲である。そして次作の ≫Feel Like Makin' Love ≫は、より実験的で濃い内容になる。ほぼ全曲、全く違った魅力に取り憑かれる。それは今でも変わらない。やはりタイトル曲、≫Killing me Softly ≫の次の大ヒットとなったのだが、両方に共通するのは反復の美学、アフリカ的なトランスの初体験である。≫Killing me Softly ≫は、短いフレーズの繰り返しと高まりによって曲が構成されており、それは定期的に鳴らされるトライアングルの印象的な響きによって夢へと誘われる。そして≫Feel Like Makin' Love ≫では、より短いフレーズの繰り返しが、低音だけで刻まれるシンプルなドラムによってコントロールされて、徐々に夢の中へ誘われ、やがて消えていくのである。音楽によって陶酔した、初めての経験であった。しかも、雑音混じりのAM放送で・・・

 もう一曲、13分弱を費やして演奏される ≫I can see the Sun in Late December ≫は、特に後半のインストゥルメンタル部分が、宇宙に浮遊していくようなプログレッシヴ・ロック的音空間を現出させている。これがラジオで流れることはほぼなかったが、初めて聞いた時は自分の耳を疑った。こんな世界があるのである。外へ出たい。早く家を出たい・・・まあ、そんなことは関係ない・・・とにかく、このアルバムは全曲、ただのゴスペルを型通りにやったというお仕着せのものでない、極めて強い個性と意気込みが感じられる。バッキングも緻密でとてもソウルフルだ。しかも、ややかすれ気味でトーンが低く、それゆえに温かみがある彼女の声の魅力が、いろいろな曲相の中で発揮されているところが素晴らしい。私の人生をブラック・ミュージックの入口にセットしてくれた一枚である。

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2019年01月17日

20190117 Jeanne Lee/ Ran Blake

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Jeanne Lee/ Ran Blake: The Newest Sound Around; Limited Edition (CD, Solar Records, 4569913, 2012, EU)


1Laura5:10

2Blue Monk4:45

3Church On Russell Street3:11

4Where Flamingos Fly4:15

5Season In The Sun2:29

6Summertime4:31

7Lover Man5:12

8Evil Blues3:05

9Sometimes I Feel Like A Motherless Child2:42

10When Sunny Gets Blue4:52

11Love Isn't Everything1:18

12Vanguard3:13

13Left Alone2:51

14He's Got The Whole World In His Hands2:06

15Straight Ahead3:11

16Sermonette [Live]3:25

17Round About [Live]2:25

18Where Will You Be? [Live]1:33

19The Outcast [Live]3:11

20One Mint Julep [Live]2:01

21Lonely Woman [Live]4:22


 2015年6月11日にOrnette Coleman氏が亡くなったのをきっかけに書きはじめた所蔵Jazz音源レビュ、Jazzの音源は所蔵する全てのうちのほんの一部なのに4年近くかかってしまった。毎日一枚とは行かずとも、何日かに一枚ずつは聞いていたのに、終わったのはつい先日だ。これでは全ての音源を聴き終わるまで生きていられるかどうか、いや考えようによっては、死ぬまで音源に不自由しないということだが、しかし日々未経験の音楽にも触れているので、ちょっとは増えることもあるだろうし・・・

 最初に書いたものがOrnette Colemanの ≫The Shape of Jazz to come ≫だった。このアルバムの眼目は、なんといってもとっぱしの ≫Lonely Woman ≫であって、もはやこの一曲でOrnette Coleman氏の仕事は完成されたとさえ言える。私にとっても、Jazzはつまるところこの一曲に尽きる。それほど究極的な名曲である。名曲にはカバーがつきものだが、歌が付いたと知ったのは後のことだ。Archie Sheppの非常に実験的なアルバム ≫Blaze ≫で囁くような、叫ぶような、泣くようなポエトリー・リーディングを聞かせてくれていたJeanne Leeと、エキセントリックでミニマムな音をセレクトするピアニストのRan Blakeのデュオ、この一連の録音の中に ≫Lonely Woman ≫を見つけた。数あるカバー・バージョンの中でも抜群の音空間、原曲とは全く異なる、原曲が完全に解体されて、ごくわずかな骨格と、それにこびりついた肉片だけのようになった、まさにアヴァン・ギャルドな小片、しかもライブ録音である。こんな解釈はこれ一つしかなく、このCDでしか聞かれない。

 ≪ The Newest Sound Around ≫原盤は1962年、RCAから発売されている。そのLPは11曲入りで、のちにCD化されるにあたって未発表の4曲が加えられた。さらにSolar Recordsが2012年に再発した時にライブ音源5曲が加えられた。そのなかにこのライブ音源が含まれている。しかし、その後、RCAや他のレーベルからリリースされたCDにこれら5曲は含まれていない。 ≫Lonely Woman ≫が収録されているのはSolar Records盤だけであり、他のバージョンと同じジャケットなので注意される必要がある。

 さて、まだまだ書き足りないアルバムもあるが、次はR&BとSoulいってみましょか・・・あんまり持ってないからこれはすぐ済むけどね・・・

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20190117 Thandi Ntuli: Exiled

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Thandi Ntuli: Exiled (2CDs, impartment, IPM-8095, 2018, JP)


The Void (Intro)

Exiled

Freefall

Abyssinia (Intro)

Abyssinia (feat. Tlale Makhene)

What's Left?

Umthandazo Womzali

The Void (feat. Lebo Mashile)


It's Complicated, Pt. 1 (feat. Vuyo Sotashe)

It's Complicated, Pt. 2

Rainbow (Skit)

New Way

13

Cosmic Light (Benji's Meditation) (feat. Benjamin Jephta)

Cosmic Light


 南アフリカのシンガー・ソングライターにしてピアニストThandi Ntuliの2作目である。たまたま夢うつつの中でラジオの音に呼び覚まされたのである。一応ジャズとして括られていたが、極めてソウルフルでグルーヴ感もあって、演奏の緻密さも、アレンジも、細かい音の作り込みも素晴らしく、スケールもでかい。歌物とインストゥルメンタルが混在していて、どれも内容が非常に濃い。しかも2枚組、全く飽きさせない。調べてみると、期待の注目株らしくて、全くうなづける。とにかく聞いていて心が研ぎ澄まされるし、それだけでない複雑さと深み、混沌としたアフリカらしい黒さがたまらず、しかもイギリスのカンタベリーあたりの繊細でメランコリックなジャズ・ロック風の楽章が挟まっていたりと、多様多彩でノン・ジャンルでたまらん大傑作。全くすごい。

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20190117 J Coltrane: Expression

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John Coltrane: Expression (CD, impulse!, impulse! GRD-131, 1993, US)


1Ogunde3:36

2To Be16:20

3Offering8:25

4Expression10:50

5Number One11:55


Tenor Saxophone – John Coltrane

Flute, Piccolo Flute – Pharoah Sanders

Piano – Alice Coltrane

Double Bass – Jimmy Garrison

Drums – Rashied Ali


 もう一枚は、事実上の彼の最終録音であり、Alice Coltraneとまともに作品として残された唯一の録音であり、McCoy Tyner・Elvin Jonesというヘビー・デューティーなリズム・セクション (!?) が抜けた、軽やかな境地に達したことを思わせる非常に素晴らしい演奏である。Rashied Aliのドラムも非常に良い。それまでのJohn Coltraneのいかなるサウンドとも異なる自由さが感じられる。Alice Coltraneのもピアノも補助的でありながら、あの独特の彼女の歌い回しが随所に聞かれ、それがサックスと絡み合って舞う有様は、ただ感涙。おそらくは死期を悟ってのことであろう、なにをおいても作品としてこの世界を残そうという全員の確固たる意志、焦りも感じられ生き急いでいる様子、そこに鬼気迫るものがあって、音楽の真実を感じる。ジャケット表示に「September 23, 1926 - July 17, 1967」とあるが、実際の録音は1967年に行われている。John Coltraneを一枚だけ残せと言われれば、これを選ぶであろう。

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20190117 J Coltrane: Ascension

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John Coltrane: Ascension (CD, Impulse!, Impulse! 314 543 413-2, 2000, USA)


Ascension (Edition II) 40’23

Ascension (Edition I) 38’31


Tenor Saxophone – Archie Shepp, John Coltrane, Pharoah SandersAlto Saxophone – John Tchicai, Marion Brown

Trumpet – Dewey Johnson, Freddie Hubbard

Piano – McCoy Tyner

Bass – Art Davis, Jimmy Garrison

Drums – Elvin Jones


Recorded June 28, 1965.


 やっぱりJohn Coltraneについては書いときましょか。あまりにも偉大なアーティストであり評価も定まっているので、あえて私ごときがものを申し上げることさえおこがましいし、いくらでも論評されているので、そこに拙い文言を並べてみても全く意味のないことは重々承知の上、しかしながらジャズのアルバムは、一人のアーティストあるいはユニットごとの作品数が桁違いに多すぎて、現実的にそれらを追うことなど経済的に無理だ。インターネットで試聴できるようになる以前は、アルバムを購入するか借りるかしか手がなかったわけで、これらに初めて触れて感動すべき年代には、とても小遣いが足りなさすぎて関心を封印してしまわざるを得なかった。だから疎遠になる。遠い存在なので、手っ取り早く近づいてわかった気になろうとする。そこへ物事を断言する専門家が現れて、その評価をもとにアーティストを評価してしまう。タダで聞けるのはラジオくらいのもので、リアル・タイムに聞けた時代の日本には、ジャズを紹介する番組は一つか二つしかなかったし、評論家も数名程度だった。そして彼らの論評は、今から読み返すと極めて偏っていて、そもそもこのような混沌としたジャズが話題に上ることはほとんどなかった。その「偏り」が、日本のジャズ・リスナーなりプレイヤーの中に、今も厳然としてあって、それが日本のジャズをつまらなくしていると私は思う。極言すれば、異様に混沌としていることこそが、ジャズの真骨頂であると私は思う。

 さて、正直いうてJohn Coltrane、重厚で複雑で深遠なのはよくわかる。もちろんアルバムの一部しか持っていないし聞いてもいない。でも、持ってる作品の多くは、やっぱりある程度「食っていく」ための手段としての演奏が録音されたものと思わざるを得ない。食っていくためには茶番を演じるしかない。事実、かなり多くの音でそういう傾向がみられる。ファンはそれを大目に見る。そして飼いならされてアルバムを買い、経済を潤す。そんなことに付き合っていられなかった私は関心を封印し、ほかの世界を探索する。で、John Coltraneについて、よく聞いたし記録にとどめたいと思うものの一つはこのセッションである。まあ正直いってOrnette Colemanの ≫Free Jazz ≫の二番煎じ、と行って語弊があれば、それに触発されて同じコンセプトでやったという感じが否めないのだが、 ≫Free Jazz ≫から4年も経っていて、そのダブル・カルテット以上の何かを提示し得たかというとそうでもない。しかし、これこそMcCoy Tyner・Jimmy Garrison・Elvin Jonesという黄金メンバーによる骨組みの上に構築されたJohn Coltrane唯一のフリー・ジャズであることだけは記録にとどめておきたいと思う。 ≫Ascension ≫は同じテーマによる二つのセッションがそれぞれ別のLPレコードとして発売され、ステレオにリマスターされた後も別々にCD化された。それをカップリングしたものがこのCDであり、付録の資料や紙ジャケットともに、所有物として美しい。もとの愛聴盤は、阪神淡路大震災のときの瓦礫とともに甲子園浜の埋立地に消えてしまった。これは後で買い直したものである。

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20190117 Dollar Brand Quartet

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Dollar Brand Quartet: Africa- Tears and Laughter (LP, Enja Records, enja 3039, 1979, West Germany)


A1Tsakve1:27

A2The Perfumed Forest Wet With Rain3:56

A3Ishmael13:46

B1Did You Hear That Sound?9:10

B2Liberation Dance4:32

B3Imam6:06

B4Tsakve1:03


Vocals, Piano, Saxophone – Dollar Brand

Saxophone, Vocals – Talib Qadr

Bass - Greg Brown

Drums – John Betsch


Composed By – Abdullah Ibrahim

Recorded At – Tonstudio Zuckerfabrik, March 11, 1979


 南アフリカ出身のピアニストである。のちにイスラムに入信してAbudullar Ibrahimと名乗り、その名義で活動を続けている。法名が示す通りストレートな性格と思われ、作品もその傾向が強い。代表作とされているものが複数あるが、あまりにも西洋人が想像したアフリカをステレオ・タイプ化したもので私は好きになれない。なぜなら、ジャズは複雑で不可解であればあるほど良いとさえ思われるからである。そんなわけであまり彼の作品を持っていないのだが、このアルバムのB1 ≪ Did You Hear That Sound? ≫だけは、私にとって全ジャズ史上屈指のお気に入りで、ストレートでクリアでありながら、極めて複層的な音色に満ちている。アメリカ黒人にないセンスであって、この曲からアフリカへの興味が加速していった記憶がある。ドラミングにおけるシンバル・ワークの多彩さに開眼したのもこの演奏からだと思う。おそらく巷の評価は高くないだろうが、若き日の私にとっては結構転換点になった一曲を含むアルバム。

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20190117 Billy Harper: Black Saint

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Billy Harper: Black Saint (LP, Black Saint, ‎BSR 0001, 1975, Italy)


Dance, Eternal Spirits, Dance!

Croquet Ballet

Call Of The Wild And Peaceful Heart


Tenor Saxophone, Cowbell – Billy Harper

Trumpet – Virgil Jones

Piano – Joe Bonner

Bass – David Friesen

Drums – Malcolm Pinson


 コルトレーンを引き継ぐとして注目された人だが、コルトレーンとは根本的に違う。おそらく人間が素朴なのであろう。演奏も極めて素朴である。情熱的で複雑なフレーズを奏でるが、多くの場合、曲は8乃至16小節区切りで循環するコード展開で枠組みされていて、それが良くも悪しくも即興演奏を支える結果となっている。そのコード展開は情緒的であり、日本人の琴線に触れ、哀愁に満ちていて、ある程度退廃的であり、美しく、印象に残る。彼はおそらく感動家であり情熱家なのであろう、そして律儀で真面目だ。この次作で、彼は日本の民謡「ソーラン節」をとりあげる。いかにも、アメリカ黒人が、オリエンタル情緒に憧れて日本の民謡にはまってしまい、それをテーマに即興してしまった感まんまんの熱い演奏を披露する。しかし譜割が日本人から見て明らかに不自然、せっかくオリジナルのアルバム・タイトルが ≫Soran-Bushi B.H. ≫なのに、日本盤のタイトルが別の曲名に差し替えられている。まあそのくらい日本人にとっては失笑を禁じ得ない仕上がりなのだが、そんなことを気にする風もない。さらに別の曲ではせっかく周りがアレンジしたエンディングを自ら吹っ飛ばして脱線する体たらく・・・これではコルトレーンを引き継ぐとは言えないが、そんなことさえどうでもよくて、その情熱家、感動家、素朴さゆえのお茶目さまでが可愛らしく、発売された頃の、ジャズについて何も知らなかった私にとっては、まったく親しみを覚えるアーティストであった。初っ端の意表をつくフレーズに驚かされるが、それを倍加するようなはちゃめちゃな展開にはならず、真面目なコード展開の中に渋く収まった演奏は、この渋いジャケット写真によく現れている。思わず苦笑する、忘れて欲しくないアーティストである。

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20190117 Sun Ra: Nothing Is...

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Sun Ra: Nothing Is... (LP, ESP Disk, 1045, 1966, US)


Dancing Shadows

Imagination

Exotic Forest


Sun Ra And His Band From Outer Space

Shadow World

Theme Of The Stargazers

Outer Spaceways Incorporated

Next Stop Mars


 Sun Ra・・・音楽を演奏してるのか儀式をやってるのかわからない、コンサートをやってるのか大ミサをあげてるのかわからない、膨大なレコーディングをもちろんほとんど持ち合わせていないのであてにしないで欲しいのだが、持ってる中から一枚を選ぶとすればこれだ。曲名を追えば、それだけでこの音楽がどこを目指しているのかよくわかる。音楽と宗教がないまぜになった・・・というか、彼の宇宙観、死生観、哲学の現出が、あるいは宗教的に見えたり音楽的に聞こえたりするものを、録音してビニル盤に刻んだものがこれだと思えば良い。一応、世を偲ぶ仮の姿としてジャズのリストの下には入っているけれども、数多くのアルバムの中では、突然演奏をやめて瞑想に耽ってしまったり、イントロで派手なテーマをぶち上げたと思ったら、そのままの勢いで、延々と彼のキーボード・ソロがとどまるところなく展開されてしまったり、同じフレーズをひたすら反復する演奏とは無関係に、ただただ意味のわからない説教を聞かされたり・・・飽きないといえば飽きないのだが、そひのぶん当たり外れの大きい諸作品の中で、これは極めてジャズに集中して作り込まれた良い演奏が聞かれる一枚である。プログレッシヴ・ロックとフリー・ジャズとブラック・アニミズム・・・地味なジャケットだが、絶妙の取り合わせが結晶した隠れた名盤といえる。


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20190117 AEC: Double Actuel 204

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Art Ensemble of Chicago: Great Black Music" - A Jackson In Your House/ Message To Our Folks (2LPs, BYG Records/ Double Actuel 204  ,‎529.204, 1971, FR)


A Jackson In Your House

A Jackson In Your House (R. Mitchell) 5:50

Get In Line (R. Mitchell) 4:45

The Waltz (R. Mitchell) 1:15

Ericka/ Song For Charles (J. Jarman/ R. Mitchell) 21:30


Message To Our Folks

Old Time Religion (Traditional) 7:30

Dexterity (Charlie Parker) 4:00

Rock Out (R. Mitchell) 7:30

A Brain For The Seine (J. Jarman, L. Bowie, M. Favors, R. Mitchell) 22:00


Trumpet, Flugelhorn, Bass Drum, Horns – Lester Bowie

Alto Saxophone, Soprano Saxophone, Bass Saxophone, Clarinet, Flute, Cymbal, Gong, Congas, Drums [Logs], Bells, Siren, Whistle, Steel Drums – Roscoe Mitchell

Alto Saxophone, Soprano Saxophone, Clarinet, Oboe, Flute, Marimba, Vibraphone, Congas, Bells, Whistle, Gong, Siren, Guitar – Joseph Jarman

Bass, Bass [Fender], Banjo, Drums [Log], Sitar [Cythar], Percussion – Malachi Favors


Recorded June 23, 1969 (Sides A, B) and 12 August 1969 (Sides C, D) in Paris, France.


 Art Ensemble of Chicago・・・ジャズ、フリージャズというより、黒人がジャズやR & Bをベースにプログレッシヴ・ロック的なフリー・ミュージックや実験音楽をやった成功例だと思う。この2枚組LPは、彼らがフランスのBYGに残した最初の2枚のアルバムをカップリングして再発したものであり、 ≫People in Sorrow ≫というデビュー・アルバムに続いての作品である。前作も非常に良いが、こちらの方が、このような実験的な音楽を許容するフランスの自由な空気を体現していて尚よい。内容は先述したようにほぼ無調整音楽だが、その端々にアメリカ黒人的なフレーズや語法がまとわり付く。理知的技巧的に走りがちな演奏に、肉体的なリアリティが重なってぐっと深みを増す。その肉厚感がたまらない魅力であり、このような成功例は他に見ない。フランスという土壌があってこそ実現した、静と動のミス・マッチが一つの音像の中に溶け込む。それはそのまま、この後に発表されるBrigitte Fontaineとの共演盤 ≫Comme a la Radio ≫に引き継がれていくのである。しかし誠に残念ながら、エキセントリックなバンドにありがちなことに、生き永らえるために外部に刺激を求め、その後の彼らの作品はどんどん陳腐化していくのである。

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20190117 Albert Ayler

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Albert Ayler Trio: Spiritual Unity (LP, ESP-DISK, ESP-1002, 1965, US)


Ghosts: First Variation

The Wizard


Spirits

Ghosts: Second Variation


Albert Ayler: Saxophone

Gary Peacock: Bass

Sunny Murray: Drums, Percussions

Recorded in New York City on July 10, 1964.


 ずいぶん悩みましたがAlbert Ayler (1936-1970) といえば ≫Ghosts ≫、同名をタイトルにしたアルバムもあるが、そちらはクァルテットでソロ回しがあり、出番を待っているスキがある。立ち返るべき彼の演奏は、このアルバムに収められた ≫Ghosts ≫であろう。こちらはソロイスト一人なのでぶっちぎりの集中力で最後まで飛ばしてくれる。モノラル録音であることも今となっては効果絶大。音像のど真ん中から全ての音が固まったままほとばしり出てくる。フリージャズの最重要人物には違いない。しかし私は彼を、0rnette Colemanと同様に、むしろオーソドックスなジャズの・・・といって不適当なら、アメリカ黒人の持つスピリチュアルなメロディ典型の、自由奔放なヴァリエイションの体現者と感じるのである。Ornette Colemanのそれが、深く黒人霊歌に依拠していてるのと同じように、彼の場合、それは軍楽隊が常に持つクルーヴの一種であり、ファンファーレであり起床ラッパであり、その陰から立ち上る隠された「なにか」であるように思われる。マーチング・バンドの持つジャズの基礎としての賑わい、そこから撹乱されて広がるイメージ、それらが錯綜して感情を圧倒する夢幻性・・・意識の中に深々と入り込む静寂・・・そんなものが、目の前にどかっと置かれるのである。彼の活動的絶頂期は非常に短く、1964年から1966年の三年間といって良い。数多くのセッションものが出ているが、彼の場合、「このフレーズはこう吹くしかない」というところまで研ぎ澄まされており、その熱量が他を圧倒し過ぎていて、それに集中したければ他にソロイストのいないトリオ編成、なかでもこのアルバムに尽きる。吹き出されるメロディ・・・といって良いかわからないが、とにかくその音は哀切を通り越して繊細を沈め尽くして却って攻撃的である。あまりにも刹那的で命知らずな疾走そのままに、彼は僅か34歳でこの世を去ってしまった。

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