2014年04月04日

20140315 新旧Primoplan比較

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 黎明期の35ミリ一眼レフに用いられた標準レンズとして、Carl ZeissのBiotarと双璧を為す名レンズにMeyer GörlitzのPrimoplanがある。上の写真は、私の所有する3種類のPrimoplan、左から、戦前型のコーティングのないもの・戦後初期のVコーティングの施されたもの・後期のプリセット絞りのものである。これらについて比較してみようと思う。

Meyer Görlitz Primoplan 1:1.9 f=5.8cm Nr.881647 for Exakta・・・写真左端のレンズである。資料によると、第二次世界大戦前の1936年ごろからExakta用に製造された。焦点距離が「cm」表示になっているものは戦前のものだとされている。ずっしりと重く、ガラスはコーティングされていないので、フードは不可欠となる。また同時期のBiotar 5.8cm/2 と同じくらい多くの絞り羽根を持っていて、ほぼ真円形に絞られる。プリセット機能もない手動絞りである。


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 状態としては、80年近い年月相応に年季が入っている。僅かに曇りがあり、埃の混入も見られる。前玉に細かい拭き傷が見られるが、全体として汚いという印象はない。絞りリング、ピントリングとも、やや動きが硬い。設計としては非常に古く、現在のレンズにない様々な欠点が見られる。最も大きな欠点は、絞りを開けてある程度近接撮影したとき、背景に表れる実に艶めかしい渦巻きボケである。これは非常に強烈で、これに取り憑かれると、まともな写真表現から遠く逸脱して、このねっとりとした渦の中に身も心もどっぶりと耽溺することにしか悦びを感じなくなる。精神をおかされる深刻な病である。これを治療するには、Primoplanの前身であるKinoplasmatという、描写の破綻したレンズを購入して底打ち現象を期待する以外に方法はない。しかしそのレンズは極めて希少であって、そのライカ・マウントの個体は1本数百万円もする。これを俗にMeyer症候群という。


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 その症例である。コントラストは低く発色は地味である。ピント自体も甘い。これを柔らかい描写というのかどうかはわからない。自転車のハンドルまで約2メートル、絞り開放、曇天であった。背景に反射光があれば、もっと渦は派手になると思う。


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 Meyer-Optik Görlitz Primoplan 1:1.9/58 Nr.1184778 for M42

 戦後の早い時期に製造されたと思われる。上のレンズと形状はよく似ているが、重量は非常に軽く、レンズは軽く青いコーティングがされているが、ガラスは僅かに黄色がかっている。絞り羽根は14枚あるが絞りの真円度は上のレンズよりも劣る。


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 少しピントが甘くなってしまったが、背景の描写の比較にはなる。ボケ味は戦前タイプと良く似ているが、僅かに日が差していることを差し引いても、色の抜けとコントラストはこちらの方がよりはっきりしている。


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 Meyer-Optik Görlitz Primoplan 1:1.9/58 Nr.1560780 for M42

 1950年ごろの製造と思われるプリセット絞りのついたレンズである。アイレベル撮影での保持のしやすさを考慮してか、わざわざ鏡胴を大きくした感がある。中のレンズそのものの大きさは上2者と変わりなく、特に鏡胴先端から前玉までが無駄に深いので、フードが要らないほどである。絞り羽根は上と同じく14枚であるが、絞ると明確に14の角が現れて、真円に絞ることとは逆の設計になっている。


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 同じ距離ではこのレンズのボケ味が最も特徴的である。ピントの合った部分の解像度も申し分なく、色の乗りやコントラストも、独特の地味さ加減を残しながらも今に通用する描写である。

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2014年03月15日

20140215 C.Z.Jena 58/2

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C.Z.Jena Nr.63847, 1:2 F=58mm ◇ M42


 Pentacon Fに装着されてきたレンズである。Pentacon Fは、東ドイツで1949年に発売されたContax Fの西側への輸出モデルであるが、ドイツの東西分割統治により、両者に残っていた「Contax」ブランドの商標権に争いが起きて、東ドイツで製造された「Contax」を西側へ輸出する際には名称を変えたもので、両者は全く同じものだとされている。これに合わせて、装着されるレンズも、東側では「Carl Zeiss Jena Biotar 1:2 F=58mm T」と表示すべきところ、「Carl Zeiss」と「Biotar」とCarl Zeiss独自のコーティング技術を示す「T」マークの表記を変更して輸出したものと思われる。


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 私はもう一本、これは正式な表記の「Carl Zeiss Jena Biotar 1:2 F=58mm T」を持っているので並べて比較したが、両者は殆ど全くといって良いほど同じ外観である。ただしこちらの方は、確かPractica FXのジャンクを何らかの理由で購入したときについてきたもので、非常に汚れている上にピントリングのグリスが固まっていて殆ど動かせない。セットで処分しようと思う。


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 このレンズは「プリセット絞り」という機構を持っている。これを説明するには、現在の自動化されたデジタル・カメラとはほど遠い昔、といっても、たかだか65年ほど前の写真機のことについて、歴史を繙かずにはいられない。写真を撮るには、光の強さに応じて、フィルムの感度、シャッター速度、レンズの絞りを、許容範囲内で撮影意図に合わせて組み合わせる必要がある。自動化される前の写真機では、これを露出計で計測したり、季節や天気による簡易な表から割り出したりして写真を撮っていた。1949年当時では、一般的なフィルムの感度は恐らくISO10程度であっただろう。私は1995年以降積極的にモノクロ写真を撮りはじめたのだが、最も愛用したフィルムは、富士フィルムの「ネオパンSS」であった。これは感度がISO100で、それが発売当時1952年の「超高感度 (Super Sensitive) 」だった。撮影には手持ちの露出計を使っていたが、やがて例えばISO100で彼岸時期の曇天の屋外であれば、絞り5.6にシャッター速度1/60秒と、その現場の光を感じて強さを覚えてしまい、いちいち露出計を見なくても、それを基準に塩梅出来るようになった。


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 写真を撮るには先ず絞りを先に決めるのが一般的である。遠景を撮るなら絞りは絞った方が良いが、ポートレートのように被写体を背景から浮き上がらせて強調したいときには絞りを開いた方が良い。ある程度自然なボケ具合が得られる絞り値が、だいたい5.6くらいなので、私はそれより1段開いて4かそれ以下にすることが多い。どの絞り値にするかは永年の経験と判断の蓄積による。次にすることはピント合わせである。ピントの山を掴むためには絞りを開放にした方が分かりやすく、絞り値による焦点移動の問題を無視出来るのであれば、通常、絞りは開放にしてピントを合わせる。従って、全手動写真機における絞り動作の手順としては、絞り値の決定→絞り開放→絞り込み→シャッター・レリーズということになる。で、この「プリセット絞り」という機構というのは、このうち「絞り開放→絞り込み」の部分を便利にしようとしたものである。すなわち、撮影意図によって絞り値を4に決めたとすると、プリセット絞りリングを4に合わせておく。その状態でなら絞りは開放のままであるので、ファインダーを覗いてピント合わせをする。しかる後にピント・リングを動かすと、それがプリセット絞りリングが設定した4の位置で止まるので、そこでシャッターをレリーズすれば良い。こんなことがなぜ便利なのかといえば、想像してもらいたいのだが、この機構がなければ、絞り開放でフレーミングをしてピントを合わせた、その後に絞りを4まで絞るのであるが、クリック・ストップのないレンズでは4の指標がどこにあるかわからないので、一旦ファインダーから目を外してカメラを正面から見てレンズの絞りリングを4の位置まで動かして、またフレーミングをやり直し、そうすると位置が微妙に違ってくるからピントも合わせ直して、しかし絞り込んであると画面が暗くなってピントの山が掴みにくいので、絞りを開放に戻してフレーミングをしてピントを合わせ直す・・・という悪循環から論理的に逃れられなくなる。まあ実際には使ってるうちにどのくらい動かしたらどのくらい絞られるかは指が覚えるのでこんなことにはならないのであるが・・・まあそのように便利になった機構を備えたBiotar第2弾のレンズがこれである。


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 さて、このレンズをはじめ、プリセット絞り時代のレンズの一部には、M42マウントでありながらM42カメラに装着出来なかったり、装着は出来てもシャッターをレリーズ出来ないレンズがある。プリセット・タイプのBiotarでは、私の所有するIcarex35 TM・Icarex35S TM・Voigtlander VSL1TM・Pentax S2には、レンズは装着出来るがシャッターが切れない。M42マウント・レンズは、プリセット絞りから半自動絞り、完全自動絞りへと進化するが、その過程で、レンズの絞り値とボディの露出制御を連動させる必要が生じた。それを短いピン1本でやったのであるが、そのピンが配置された場所がマウント面上であったので、そこに連動装置のあるボディでは、マウント面より後端部の出っ張りが大きいレンズが装着出来なかったり、装着は出来てもシャッターをレリーズ出来ないことがある。また、一部の広角レンズでは、レンズ後端部の出っ張りとミラーが接触することがある。ファインダーの明るさを確保するためにミラーを大きくした新しい機種では、これらの古いレンズが使えないことが多い。また、M42マウント・レンズを他のマウントのボディに装着するアダプタでは、上のピンを押し込んで手動扱いにして使用する設計になっているので、後端部の出っ張りが大きいレンズでは同様の理由で装着出来ない。


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 仕方がないので、Canon EOS Kissのアソコにレンズの先っちょだけをあてがってイッてもらったのがこの写真である。あてがった分だけ前にイッてしもとるのでピント位置は無限大、自転車のランプまで1.5mくらいだったと記憶する。レンズを手で持っているので本来の性能ではないのだが、いやなかなか美しい渦巻きボケですな・・・この1枚の作例を出したいがためにエロ長い説明よんでもろてごくろさんごくろさん、絞りは開放であるのでプリセットもへったくれもないんやが、これを4まで絞ろうと思たらプリセット絞りリングを4に合わせておいてファインダーを覗いてピント合わせをした後にピント・リングを動かすと4の位置で止まるのでシャッターをレリーズすれば良いのだがなんでこんなことが便利なのかといえば想像してもらいたいのだがこの機構がなければ絞り開放でフレーミングをしてピントを合わせた後に絞りを4まで絞るのであるが、4の指標がどこにあるかわからないので、一旦ファインダーから目を外してカメラを正面から見てレンズの絞りリングを4の位置まで動ダー合かして、またフレーミングをやントの山から見てレ、絞りを開わせた、その後に絞りを4まで絞の山が掴みにをやり直し暗くいので、一旦フンわせた、その、一旦ファイ置が微妙に違り込なっ込んであると画面がから目ーミングピントも合わを、そうすると位ンらピントも合わせ直しすると位ると位てピて、しかし絞り置っせってくるかりをリン絞が微妙に違ってくるからピるからピントも合も合わせ直ないのでそのァイ後ので開放グ、4の指標がどこにあるトり直し、そう微妙にに絞りを4絞ります、その後にで置まで動かしててピント絞り直し、そうすりを4まカメラを正面からで絞を4まで絞るのであるが、4の指標がどこ4の指標がどこにあるント込んであ、を正して見てレしないので、一旦ファイ画面が暗くなっと画がくっピのるでるが、にあるかわからないーラかし絞りわ込んであると画面が暗、そを外してカ直して、しかし絞が掴み開放に戻してフレをしてピントを合わせたやり直し、そうを4かわからピまで絞るのでンを合せから目をたかングをしてピントのし外のてくるからく後に絞置が微妙にミングをやりるのであるレあるが、4の指標違ってくンンダーから目を外してカメラを正レミンをしンズ微妙にメラを正面とズの絞りリングを4の位置まーから目を位置がるのであるがーミングをしり外してカメラを見て外してカメミ絞りグを4のを合わせた、後に位置まで動かして、またフレントの山が掴みにくーミングをやり直し、そうすると位置が微に違ってくるからがどこントも合せ直して、しし絞りわせ直して、にくいのをしかそうするくるからピと位置が微妙に違ってくるからピントも合わせ直して、く正ので、一旦フインダ面からなってピントの山が掴みにくいので、絞りを開放にして、しそうすると位ズの絞りリングを4の位置まで動かしてまたフレーがどこあるかわからないインーから目をグを4の位で、絞りを開放に戻してフレで動かして、またフレーミングを、4の指標がどンーミンで、絞、まフレーミングをやり直してピントの山が掴みにくい放に戻して面り込んであると画面が暗くなってピンかわからなんであるとので、一旦ファこにあるかわから戻してで動かして、またフレレーントも合わせ直して、しかし絞り込んであるとンダーから目を外してカメラを正レミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピミンをしピ

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20140207 Praktica FX2

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Praktica FX2 Nr.246280


 Praktica FXは、デザインが一新されて1955年にPraktica FX2としてモデル・チェンジした。資料によると、初期ロットでは、外観とファインダー構造のみが変更され、基本構造はFXと同じであったらしいが、後のロットでは、半自動絞り機能のついた新しいM42レンズを装着して使用出来るように、レンズ・マウントの内部に連動装置が設けられている。これは、上位機種のPraktinaに続いてPrakticaが世に先駆けて採用した仕組みであって、FX2の最も重要な存在意義であった。なお、西側への輸出モデルはFX3と別系列名が与えられている。


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 外観の変更は、主にファインダー周辺と軍幹部及び名鈑のデザインであり、前面のシンクロ接点の汎用ソケット化は前モデルのFX後期に行われている。


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 ファインダー周辺では、ピント・スクリーンは引き続きコンデンサ・レンズの底面をすりガラスにしたマット面であるが、ファインダー・フードの構造は一新された。ウェスト・レベルで使う場合、FXが4面とも遮光板が立ち上がるのに対して、FX2では手前側の遮光板が省略されたので、ピント・スクリーンへの光の差し込みが多くなった。しかしアイ・レベルの透視ファインダーの組立は簡素化され、流線型を帯びた正面カバーをはね上げ、格納されているマグニファイヤ・レンズを手前に引きだし、手前から視野枠を引き上げれば固定される構造になった。この改良は、ウェスト・レベルでの撮影から早くアイ・レベルへ脱却したいという当時の願望の現れと見ることが出来る。


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 それを証するかのように、FX2には外付けの専用ペンタ・プリズム・ファインダーが供給されている。着脱には細心の注意を要する。ファインダーを覗いた感じは、非常に暗く、ピントの山も掴みにくい。なぜなら、着脱式のためプリズム面とピント面との間に2cm近い距離があり、直接ピント面を見て最適な明るさのマット面をかなり遠くに眺めてピント合わせする感じがあるのと、アイ・レベル撮影に慣れた目では両目を開けたまま撮影する習慣があるのだが、裸眼位置の高さが、撮影レンズ位置と違い過ぎるためにストレスがかかって使いにくい。注意深くやればフレーミングとピント合わせが出来、透視ファインダーよりはマシですよという程度のものである。当時、一眼レフの趨勢は、Contax D、Praktina、Alpaなど、既にペンタ・プリズム・ファインダーを標準装備出来る程度に進んでいたので、これに対応するためと思われる。Praktica FXが本格的にペンタ・プリズム・ファインダーを標準装備するのは1959年のPraktica IVまで待たなければならなかった。


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 しかしながらM42マウントのカメラとしては、レンズの自動絞りをボディに連動させる試みには最も早く成功した。上の写真は、FX2のレンズ・マウント内部の連動装置を示したものである。まず自動絞りということについて説明する。これは現在の全自動が当たり前のデジタル・カメラ世代にとっては全く想像も出来ないことに違いないが、レンズに内蔵されている絞りを、所定の位置まで絞り込む動作の自動化のことを指している。全く自動化されていない写真機を使う場合、写真撮影には、先ず露出を計測して、適切なフィルム感度と絞り値とシャッター速度の組み合わせを選ぶ必要がある。その際、撮影意図に応じて先ず絞り値を決めるのが普通であるが、ピント合わせの際には、ピントの山を掴みやすくするために絞りを開放する必要がある。つまり、ピント合わせの前には絞りを開放にし、ピントを合わせた後に絞り込む。その際、希望する絞り値の指標を確認するために、一旦ファインダーから目を離してピントやフレーミングがずれることが悩みの種であった。全く自動化されていないカメラを使ってみれば、その不便さにショックを受けるだろう。撮影の瞬間の、その大切な局面だけでも自動化されれば、つまり絞り値は予めセットしておいて絞りを開放し、フレーミングとピント合わせの後、シャッター・レリーズと同時にレンズが絞り込まれるように出来れば楽になる。このような素朴な欲求からカメラの自動化は始まったのである。M42マウント・レンズの場合、マウント面に自動絞り用のピンが出ていて、これを押し込むことによって内蔵の絞り羽根が所定の位置まで絞り込まれる構造が考案された。カメラ・ボディの側では、レンズ・マウント内に設置されたスライダーがピンを押して両者が連動するようにしたのである。これは世界中で規格統一され、相互に交換可能になった。しかしM42マウントは捻じ込み式であるので、ピンの位置が確定出来ないから、だいたいピンがカメラ底部に来るように双方のネジの切り方を決めておいて、ピンを押すボディ側のスライダーにも一定の幅を持たせてある。


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 Praktica FX2の絞り連動部分最大の特徴は、連動と非連動の切り替えが出来る点である。上の写真は、シャッター・ボタンを押した状態である。シャッター・ボタンの動きに連動して、ピンを押すスライダーがマウント面の方へ前進している。スライダーがせり出してからシャッター幕が動作するようにタイミングが計られている。内部に赤いボタンが見える。これを溝に沿って右にずらすと、シャッター・ボタンを押した状態でもスライダーは動かず、元の位置のままで保持される。なぜこのような機構が備えられているのかというと、当時のM42レンズは、手動絞りとプリセット絞りが大半で、半自動絞りを組み込んだものも出はじめてはいたが、なかなか後が続かなかった。特にPrakticaが製造されていた東ドイツではその傾向が強く、西ドイツのレンズ・メーカーは同じ頃西ドイツで発売されていたEdixaのシリーズにレンズを供給する傾向があったのでなおさらであった。当時Prakticaの標準レンズとして採用されていたCarl Zeiss JenaのTessarやBiotarなどのプリセット絞りのモデルでは、なぜかマウント面から後端の出っ張りが大きく、このスライダーを逆に押し込んでしまってシャッターが切れなくなる。このため、これらのレンズを使うときは、赤いボタンを右にずらしてこれを回避したのである。皮肉なことに、革新的な連動機能を持ちながら、Praktica第一世代の生存期に供給されたレンズの殆どは、ボディとの連動を要としないプリセット絞りのものであった。この機能は、むしろ後の時代になって、世界中のM42レンズを楽しむ写真趣味に大きく貢献した。新旧のレンズが使えるボディは多くないからである。他に同様の機能を持つものとしては、先述した西ドイツのEdixaがある。これはもっとスマートな方法でこの問題を解決しているが、詳細はEdixaについて記録するときに紹介するとしよう。


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 さてPraktica FX2は、このようにウェスト・レベルからアイ・レベルへのファインダーの移行、レンズの自動絞りへの対応と、当時の写真機の発展の過渡期に対応した歴史を伺い知ることの出来る楽しいカメラである。しかしながら、私は連動機能のないウェスト・レベル撮影専用の旧型のFXを愛する。なぜなら撮影態勢ではボディを上から見ているので、絞りリングの指標はファインダーを味ながら出来るからだ。そしてなにより、ウェスト・レベルでの撮影というものは、周囲に写真を撮っていることを知られにくく、場の空気を乱さない慎み深さがある。また、前面から押し込むシャッター・ボタンは、ウェスト・レベルで使ってこそ使いやすい。アイ・レベルで前面ボタン、或いはウェスト・レベルで軍幹部にボタンがあるのは、使ってみると以外に使いにくいのである。今となってはこういう撮影のしかたの出来るカメラがないことが、むしろ残念でならない。さて、写真は私の所有するPraktica第一世代の諸カメラである。Prakticaという大変魅力溢れるカメラについては、このサイトの情報が最も詳しいと思うが、なお後のモデルについても主観的に書きつづっていきたい。


 http://www.praktica-collector.de/

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20140203 Praktica FX

 

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 Praktica FX Nr.84797


 このカメラは、1952年に当時の東ドイツで発売されたウェスト・レベル・ファインダー式の一眼レフである。前述のPraktiflex FXは、このカメラの米国向け輸出もデルであり、全く同一のカメラであるので、詳細の記述は以下を参照されたし。


 http://jakiswede.seesaa.net/article/387451781.html


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 私の所有するPraktiflex FXがほぼ完全に動作するのに対して、このPraktica FXは状態が良くない。所有している固体の違いは、ボディの革張りのシボの細かさが異なる点である。それ以外に違いはない。多分これに付いていたレンズが欲しくてボディごと購入したと思われる。どのレンズが欲しくて購入したのかは忘れてしまった。古いカメラやレンズは、それぞれ単体で捜すよりもセットで捜した方が手に入りやすいことがある。それで、このように要らぬカメラやレンズを増殖させてしまうのだ。で、これには当時欲しかった別のボディに付いていたと思われるボロボロのBiotarを付けて置物として飾っていたのだが、その時どのボディを目当てにしたのかも忘れてしまった。これを機に不用品同士で処分しようと思う。このPraktica FX、全体として余りきれいとは言えない。シャッター速度が不安定で、特に1/500秒は開かず、1/250は先幕に後幕が追突して画面半分しか開かない。1/50と1/25秒はどう見てもほぼ同じで、スロー・シャッターはでたらめに近い。従って使えるのは1/100秒のみなので、光の強さに従って絞りで調整するしかない。ミラーとの連動、シャッター幕自体には問題はないので、修理すれば使えると思う。纏っている分には申し分ない。

 
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2014年02月07日

20140203 Pentacon F

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Pentacon F Nr.263391 (84600?) + C.Z.Jena Nr.63847, 1:2 F=58mm


 1949年に東ドイツZeiss Icon社 (当時) で発売されたContax Sは、普及機としては世界最初のペンタプリズム付の一眼レフである。実はその前年にハンガリーでDuflexというペンタプリズム付の一眼レフカメラが出ており、厳密にはそちらの方が先なのだが、殆ど流通しなかった。それまでの一眼レフは、Practica FXやExakta Varexのように、レンズから入った光をミラーで直角に曲げて、それをカメラ背面から観察するウェスト・レベル・ファインダーのカメラだった。これは天地は正像になるが左右が逆像になり、これを解消するために光路にプリズムを置いて、アイ・レベルでの天地左右正像すなわち見たままの画像を観察出来るようにしたものである。逆にいえば、それまで出来なかったということである。このPentacon Fは、Contax Sが2度目の改良を受けて生まれたContax Fというモデルの西側への輸出仕様であり、両者は全く同じものである。私はこのカメラの形をこよなく愛する。なぜなら、ペンタプリズム付の一眼レフのあるべき姿が、最初にして究極的に実現されているからである。無駄のない美しさ、手に持ったときの繊細さ、重々しい質感ともに、私はこのカメラをこよなく愛する。


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 Contax Sは三脚穴の中にフラッシュのシンクロ接点があったが、これを汎用ケーブルの使えるものに変更して巻き戻しノブの脇に移設したのがContax D、それまで手動絞りのレンズを標準装備としていたものを、プリセット絞りのものを付けて発売したものがContax Fとされている。


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 好き嫌いの別れるところだが、このカメラの特徴のひとつに、シャッター・ダイヤルの使いにくさがある。カメラ背面に見えるスライダーを右にずらせば、上部の花形に見える窓の右端に黒い矢印が出、左にずらせば左端に赤い矢印が出る。前者が高速側、後者が定速側で、窓の中の円板にそれぞれ黒字で・50・100・200・500・1000、赤字でB・1・2・5・10・20と表記がある。手前のダイヤルは傘型になっていて、それを押し付けて回すと、窓の中の円板が回ってスピードを選ぶ。高速側の黒い数字は黒い矢印を出してその矢印に、低速側の赤い数字は赤い矢印を出してその矢印に合わせるのである。シャッター・ボタンは前面に斜めに位置されていて、押し込むと「ジャッ」という音がする。この音を嫌う人が多い。


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 巻き上げ側のフタには、「Germany USSR Occupied」のスタンプが押してあり、東側から西側への輸出商品であったことが伺い知れる。カメラのPentaconという名称も、本来Contaxで良いはずなのだが、同じ会社でありながら西側に再建されたZeiss Icon社との間で商標権争いが起きて、やむなく変更されたものである。ペンタ・プリズム前面にはZeiss Icon社の象徴であるErnemann工場の塔がデザインされている。Pentaconではその基部にZeiss Iconのイニシャル「Z.I.」が掘り込まれていたが、Fにはない。ちなみに付いているレンズも、本来ならば、堂々と「Carl Zeiss Jena, Biotar  1:2 F=58mm T」と表記すべきところ、上のような略式のものになり、レンズ名の表示もなくコーティング表示も変えられた。しかしレンズは、立派なBiotarである。


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 このカメラは、右から左に開く。裏ぶたは左でヒンジで止められている。


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 巻き上げスプールは着脱式なので欠損しているものが多い。幸いにして私のものは、「Contax」と表記のあるものが無傷で付属していた。


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 フィルム装填は、このスプールにフィルム先端を挿入してからセットするのが良い。レンジ・ファインダー式の「Contax」や、その後の「Contax RTS」が順巻きなのに対して、これは一般的な逆巻きである。


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 巻き戻し側は、このように裏ぶたがフィルムを固定する仕掛けになっている。フィルムは、気持ち下から入れる。


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 一連のContax S系の一眼レフは、中古市場では不動品が多い。その最も大きな原因は、ミラー・セットにひもが使われていて、その切れたものが多いためである。私の個体はジャンク扱いで安く売られていたものだが、店頭で動作が確認出来たことと、レンズの状態が良かったので購入することにした。もっとも、これとていつ切れるかわからないので、頻繁に持ち出すカメラではなく、まとって気取るカメラではある。安かったのは、Contax表記でないこと、レンズも略式表記であるからだという。日本人の純正崇拝のおかげで、私は安く買い物が出来ました。


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 ファインダーの見え方はこんな感じである。当時のカメラの中でも暗い方だと思う。しかしピントの山が実に掴みやすく、プリントしたときのイメージと繋がりやすい。私はこの見え方が正しいと思う。その後のカメラのファインダーは、ピントのズレの検出に神経質になり過ぎて、ファインダー画像のイメージと、実際に写真として仕上がったイメージのズレが大きい気がする。芸術はその瞬間にどうするかが問われる。ピントなど少々ずれてても良い、それより写したいものがきちんとイメージ出来てるかの方が大切だ。そういう意味で、私は仕掛けの多いファインダーよりも、暗くても良いからマットなすりガラスのファインダーが良いと思う。

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2014年02月05日

20140203 Praktiflex FX

 

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 Praktiflex FX Nr.79528


 一眼レフカメラは、「カメラ・オブスキュラ」というものが原理である。これは、レンズを通ってきた光をミラーで直角に進路を変え、その先に設置されたすりガラスなどに画像を映し出して観察するもので、おもにデッサンに使われた。ミラーの中心点からスクリーンまでの距離と同位置に感材 (すなわちフィルム)を置き、その直前に開閉できる遮光板 (すなわちシャッター) を配置し、ミラーの退避、シャッターの開閉を制御できるようにすれば、感光材に適切な画像が得られる。ミラーを置くのは、感材に投影された像を直接観察する事が難しい、なぜなら感光してしまうからであって、感材とは別に観察用のスクリーンを置く事で、画像をゆっくり観察できるようにするためである。このカメラは、そういうシステムを、35mmロール・フィルムという小さな画面で精密に小型化したものといえる。


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 それまでのカメラは、撮影レンズを通る光路と、被写体を観察する光路は別になっているものが主流であった。箱形で、撮影レンズの上部にいくつかの窓が並んでいるのはそういうカメラである。撮影者は、ファインダーを通してそのいくつかの窓から被写体を見て、フレーミングしたりピントを合わせたりする。そして合点がいったらシャッターを切るのだが、このシャッターは、撮影者が見ている光路とは別の撮影用のレンズに装備されている。しかしフレーミングするにしてもピントを合わせるにしても、撮影光路と観察光路が別になっていたのでは、原理的に両者は合致しない。この差の事をパララックスという。特に近接撮影ではその差は大きくなり、見ている位置が違うので映っている範囲がずれる。ちょうど、右目だけ、左目だけで、近くのものを見ると、両者の見え方が違うのと同じである。またピント合わせは、三角測量の原理を応用して二カ所から見た像を合致させるやり方が主流であるが、その装置とレンズの繰り出し量を検知する装置の工作精度や連動精度が、ピント精度を直接左右する。つまり靴の上から足を掻いているようなものである。一眼レフが生まれる前は、このようなレンジ・ファインダー式のカメラが主流であった。


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 映画用35mmロール・フィルムのカメラへの普及が進むにつれ、写真は様々な場面に使われるようになった。おそらく写真撮影の現場で最も厳しい精度が要求されたのは、接写・複写・顕微鏡写真の分野であっただろう。これらの世界では、撮影光路と観察光路が別になっていたのではほとんど用をなさない。そこで、見たままを撮影できる機材が当然の要求となった。これに最初に答えることができたのは、おそらくExaktaというカメラであろう。これは、スタンドに取り付けてレンズを下に向け、下に置いた原稿を複写するのに好都合であった。真下からレンズに入った光は、ミラーによって水平方向に向かい、撮影者はこれを自然な態勢で観察することが出来る。撮影するには右手でシャッターをレリーズして、右手で巻き上げレバーを巻く。Exaktaは、このように主として複写用に用いられた。しかし、このカメラを外に持ち出して風景を撮影しようとすると、ちょっと困ったことになる。スタンドに取り付けてレンズを下に向ける使い方では、シャッター・ボタンも巻き上げレバーも右手で操作出来るのだが、これを手に持って上から覗き込む使い方では、ふたつとも左手側に来るからである。なぜExaktaがこれに対応しなかったのかは謎である。


 おそらく普及型としては35mm一眼レフの最初はこのExaktaで1936年、実はその前年の1935年に旧ソ連でСпормという35mm一眼レフが開発されているが、普及には至らなかった。その2年後の1938年に東ドイツでPraktiflexが発売され、Bolsey、Alpa、Duflexはあるけれども、主なものとしてはContax Sが1949年に発売されて、35mm一眼レフ黎明期の役者は出そろった。その後各社改良を重ね、1952年にPraktica FXと、上位機種であるPraktina FXが発売される。Praktiflex FXは前者のアメリカ向け輸出モデルであり同一のカメラである。当時Leicaは未だバルナック型のIIIfの時代で、大勢としてはレンジ・ファインダー式のカメラが主流であったが、ExaktaはVarex Vに、ContaxはD型に進化しており、同年に日本では、国産初の一眼レフであるアサヒフレックスが発売されている。

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 さてPraktiflex FX、これは上から覗き込んで写真を撮るカメラである。この姿勢で撮影することをウェスト・レベルという。携帯時はスクリーンは折畳フードに覆われているが、背面のボタンを押すと、ワンタッチでフードが組み上がる。撮影者は、ミラーによってはね上げられた画像を、カメラの背後からスクリーンの裏側を覗いている格好になるので、天地は正像だが左右は逆像になる。スクリーンはコンデンサー・レンズのついたすりガラスで、少しディストーションがあるが快適にピント合わせが出来る。背面側のフードにはレンズが格納されていて、小さなレバーで引き上げることが出来る。このような緻密な工作が、持っていて楽しいカメラである。シャッター・ボタンは前面にあって、水平に押し込む。使い慣れると、あうんの呼吸でピント合わせが出来、カメラを目の前に構え (アイ・レベル) ないので、場の空気を壊しにくい。また、目線が低くなることから、少し日常の印象とは異なる作品が出来ることが多い。


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 前面フードを写真のようにはね上げ、背面フードのレンズでこれを支えると素通しのフレームが組み上がる。もちろんフレーミングやピント合わせは出来ないが、左右逆像の動きに悪酔い中に撮影を迫られたときなどに良い。これをスポーツ・ファインダーという。しかしアイ・レベルでこのシャッター・ボタンは使いにくい。


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 フィルムを入れる。カメラを構えた状態で左側面に↑のついたスライド・ボタンがあって、これを上げると裏ぶたが右へ開く・・・と見せかけて実は外れてしまう。


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 フィルム装填は巻き上げスプールの切り込みにフィルムの先端を入れる。市販されているフィルムの先端の幅に合っているが、スリットは軸を貫通していないので、確実にフィルムをくわえ込んだかどうかを確認する必要がある。


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 フィルム送り側は、バネになった押さえ金具があって、フィルム給送は安定している。


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 シャッター・スピードの設定は、ダイヤルの外輪をつまみ上げて、希望する数字のところへ落とす。内輪の矢印を基部の黒い矢印に合わせてあるときは高速側で、1/25・1/50・1/100・1/200・1/500秒、赤い矢印に合わせてあるときは低速側で、B・1/2・1/5・1/10秒である。フィルムの巻き戻しは、シャッター・ダイヤル手前の小さなバーを押し込んで、フィルム送り側のノブを右に回して巻き戻す。巻き戻している間中、バーを押し込んでいなければならないが、フィルム先端が巻き上げスプールを外れる感触が指先に伝わるので、先端をパトローネから出した状態で止めることも出来る。まあ自家現像する人は希少なので、こんな話してもわからんよね。


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20140128 Karadeniz Kemençe

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 なんと、ヤフオクにカラデニズ・ケメンチェというトルコの黒海地方に伝わる伝統的なバイオリンがキョーレツな安値で出ていたのでゲット。いやあ・・・良く鳴ります。



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2014年02月04日

20140118 Biotar 1:2 f=5.8cm

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 Praktiflex FX Nr.79528 + Carl Zeiss Jena, Biotar 1:2 f=5.8cm T Nr.3420325


 旧東ドイツのカメラである。ボディはアメリカ向けに輸出されたモデルで、東ドイツ本国で1952年に発売されたPraktica FXと同一のものである。カメラについては、十分インターネット上に情報が行き交っているので、特に説明しない。ドイツ的に繊細で上品だが壊れない、またドイツ的に無骨でいなたいが素直で愛すべきカメラである。中古市場で多く見かけたが、個体差がかなりある。私の所有しているものはあたりが良かったのであろう。


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 ボディの事はいずれ書くとして、ここで取り上げたいのはレンズである。M42スクリュー・マウント、所謂プラクチカ・マウント、Carl Zeiss JenaからBiotarは数多く出ているけれども、「cm」表示の完全手動のこのレンズが最も好きだ。おそらく、このカメラに標準装備して出荷され、そのままの状態で使われ、転売され、日本にやってきたのであろう。両者とも60年以上経っていることになる。

 

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 同じスペックでありながら、プリセット絞りや半自動絞り、そして完全自動絞りを取り入れて行った後の製品よりも遥かに小型で、しかもずっしりと重く、60年以上の年月を経てもなお各部の動作は、軽すぎず重すぎず、滑らかにどうさして、確実な手応えで止まる。


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 このレンズには、ボディと連動させる一切の装置がない。良い画像を得る事だけを考えて設計されたのであろう。完全手動であるので絞りを高速運動させる必要もない。その最たるものがこの絞り。絞り羽根の枚数が、たぶん18枚くらいあって、ほぼ真円形に絞られる。


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 例えばこの写真は完全自動絞りのレンズで撮ったものだが、絞り羽根は6枚であるので、フレアに絞りの六角形が映り込んでいる。この後のカメラとレンズは速写性を高める方向、すなわちすべての動作が自動的に高速に連動するように開発の主眼が移って行く。その結果、レンズそのものの性能は向上したのに、レンズの絞り枚数は減らされた。画質よりも光量調節が優先され、絞りの摩擦を低減するためである。そういう点で、まだ自動化を知らず、画質に集中して設計されたこのレンズが、良好なコンディションで手許にあるという事は、実にありがたい。


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 一つだけ不満な点がある。それは最短撮影距離が長く、被写体に90cmまでしか寄れないことだ。セレクティブ・フォーカスを活かした作品作りをしている私にとっては、この焦点距離なら、せめて60cm位まで寄りたいところだが、当時まだ35ミリ一眼レフの黎明期。多くのレンジ・ファインダー機の最短撮影距離が1mそこそこであったことを考えると、だいたいそれに倣ったのであろう。私は、ボディとの間に薄いスペーサーを入れている。もちろん無限遠にはピントが合わないが、そんな写真は撮らないから大丈夫。


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 作例である。古いドイツのレンズは、だいたいこのような描写をする。絞り開放で1m程度に焦点を合わせてある。背景の地面までは2-3mで、そこにまだら模様をなすものがあると、ボケが渦巻くように流れる。これを不愉快と感じるか面白いと思うかは、価値観の相違である。このような立体感と背景が、このレンズの持ち味と言えるだろう。


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 ほぼ真円に絞られていく特性を活かして、木漏れ日の中で枯れしぼむ枝葉と戯れる光を撮る。やや逆光に弱いので、フードは必須である。光は絞り羽根の形に歪められる事なく、柔らかく結像する。こういう当たり前の事すら出来ない便利なレンズばかり作られ、それしか知らない人が多い事は、写真芸術にとって大きな損失ではないかと、私は思う。なにごとも、価値観は多様であった方が良い。言いたい事、やりたいことができる自由があって、個々の表現が多様な価値観を生んで、それを出し合ってより良い社会が生まれていくのだと思う。自由が封殺されると、社会は後退する。


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2014年01月15日

20140115 クラシックカメラ処分

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 暗室作業している時間もないし、目も悪くなってきたので、カメラも処分する。これらは一定の考え方に従って、自分の作風を確立していくのに必要な機材であったが、写真作品を継続的に残していく活動は、結果としては中途半端に終ってしまい、復活の目処が立たないので処分する。以下が処分するもののリストである (*印のみ) 。これも早い者勝ち。順次記録をとった上でオークションにかけていく。本来ならばライカから始めるべきであるが、すぐに始められるという点でM42マウント関連の機材から着手する。

コレクション


L39マウントカメラ

 Leica IIIf

 Canon IID

 Canon L1

 Zorki 4*

 Bessa L


L39マウントレンズ

 Summarit 5cm/1.5

 Jupiter 3 50/1.5*

 Jupiter 8 50/2*

 Serenar 50/3.5*

 Canon Lens 50/1.8*

 Canon Lens 35/2

 Jupiter 9 85/2

 Serenar 85/2

 Fujinon 10cm/2

 Canon Lens 135/3.5*

 Komura 135/3.5*

 Kinoplasmat 1'/1.5C


その他35mm非一眼レフカメラ

 Kiev II

 Kiev IV*

 Jupiter 8 50/2

 Jupiter 8M 50/2*

 Jupiter 12 35/2.8

 Jupiter 9 85/2

 Contessamat 35*

 Topcon 35L*

 Konica III*

 Canonnet QL1.7*

 Canonnet QL1.9*

 Olympus Pen*


Exakta35mm一眼レフ

 Exa*

 Exakta RTL1000

Exakta35mmレンズ

 Xenon 50/2

 Pancolar 50/2*

 Pancolar 50/1.8*

 Domiron 50/2

 Meritar 50/2.8*

 Trioplan 10cm/2.8

 Quinar 135/2.8*

 

M42一眼レフ

 Pentacon F

 Praktiflex FX*

 Praktica FX*

 Praktica FX2*

 Praktica IV*

 Praktica VF*

 Praktica Nova IB*

 Praktica L*

 Praktica VLC3

 Edixa Reflex*

 Edixa Flex*

 Edixa Standard*

 Edixa Reflex B-V

 Icarex35 TM*

 Icarex35S TM*

 Voigtlander VSL1 TM*

 Argus/Cosina STL1000*

 Asahi Pentax

 Pentax S2*

 Pentax SP

 Pentax SL


M42レンズ

 Biotar 5.8cm/2

 Biotar 58/2*

 Jena B 58/2

 Tessar 50/2.8*

 Pancolar 50/1.8*

 Pancolar Electric 50/1.8*

 Ultron 50/1.8

 Color Ultron 50/1.8

 Primoplan 58/1.9*

 Primoplan 58/1.9*

 Edixa Xenon 50/1.9

 Edixa Lauder 50/2.8*

 Auto Quinon 55/1.9*

 Takumar 5.8cm/2

 Auto Takumar 50/2*

 Super Takumar 50/1.8

 SMC Takumar 50/1.4

 Auto Revuenon 55/1.4*

 Auto Cosinon 50/1.8

 SMC Takumar 28/3.5

 Edixa Curtagon 35/2.8

 Culmigon 35/4.5*

 MC Mir1 37/2.8*

 Auto Takumar 35/2.3

 Auto Takumar 35/3.5*

 SMC Takumar 35/2

 Biotar 75/1.5

 Helios 40 85/1.8*

 MC Jupiter 9 85/2*

 Auto Takumar 85/1.8*

 Trioplan 100/2.8*

 Isconar 100/4.5*

 Auto Takumar 105/2.8

 Super Takumar 105/2.8*

 Quinar 135/2.8*

 AutoDTeleQuinar135/2.8*

 Edixa Travenar 135/3.5*

 Jupiter 37A 135/3.5

 Takumar 135/3.5*

 Komura 135/2.8

 Komura 135/3.5*

 Automax 135/2.8*

 Acall 150/4.5*

 Takumar 200/3.5

 Takumar 200/5.6*

 Kenko Tele Converter 2X*

 

Yashica/Contax

 Contax RTS

 Contax Aria

 Yashica FX3 Super2000

 Planar 50/1.4

 Distagon 25/2.8*

 Distagon 35/2.8

 Yashica ML 35/2.8*

 Planar 85/1.4

 Sonnar 100/3.5*

 Yashica ML 135/2.8*


Nikon一眼レフ

 Nikon F2 Photomic*

 Nikon F2 Photomic Black*

 Nikomat FTN*

 Nikomat EL*

 Nikkor-H 50/2*

 Nikkor-S 35/2.8*

 Nikkor-P 105/2.5*

 Nikkor-Q 135/2.8*

 

その他35mm一眼レフ

 Zenit 3M*

 Industar 50/3.5*

 Olympus OM2*

 OM Zuiko 50/1.4*

 OM Zuiko 28/3.5*

 AutoDTeleQuinar135/2.8*

 Minolta SR1*

 Minolta SRT101*

 Auto Rokkor 50/1.8*

 MC Rokkor 58/1.4*

 Komura SR 28/3.5*

 Topcon Winkmirror E*


中判カメラとレンズ

 Rolleiflex Standard

 Mamiya C330*

 Moskva 5

 Semifrank

 Kiev 6C

 Kiev 60

 Arsat 90/2.8

 Bega 90/2.8

 Zenza Bronica S2

 Komura 50/3.5

 Komura 100/2.8

 

*印はお譲りします。

posted by jakiswede at 01:19| Comment(1) | もちものじまん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

20140115 ドラムセット処分

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 さて年も改まったことだし、断捨離の本丸に切り込んで行こか・・・上のドラムセットを処分する。このブログを見たひとに優先権がある。早い者勝ち !! 希望価格は、だいたい5万円程度。

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 モノを説明する。Pearl: President Export (22×14' BD, 12×8' HT, 13×9' LT, 16×16' FT) 色: コパー・カバリング、ホルダー類のパイプ径が統一された当初、遅くとも1981年以前のモデルである。材質はファイバー・グラスであり、これを使ったモデルは現在販売されていない。音色は、どちらかというとドライでアタックが強く出る傾向があり、音の輪郭がはっきりしているのでマイク乗りが良い。現在好まれるドラムの音と比較すると、やや薄い感じがするが、時代を感じさせられる。


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 付属品は、4点セットの他に、タム・ホルダーと、フロアタム・レッグである。タム・ホルダーは、純正ではユニロック・システムであったが、当時新開発された商品で製品によってはガタがあったので、わざと一ランク下のギア式を愛用している。いずれも締まり具合に問題はない。


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 状態であるが、永年使用し続けたので傷だらけといって良いが、30年以上前のものであることから考えると相応の状態といえる。こんなステッカーが貼ってあったりもするが、決して破損部分を隠したのではない。何度もオーバー・ホールしており各部は完全に機能している。バスドラムのレッグにはゴム足がついていたが、これは何度も紛失した。しかしホームセンターで口径の合うものが容易に手に入るので、実用上はなんの問題もない。ヘッドはおまけと考えてほしい。美品ではない。実用品である。この品物の価値のわかるドラマーに使って頂きたい。順次、付属品なども処分していく予定である。乞う、ご期待 !!


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posted by jakiswede at 01:13| Comment(0) | もちものじまん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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